軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これで刺しなさい

ノイエが抱きしめている宝玉をペシペシと叩いている。朝から叩いているけど変化はない。

雨期となってドラゴン退治が開店休業状態となったので、僕の執務室に来てもずっと宝玉を抱きしめてペシペシと叩き続けている。

叩いても変化しないと言ってるがまだ覚えてないっぽい。ただずっと傍に置いておけば魔力が溜まり誰かが出て来ると言うことは覚えたので、ずっと傍に置いている。

最近はクレアやチビ姫などが宝玉に対して激しい嫉妬心を覗かせていたが、ある種の心の病だろうから無視しておいた。

毎日彼女を抱きしめている僕は宝玉ぐらいで心を乱さない。

何より僕はノイエのアホ毛の特殊技能を知って驚いた。

彼女はゾウの鼻のように宝玉に巻き付けて持ち運んでいるのだ。入浴時などアホ毛の上に乗せてペンペンと弾きながら遊ぶ器用さを見せる。

あのアホ毛と言う名の魔剣は絶対に狂っている。アホ毛を作ったのが魔剣と言って槍を作るエウリンカだから仕方ない。

ちなみに宝玉の報告書はポーラが『がんばってかきました』と持って来た。

あの魔女はきっとポーラに言って書かせたのだろう。全力で頭を撫でたら凄く嬉しそうな顔をしてくれた。うむ。ポーラは癒しだ。ノイエは命だからノイエの方が格上であるが。

提出した報告書を受け取った陛下は何とも言えない表情をしていたけど。

『出ろ』と念じながら握れば異世界のドラゴンが出て来るのだから、国を預かる者としたらこの上なき拷問とも言える。

頑張れお兄様。僕らの前に出て来ればほぼ瞬殺だけど。

現実逃避のネタも尽きたので……ノイエの観察を続行する。

魔力が溜まってるあれがいつ色を変え、誰かが出て来るか分からない。

レニーラの後はホリーが出てきた。

そのまま襲われ、丸1日襲われ続けた。何故かノイエと2人でだ。

2回の経験を得て僕も学んだ。

基本ノイエは中の人たちに対して無条件で何もかもを許す。

家族だからと言えばそれまでだけど、家族に対して激甘すぎるのだ。結果として僕はボロボロだ。

実はノイエの奴……家族を使って僕を襲うことを楽しんでたりしないよね? ねえ?

色の変わらない宝玉をペシペシと叩いていたノイエだが、どうも色が変わらないことに気づき諦めた様子だ。

宝玉専用に買って来た枕の上に置いてノイエが僕に甘えて来る。

つまり今夜もやる気なのですね?

「ノイエ」

「はい」

「まだ肩が治って無いから無理は出来ないよ?」

打撲の方は治ったけども割れた肩の骨は流石に直ぐには治らない。

僕の顔を見たノイエは、視線を右肩に移し包帯でガッチリと固めた肩にキスをして来る。

「舐められない」

「リグが出て来ないからね~」

「……」

包帯の上からペロペロと何度か舐めてノイエは諦めた。

「もうおしまい?」

「はい」

言って彼女は僕に馬乗りしてくるわけです。

「ノイエさん?」

「違うとこ」

「はい?」

「違うところを舐める」

「ってノイエさ~ん!」

ウチのお嫁さんがどんどんエッチになって行くんですが~!

壁に張りつけられている2人の馬鹿を見つめアイルローゼはため息を吐いた。

外に出て実験をしてくれれば良いのに、この2人は性欲を丸出しにして暴走したのだ。

罰として逆さ吊りにして放置している。

騒ぐと煩いので服を口に押し込んで黙らさせてもあるが。

「魔法の実験が進まないのよね」

「だったら~アイルローゼが~出て~行って~確かめれば~良いん~だよ~」

フワフワとやって来たシュシュがそんなことを言う。

「それで誰が実験の様子を監視するの?」

「……」

何も考えていなかったのか、シュシュはフワフワと踊って誤魔化す。

「シュシュ?」

「自由の~風が~」

察してシュシュは逃げ出した。

足取りは軽いのに逃げ足は速いから困る。

やれやれと額に手を当てたアイルローゼは、諦めて視線を部屋の隅に向けた。

ファシーなら直ぐに出るかと思ったが、彼女は本来の姿で出たくないらしい。

理由は簡単だ。ノイエの体でなければ彼を満足させられないと思っているからだ。

「最終手段ね」

歩いて行ってずっと寝ている存在の首根っこを掴んで確保する。

「この子の魔法だと骨折は治せないから……仕方ないわね」

今夜のノイエはとても優しかったです。

何と3回で終わったんだから! あはは。はぁ~。

軽く腰を叩いてタオルで体を拭く。ノイエも拭いて綺麗にして……楽しむだけ楽しんでグッスリとは、ウチのお嫁さんは最近図々しさを完璧にマスターしたな。

パチッと目を開いたノイエが赤く染まる。

「何をしているの?」

「えっと~」

「まあ良いわ」

アイルローゼとなった彼女はベッドから降りて歩いて行く。

机の上から何かを掴んで戻って来た。

「これで刺しなさい」

「はい?」

「良いからどこか刺しなさい」

小振りのナイフを僕に差し出し先生が無理難題を。

「理由は?」

「リグを出すから心配は要らないわ」

「……」

それはそれで心配なのですが? あれは凄く痛いし。

「やるの? やらないの?」

「……やらせていただきます」

ナイフを受け取り僕は軽く右手に傷を入れた。

「……ん?」

グシグシと目を擦り辺りを確認する。

何故かノイエが慌てていて、右手を怪我したらしい彼を困らせている。

それを第三者の視点で見つめる自分が居るのだ。

リグは良く分からずに首を傾げた。

「何が起きたの?」

「おお。リグよ。大至急これを」

「全く君は……何故ノイエがボクに抱き付くのか分からないけど」

気づいたノイエが飛びついて来てリグは押し倒された。

スリスリと頬を胸に擦り付けられてくすぐったいが我慢する。

何となくノイエの愛らしさの方がくすぐったいのよりも勝ったからだ。

ただリグとしてはここまで懐かれることに少々驚いていた。

そんなに親しくは無かった。カミューと一緒に何度か会話をしたぐらいだし、あとは何度か診察をしたぐらいのはずだからだ。

「ノイエ。出来たら前から抱き付かないで。治療が出来ない」

「……」

クルリとリグの背後に回ってノイエは彼女を抱きしめる。

人形のように抱き締められたリグは、何かを諦めたようにため息を吐いた。

「まあ良い。手を」

「痛くしないでね?」

「分かって言ってる?」

「僕は決して諦めません」

「あはは。でも諦めて」

ペロリと傷を舐めてリグは自身の魔法を発動した。

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