軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

豚は居ない?

「アイル。眠い」

「そう」

取り付く島もないとばかりに前を歩く女性を追ってリグも早足になる。

走るのは正直好きではない。普段からの癖で目を半分しか開いてないのもあるが、何より服の中で暴れる胸で上体が揺れてしまうからだ。

「アイル。速い」

「そう」

普段なら歩調を遅くしてくれる彼女は、その足を止めずにただ真っ直ぐと深部へと向かう。

行き先はたぶん知っているのだろう。来る前にフワフワと動く黄色……シュシュを締め上げていた。

「アイル」

「……」

三度目の問いかけで彼女は足を止めた。と言うより目的のモノを見つけたのだ。

床でゴロリと横になり、身を丸めて眠っている半裸の女性……生粋の化け物であるエウリンカだ。

「どうしてもう全回復しているのよ?」

「エウリンカだし」

「……」

一瞬納得しかけてアイルローゼは半眼になった。

確かにこの魔剣作りなら、不可能を何らかしらの方法で可能にするかもしれない。

液体状態にまで溶けた自身の全てを50日も掛けずに治し切るなど造作もないのかもしれない。

ただそうなると……この化け物を融かす以外の方法で拘束する手段が必要となる。出来たら年単位で封じ込めれば幸いだが。

「アイル? どうするの?」

「連れて行く」

「は~い」

リグは元気にエウリンカの右足首を掴み、左足首はアイルローゼが掴んだ。

「せ~のっ」

「……ちょっと待て? 何事……痛い痛い。いや待ちたまえ。ちょっと! 本当に! 背中が、尻が、削れてしまうからっ!」

起きたらしい荷物をそのままに、2人はエウリンカを引き摺り来た道を戻り始めた。

「アルグスタ、様」

「うりうり」

「や、ん」

喉の下をゴロゴロしたらファシーが可愛く鳴いた。

ノイエの姿だがこれはこれで何と言うか背徳的な何かを感じつつ激しく興奮する。つまりは大興奮時代だ。今の僕なら全ての海を制覇しハーレムの主になれるかもしれない。

そんな馬鹿なことを思うぐらいに猫化したファシーなノイエは可愛らしい。

「あっ」

「どうかしたの?」

「変わ、る」

色が抜けて一瞬ノイエに戻るが、そのままゴロゴロを継続したらノイエが甘えて来る。

うむ。栗色の猫も良いが、白銀の猫もまた可愛い。ここか? ここが良いのか?

ノイエを撫で回していたら、フニャッと脱力した彼女が黄色になった。

「旦那さんは~手癖が~悪いな~」

失礼な。妻とのスキンシップの邪魔をするフワフワが悪い。邪魔する者には罰だ。

「ちょっと~待って~? そこは~って~どこを~って~そこは~。いや~待ってって~」

黄色いノイエを撫で回してみたら両腕が動かなくなった。

よく見れば肘まで金色の包帯で覆われた感じになって拘束されていた。

「も~。そういう~ことは~ノイエと~すると~いいぞ~」

僕の腕から逃れたシュシュがフワフワしながら床に降りる。

シュルシュルと腕の拘束が消えていく。本当にシュシュの封印魔法は鮮やかだな。

歩き出した彼女は寝間着姿で窓まで進み、外の様子を見てからこっちを見た。

「まだ~夜だね~」

「と言うか今から夜ですな」

「そっか~」

フワフワしながら彼女は鏡の前に立つ。

いつもながらに行動が読めない。

「ねえ~旦那ちゃん~」

「何よ?」

「前の~お願いを~叶えて~欲しいぞ~」

こっちを向いてシュシュがフワフワする。

動きも口調もフワフワしてて本当に掴みどころが無いな。

「約束だから良いけど……1日何するの?」

「うん~。ちょっと~行きたい~ところが~あるぞ~」

「……明日もノイエには仕事がありまして」

「大丈夫~。明日も~雨だぞ~」

「なの?」

「だぞ~」

胸を張ってフワフワしながらシュシュが言い切った。

それだったら行けなくはない。

最悪セシリーンに頼んで警戒して貰って、ドラゴンが出たらノイエに戻って貰えば良い訳だし。

「ならたぶん大丈夫だけど、何処に行きたいの?」

「ん~。魔法~学院~だぞ~」

「おい待て」

「何だぞ~?」

「関係者以外は入れない場所だと知っての暴言か?」

「旦那君は~王族~だから~申請~すれば~入れる~ぞ~」

確かにそうだけど、申請して確認して入るまでに約半日かかるって……そう言うことか。

「だから1日なのね」

「だぞ~」

フワフワしている割にはちゃんと考えていらっしゃるのね。

手続きに半日で、用事を済ませるのに半日か。

それだったら前半だけノイエに待機所に行ってて貰ってドラゴンに備えてれば、午後からなら色々と誤魔化しが効くな。

「了解です。なら明日雨だったらそれで」

「宜しく~だぞ~」

フワフワしていたノイエから色が抜け、元に戻った彼女が一瞬辺りを確認する。

迷うことなくベッドの上で座る僕の元に来ると抱き付いて来た。

「ん~」

「ん?」

「ん~」

頬を擦り付けて甘える仕草からしてこれか?

また喉の下を撫でだしたらノイエのアホ毛が柔らかく揺れる。

本格的に猫を飼いたくなるほどノイエが可愛いんですけど。

「アルグ様」

「なに?」

「……」

若干表情をいつもの数倍柔らかくしたノイエが、こちらを見上げて首を傾げる。

僕だってその仕草から全てを把握できる訳じゃ無いのです。

「どうかした?」

「豚」

「……」

ウチの嫁さんがお壊れになったぞ?

でも少し辺りを見渡すと、ノイエはまたこっちを見る。

「豚は居ない?」

「えっと明日は豚が食べたいってこと?」

「……」

返事はなく彼女はまた僕に頬を擦り付けて甘えだした。

あの~。流石に分からないんですけど? ノイエさん?

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