軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

みんな……しんじゃえ……

「……」

成功した。まさかの大成功だ。

魔力もろくに絞り出せず、素材も全くない状況だったが……それでも素体が良かったのだ。

まさか本当に人から魔剣が作れるとは。

出来上がった物を見つめてエウリンカは、うんうんと大きく頭を上下に振るう。

ヒョコッとノイエの頭に生じた触覚のようなひと房の毛は、エウリンカが作り出した魔剣だ。

念のために髪の毛で実験したが出来てしまった。つまりこれを人体まで拡散すれば。

一応目を閉じて考える。

少なくとも相手はまだ年端も行かない少女だ。それを材料に魔剣を作るなど酷い行いだろう。

けれど自分は大量殺人で処刑されている身だ。その罪がもう一つ増えたぐらいで何の問題がある?

軽く首を捻らせエウリンカは悩む。

可能性と人の命を深く考える。

「お姉ちゃん。目を開けても良い?」

「もう少しジッとしてて」

「はい」

命じられれば実行する手の掛からない少女だ。

つまりこのまま立たせているだけで自分ですら想像出来ない魔剣が出来上がるかもしれない。

悩み続けるエウリンカはふと肩を叩かれた気がして視線を巡らせた。

そこには膝に手をついて大きく呼吸を乱しているカミューがいた。

「……何かね?」

相手が発する言いようの無い気配にエウリンカの口が強張る。

「ええ。貴女がノイエを材料に随分と楽しいことを企んでいると聞いてね」

「……楽しいかどうかは分からないが、たぶん歴史上誰も見たことの無い魔剣が完成するはずだ! きっと凄い物が!」

気づけばエウリンカの頭の中から『人命優先』などと言った言葉は消えていた。

誰も作ったことの無い魔剣が誕生する要素はこんなにも集まっているのだ。ここで魔剣作りをしない方がどうにかしている。

最初から悩む必要など無かったのだ。

「さあ邪魔をしないでくれ。自分はこの少女を素体に」

「ええ……とりあえず死になさい」

感情を無にしたカミューは、拳を振り上げるとそれをエウリンカへと叩き落す。

冗談抜きで全力の一撃を受けたエウリンカは、吹き飛び地面を転がり……そして追い打ちを食らう。

何度も何度も馬乗りになったカミューがエウリンカに拳を振り下ろし、レニーラの声掛けで急いでやって来たアイルローゼは、それを見て微かに苦笑した。

どうにか生きているであろうエウリンカが完全に伸びていた。

目を閉じている間……生々しい人体が発する音を聞き続けたノイエは、ガタガタブルブルと震えながら失禁までする始末だ。

余程聞こえて来た音が怖かったのだろう。

魔女はゆっくりとそれを理解し、少女を近くの井戸まで連れて行くのだった。

「よくこんな状態で生きてるわね?」

運ばれて来た無残な撲殺死体……ではなく重傷者を前にパーパシは呆れ果てた。

「これは無理よ。リグが見たら大喜びしそうだけど」

「それでも一応傷の手当はしてくれるかしら?」

「してと言われればやるけど」

諦めてエウリンカらしい存在の治療を始める。

一応傷の具合を確認するが、パーパシはスッとその目を入り口に立つアイルローゼへと向けた。

「やっぱりね」

「何かしら?」

「リグを呼んで来て。私には無理よ。この死体は」

やれやれと首を振ってアイルローゼは誰に代役を頼むか悩み出した。

自分が呼びに行けば監視たちに警戒される。だから極力リグとは会えないのだ。

「分かったわ」

とりあえず死体を作るわけには行かないので、治療をパーパシに任せ外に出たアイルローゼは手近なところに居たミャンに 脅迫し(たのみ) 行って貰った。

「本当に酷いな」

やって来たリグは何処か嬉しそうに撲殺死体……エウリンカの怪我の具合を確認する。

「パーパシはどう思う?」

「何か所か骨折しているけどズレてはいない」

「そうだね」

リグの見立ても同じだ。これなら肉を割いて骨を繋げる必要はない。

問題は余りにも酷い打撃跡だが……これは冷やして様子を見るしかない。

「出来たら氷漬けにしたい」

「冷やした方が良いって聞いてるけど流石に死ぬでしょう?」

「こんな状態で生きてるんだから死なないよ」

よくもここまで人を殴ることが出来る。

殴った方だって拳を壊しているかもしれない。

「誰がやったの?」

「カミューよ」

「……ノイエが何かされたの?」

「ええ。だから大激怒」

むしろこれで済んでいる方が奇跡だった。

普段のカミューなら殴り殺していてもおかしくない。何よりあとの2人が静かなのもおかしい。

「グローディアとアイルは?」

「グローディアは『怪我が治ったら改めて殺す』って。アイルローゼは『最後にこの世の地獄を見ながら足先からジワジワと融かして殺す』って」

融かし殺すだなんて言葉をリグは生まれて初めて聞いたけれど何故だか納得した。

彼女ならする。絶対にしてみせる。

「これって治す意味あるの?」

「私に聞かないでよ。同じ質問をリグにしたいと思ってたんだから」

意味は……たぶんある。延命という理由でだ。

それを悟ったリグは黙って治療にあたる。

「大丈夫か?」

魔法を使い終わり脱力しきったユーリカに監視は声をかける。

普段の不真面目な人物ではなく施設長の手の者だ。

もう1人の少女のような人物も倒れているがそっちは別に良い。今はユーリカの方が気になる。

そもそもこの施設には美人が多いのだ。スタイルの良い者も多く……それが手の届く距離に居るのに手出しが出来ない。悶々と性欲を溜めて暮らしていたが、今は脱力しきった美人が目の前で横たわっている。気絶しているのであろう彼女が直ぐに目覚めそうにない。

生唾を飲み込み監視はゆっくりとユーリカに手を伸ばす。

「ふふふ……あはは……」

「っ!」

不意に聞こえた声に彼は急ぎ後ろを見る。

もう1人の少女が笑っていた。楽しそうに笑っていた。

「何だ? 何が……何だ?」

現状の把握が出来ない。

監視は自身の視界が分断されて行くのを見つめ……ようやくそれが何かしらの力で断たれていることに気づいた。自分の目が、自分の顔が断たれているのだ。

「あはは……死んじゃえ……みんな……しんじゃえ……」

ゆっくりと上半身を起こした少女ファシーは、目に映る監視を細切れにした。

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