軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

現役に復帰させちゃダメだ

一騎打ちと言うか御前試合と言うか……とりあえずノイエの色をした姐さんが勝った。

ただクロストパージュ家の関係者の慌ただしさが半端無い。何が起きたのか分からないが、ケインズのオッサンですら顔色を酷く悪くして部下に何か指示を出している。

此処は逃げの一手だな。

「ノイエ」

「はい」

姐さんがやり逃げし、いつものノイエに戻った彼女が僕の元に来る。

ウリウリと頭を撫でてやればノイエは目を細めて甘える。

「これを食べながらドラゴン退治に」

「はい」

手渡した食パン一斤で作ったサンドイッチの化け物を受け取ったノイエが、そのまま軽い足取りでドラゴン退治へと向かう。

マイペースな彼女を止められる猛者などこの場に居ない。

「さあ僕もお仕事に」

「アルグ~?」

クルッと背を向け馬鹿兄貴から逃げ出そうとしたが足が鉛のように重い。

馬鹿な……これが先生が作った新型魔道具の実力か?

両足に纏わり付いた砂鉄によって足が全く動かない。

肩越しに見れば……馬鹿兄貴の隣に居るフレアさんのとても穏やかな笑みが怖すぎる。

だからこんな催しとかするべきじゃ無かったんだよ。

近づいて来た兄貴にガッチリと押さえつけられ、僕はそのままお城へと連行されて行くのだった。

「あ~。スッキリした」

ガシガシと頭を掻いてカミーラは前髪を掻き上げた。

「カミーラ」

「アイルローゼか」

最近この場所を離れることが多い魔女が、入り口に寄りかかるようにして立っていた。

「何か用か?」

「何のつもりよ?」

「別に」

いつも通り苦笑染みた笑みを浮かべ、カミーラはノイエの視線に目をやる。

彼女は兄に捕らえられ連行されている最愛の人をジッと見ている。

「それで何のつもりよ?」

重ねて問うて来る魔女に、カミーラはその目を向け直した。

「クロストパージュ家には秘儀と呼ばれる魔法が何個か存在する。今見せた『鳥籠』がその1つだ」

「それで?」

「この魔法は対象を檻で包み、そして」

軽く目を向け促すと、アイルローゼは鼻で笑う。

「『剣山』で四方から刺し殺すのね」

「正解だ」

それが秘儀である『鳥籠』の恐ろしさだ。

四方と言うより全方向から襲いかかる串を回避することなど出来ない。故に必殺の魔法であり、現在使える者が居るとも思えない魔法だ。

「それを披露した理由は?」

「お前なら使えるだろう?」

「ええ。たぶんギリギリね」

魔法の解析はアイルローゼの得意分野だ。

使われた魔法の特徴から見て、本来のカミーラなら使えないと理解していた。

圧倒的に魔力が足らないのだ。大飯ぐらいの最強魔法と言って良い。

「お前はあの施設で私から全てを教わった。そうしておけ」

「……そうね」

歩いて来たカミーラが足を止めてアイルローゼの肩を軽く叩く。

チラリと視線を向けた魔女は軽く息を吐いた。

「どんな気紛れよ?」

「そうだな……私たち全員の存在をお前が背負うと言うんだ。だったら少しぐらい手助けをしても恨まれまい?」

ニヤリと笑い立ち去ろうとする彼女に手を伸ばし、アイルローゼは逃がさない。

「本音を言いなさい」

「……野暮なことを言わせるな」

軽く振り払われ掴んでいた腕がすり抜ける。

「私は何処かの魔女のように"弟子"に対して優しく無いんだ」

「何よそれ?」

「察しろよ魔女」

笑いながらカミーラは歩いて行く。

納得出来ずに腕を組んで歩いて行く彼女の背を睨むアイルローゼは、室内に目を向けた。

「どう言う意味よ?」

「私は何でも知ってるとおもっ……分かったわよ」

片手を振り上げ魔法語を紡ごうとする魔女に、置き物となっているセシリーンはため息を吐いた。

「貴女と彼がもっと仲良くなるように仕向けているのよ」

「何故?」

「最近ファシーが幸せボケしているとカミーラがレニーラに愚痴っていたわ。だから少し緊張感を持たせたくって貴女を焚きつけようとしているのよ」

「……」

とても冷ややかな視線となった魔女に、セシリーンは慌てだす。

「私は関係無いから」

「……まあそうね」

置き物であるセシリーンが何かするとも思えない。

それだからアイルローゼは額に手を当ててため息を吐いた。

彼と仲良くすることに抵抗などは無い。馬鹿弟子のことを嫌ってはいない。だからと言ってこんな風に気持ちを弄ばれるのは面白くない。

ただカミーラの魔法を知っていることにすれば、前回からの不都合を誤魔化すことが容易になる。

「癪に障るわね」

面白くは無いが仕方は無い。

椅子に強制的に座らさせられ3人の視線が僕に突き刺さる。

何でも最後に姐さんが使った魔法はクロストパージュ家の秘儀と呼ばれているとか。知るか!

目の前には国王陛下。右と左には馬鹿兄貴とメイド長が。

クロストパージュ家の関係者が外されたのは陛下の配慮だ。メイド長はあの家を放逐され死んだ子扱いだから問題無いらしい。

「それでアルグスタよ」

「はひ」

「ノイエがカミーラの魔法を使った理由は?」

正面に居るお兄様の声がとても穏やかだ。それだけに余計に怖い。

「申し訳ございません。この件に関しては自分も全く知りません。逆に何か知っているなら教えて欲しいぐらいで、痛い痛い」

「嘘はダメだぞ? 弟よ?」

「知らんものは知らんのだいっ!」

グリグリと頭を撫でられるが、僕は絶対に口を割らんぞっ!

「そうか仕方ない。ならばフレア」

「はい?」

「ちょっと現役復帰してこの馬鹿の口を割れ」

「でしたら」

「たぶん先生じゃないですかね? 何かしらの意図があるのかは知らないですけど」

これはあれだ。緊急回避だ。

良く分からないが僕の第六感が告げて来る。『フレアさんを現役に復帰させちゃダメだ』と。

何故か軽くため息を吐いて国王陛下が僕を見る。

「つまりアイルローゼの仕業だと言うのか?」

「仕業と言うか可能性ですけどね。先生なら使えるはずですから」

うん。あの規格外魔法使いなら魔法に関してなら……ああそう言うことか。

これならカミーラが魔法を使っても全部先生の所為に出来る訳か。

誰の企みか知らないけど事前通告ぐらい欲しいのです。

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