軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

さあ?

「久しぶりと言うべきかしら? シュニット王」

「そうだな」

静かに身構える国王に対し赤毛のノイエが静かに笑う。

今日は早朝から雨が降り、『肌寒いな~』と思っていたら先生が出て来た。

そのまま強引にお城まで来て陛下との面会を命じたのだ。

一応僕ってばただの臣下だから簡単に会える訳では無いんだけど、メイド長に『先生が会いたがっていると伝えて』と言ったらあっさりと会うことが出来た。

で、国王陛下の政務室には僕と先生。陛下とメイド長の4人だ。

馬鹿兄貴は居ない。何でも大きな仕事の準備でてんてこ舞いらしい。

「プレートの製造が滞っているようだが?」

「ごめんなさいね。気分が乗らなかったのよ」

トントンと膝を突っつかれ、僕は持参した小箱を机の上に置く。

手を伸ばし受け取ったお兄様が蓋を開いて中身を確認する。

「身代わりの術式を刻んだプレートを2枚準備したわ」

「受け取った」

確認したプレートを控えているメイド長に手渡し、陛下は膝に肘を突いて前のめりになった。

「アイルローゼ」

「何かしら?」

「貴女はカミーラの魔法を使えるのか?」

「ええ」

サラリと頷いた先生が笑う。

「ついでに言えば結構な量の魔法を私は得ているわ」

「何処で?」

「さあ?」

クスリと笑い先生は言葉を濁らせる。

施設でと言うと不都合があるのかな? 知らん。

「先生」

「何かしら?」

控えていたメイド長が我慢出来ない様子で口を開いた。

お兄様は何も言わずに不問としている様子だ。

「鳥籠も教わったのですか?」

「そう言うことね」

「……カミーラから?」

「さあ?」

一瞬前に歩みかけたメイド長を陛下が片手を上げて制する。

今のはどちらかと言うと先生が悪いと思います。

冷静を取り戻したメイド長がまた口を開いた。

「鳥籠はクロストパージュ家の秘儀と呼ばれる魔法の1つです。あれを現在知る者はほんの僅か。その全員が鳥籠の魔法を外部に漏らしていないと言っています」

「その言葉が嘘かも知れないでしょう?」

「それはありません。真偽の魔道具を使い確認したそうなので」

「ならそう言うことで良いんじゃないかしら?」

僕は内心で苦笑いをする。

先生は何処か楽し気にメイド長を見ているが、フレアさんの言葉は色々と複雑だ。

『真偽』の魔道具は、術式の魔女が作った人の嘘を見破る魔道具の1つだ。密偵の拷問に用いられたその魔道具は、身に着け嘘を吐けば全身に言いようの無い激痛が走る物らしい。

先生が作った道具で実家の魔法使いの真偽の確認とか……何だかね。

「つまりカミーラから伝えられたと?」

「さあ?」

つか先生。絶対にフレアさんを煽っているだろう?

額に青筋を浮かべるフレアさんがマジで怖いんですけど?

「あくまで知らないと言うのか?」

「さあ?」

何度目かのリアクションに陛下も諦めた様子で肩を竦めた。

ある意味凄いな術式の魔女。『さあ?』だけで押し切ったよ。

「なら話を変えよう」

「何かしら?」

質問を諦めて陛下は話を変えた。

「共和国から穀倉地帯で使われた魔法が、あの『腐海』ではないかと問い合わせが酷くてな」

「あら大変ね。誰が使ったのかしら?」

「「……」」

もうこの先生ってば無茶苦茶だよ。

一緒に居ることが大変辛くなってきました。

逃げ出したいんだけど、先生が僕の膝に手を置いて決して逃がしてくれません。

「あくまで知らないと?」

「ええ。それに彼と私の偽者が出歩いていたのでしょう? きっとあの竜人の陰謀じゃないかしら?」

「そうだな。あくまでユニバンスとしてはそれで押し通そう」

「それが良いと思うわ」

クスリと笑い、先生は優雅に足を組む。

「今の共和国にこのユニバンスを攻めるほどの無茶が出来れば考えるけれど」

「今のあの国にはそのような無茶は出来ないだろうな」

陛下も認めた通りに、共和国は現在結構危ない状況らしい。

穀倉地帯を腐らされて食糧不足に陥っているのだ。

ホリーお姉ちゃんが計算し、ギリギリの数字を叩きだして実行したが……何処の世にも買い占める人が出て来る。

共和国は販売に制限を掛けているが、商業でのし上がった商人だらけの国でそんな工作が上手く行く訳なく、街単位でギスギスしだしほぼ内乱状態寸前だとか。

それを知ったお姉ちゃんが嬉しそうに笑っていたのは見なかったことにした。

そこまで計算とかしていたら、僕はもうお姉ちゃんを敵に回すようなことはしません。怖すぎる。

「ならシュニット王はしばらく内政に力を注げると言うことですね」

「そう言うことになるな」

頷き何故かお兄様が深く息を吐いた。

ゆっくりと顔を上げ……何故こっちを見るのでしょうか?

「ただ問題はある」

「ええ。夫は悪目立ちし過ぎました」

「えっと……どう言うことでしょうか?」

先生もメイド長もこっちを向きましたね。

自分何か後ろめたいことをしましたでしょうか?

「本当にこの夫は大物なのか鈍感なのか……」

「苦労しているようだな?」

「ええ。ですがノイエの大切な人ですから」

「あの~?」

どうしてこの2人はシリアス調でそんな真面目な顔をしているのねえ?

「命を狙われる? 誰が?」

今日はもう先生が屋敷でのんびりしたいと言うので直帰することにした。

ポーラは後で近衛の騎士さんがお届けしてくれる手筈だ。

主に屋敷と城とを往復するだけの特注の馬車の中で、先生が静かに僕を指さした。

背後を見てみるが誰も居ないね。実は見えない背後霊とか居ますか?

「僕ってばまた暗殺者を差し向けられる感じですかね?」

「暗殺者たちね」

「そんな沢山要りません」

「でも諦めなさい。特に共和国のあの男は貴方を殺したくて仕方ないでしょうね」

「……遠慮したいです。本当に」

でも先生はクスリと笑った。

「本当に貴方と居ると毎日が楽しいわね」

「それ……僕がノイエにいつも言ってる言葉です」

「あら? 言われてどうかしら?」

「今度から考えて口にします」

意外とショックの大きい言葉だったのね。

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