軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ノイエの家族は僕の家族なんだ

緊急を告げる赤。

その報告をハーフレンは突っ伏した机から顔を引き起こして聞いた。

上申を終えて南部調査の許可を陛下から命じられるのを待つだけの身ではあるが、王都の護りを弟に預け留守にする以上やらねばならない仕事も残って居る。

それを片付けている間に夜が過ぎ朝になるなどここ最近はいつものことだった。

「場所は」

「王都北部、ドラグナイト邸からと思われます」

報告に飛んで来た伝令の返事に、ハーフレンは舌打ちをして椅子を蹴った。

王都の北部に位置するドラグナイト家の邸宅には『砦』としての機能もある。

緊急を告げる際は色付きの狼煙の使用を許可されているが、当主であるアルグスタがそれを使ったことは今までに無かった。

何よりあの家には大陸屈指のドラゴンスレイヤーとその夫が居るのだ。

下手な話、大国が攻めて来てもしばらく耐え凌ぐぐらいのことはやってくれるはずだった。

「敵兵の様子などは見えないんだな?」

「はいっ」

急ぎ陛下の元に向かいながら、矢継ぎ早にハーフレンは情報を集め指示を出す。

敵の姿はない。なら一応城の護りを固め、至急近衛の小隊をドラグナイト邸に急行させる。

「失礼します陛下」

「構わぬ。入れ」

「はっ」

緊急時の対応に基づき、ハーフレンは色々と手続きと礼儀を放り投げた。

「ドラグナイト邸から赤と聞いたが?」

「はい。ただ敵兵の姿は確認できないとのことです」

「そうか。つまり緊急を要する事態……敵兵では無く、敵に備えろと言うことか」

「その通りかと」

敵兵では無く、どの国も現在否応無しに敵を抱えている。ドラゴンだ。

「近衛は?」

「はい。王城の護りを固めています」

「国軍は?」

「そちらは国軍の者に聞いて下さい」

ハーフレンはそう答えると場所を譲り待機する。

「失礼します陛下」

「構わぬ。入れ」

「はっ」

やって来たのはシュゼーレ大将軍だった。

「待機中の兵の動員を命じましたが」

「北東部の旧共和国領に派遣しているのが仇になったか?」

「はい」

国軍の3分の1に匹敵する兵をウシェルツェンが作る新領地に貸しているため、王都内の国軍は現在最低数しか存在しない。

「最悪近衛も動かせるな?」

「はい陛下。王都の守備はお任せください」

ハーフレンは頷き応じる。

とにもかくにも今するべきことは1つだ。

「ドラグナイト邸で何があったか……それが分からんことには動きようが無いがな」

呟いたシュニットの言葉が全てだった。

「ノイエ」

「……はい」

「ゆっくりで良いから」

どうにか泣き止んだノイエにゆっくりと声をかけ、1つずつ確認する。

祝福は問題なさそうだが……後は全て使えない。唯一使えるのは異世界召喚だが、あれはドラゴンとぶつけるには問題がある。

「魔法……魔力を手に集められる?」

「はい」

頷きノイエがいつものように魔力を左手に集めるが、皮膚が裂けて一瞬で傷だらけになった。

激痛に彼女の動きが止まり、苦しそうに呼吸を乱し涙ながらに傷が癒えるのを待つ。

ダメだ。これは無理だ。

「魔力を使うのは止めよう。大丈夫。どうにかするから」

ブルブルと震え荒い息で左手を抱きかかえるノイエの顔色が本当にヤバい。血の気がずっと失われたままだ。

「ノイエ。何か使える魔法はある?」

「魔法……」

フルフルと彼女は左右に頭を振った。

というか、今までどれほどのチートを得ていたのかを逆に知った感じがする。

いつもの超機動は使えない。まずあの機動が出来ないのと魔法で補強していないから体が追いつかない。魔力を使った攻撃はノイエの手が耐えられずに終わる。

つまり今のノイエは年相応の女の子でしかない。祝福は2つあるけど。

「ポーラ。紙」

「はい」

羽ペンも一緒に持って来る辺りポーラも立派なメイドになって来た。なって来てしまった。

受け取り急いでペンを走らせる。

まず陛下に報告しないとダメだ。何よりポーラを部屋から出て行って貰うために緊急の赤を使ったのはヤバかったかもしれない。でも国軍と近衛を動員しておかないとドラゴン退治に穴が開く。

最悪モミジさんを処理場に置いて、僕がどこかでドラゴンの死体を焼いて対応すればどうにかなる。

どうにかなるが……視線をノイエに向けると、彼女はどうにか回復した左手を右手で包み震えていた。

呟く言葉は変化している。

『出来ない子は要らない子。要らない子は消える……』

今にも気絶しそうな表情でそんな言葉を呟く彼女は、あの施設でそれを目の当たりにして来たのだろう。

書き終えた手紙をポーラに預け、一歩踏み込んで彼女をそっと抱きしめる。

「大丈夫だよノイエ」

「……出来ない子は……」

「僕にはノイエが必要だから。ずっと必要だから」

「……要らない子は……」

「だから死ぬまで傍に居てくれるよね? ノイエはずっと傍に居て欲しいんだ」

そっと彼女の額にキスをする。

またポロポロと涙を溢れさせたノイエが震えながら僕を見る。

「大丈夫。絶対にノイエの家族を、仲間を、みんなを取り戻すから……信じてくれる?」

「……はい」

「うん。なら今は泣いてても良いよ。でも絶対に諦めないって約束して」

「……はい」

ギュッとノイエを抱きしめて僕は彼女に誓う。

彼女が絶望に飲み込まれていても僕が希望となれば良い。

必ず取り戻す。ノイエの家族は僕の家族なんだ。

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