軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

……魔女の弟子か

「これは何かの冗談か?」

「残念ながら事実のようです」

「……そうか」

宰相が届けて来た報告書は、近衛団長の部下が作成したものだった。

記した者の名を見て国王ウイルモットは彼女がそのような冗談を書くとは思わないと理解した。

だからこそ余計に頭が痛いのだ。冗談であってくれた方が色々と都合が良かった。

ドラゴンを1人で複数屠るなど想定していなかった。

せめて日に数匹でも倒すことが出来れば十分だったのに……嬉しい誤算ではあるが、喜んでばかりいられない誤算でもある。

「ノイエが行ったと言う事実は隠してあるのか?」

「はい。ですが目ざとい者たちは急ぎ調査することでしょう」

「勘付かれるのは時間の問題と?」

「私はそう思います」

恭しく一礼して来る宰相の発言はもっともだ。面白味は無いが正しい。

「お主ならこれをどうする?」

「はい。ノイエをドラゴン退治に使うのであれば隠すことは愚策。でしたらまずノイエを騎士見習いとし、陛下に忠誠を誓わせます。

そして次に彼女の所属を近衛とし、近衛にドラゴン対策用の部隊を作ります。後はノイエがどれ程のドラゴンを狩れるのか分かりませんが、狩れるだけ狩らせるしかないかと」

「で、あるか……」

顎を撫でウイルモットは軽く笑う。

宰相とすれば悪くない考えだ。だが国王としての考えであれば甘い。

「ならば『ドラゴン退治にノイエを貸して欲しい』と申し出て来る貴族に対してはどう答える?」

「……」

父王の言葉にシュニットは今一度思考する。

相手の口調から、宰相としてではなく跡を継ぐ者に対しての質問だと理解したからだ。

「近衛は王都とこの王城を守護する者です。その者が何故ここを離れる必要がありましょうか?」

「そうだな。では『ノイエを武器とし他国に攻めるべきだ』と言い出したら?」

「同じことです。近衛が王都から離れるなど陛下の許しが無ければあり得ません。他国を攻めるのならばそれは国王自らが動いての遠征となりますが、現状のユニバンスにはそれを行う 予算(たいりょく) はございません」

「うむ。そうだ」

鷹揚に頷きウイルモットは息子を見た。

「ならノイエがその力を使い、この国に対し牙を剥いたらどうするか?」

「……」

予想できる最悪の質問に、シュニットは眉間に皺を寄せた。

ウイルモットは苦悩する息子を見て、重ねて言葉を綴る。

「どこぞの切れ者ならこう言い出すかもしれんな。『裏切らないと保証が無い凶悪な力を持つ者を王都の傍に置くことなどそもそも間違いである。近衛に加えることなど言語道断。地方の貴族たちに預け必要に応じて王都に派遣すれば良い』とな。さあ、どうする?」

この手の策に対するシュニットの思考は『甘い』と言うのがウイルモットの評価だ。

真面目過ぎるが故に最も効果的で周りを納得させられる"汚い手"が使えない。

「それだったらノイエを始末できる者を彼女の部下にする。それでどうでしょう?」

長子とは違う力強い声が響いた。

ドカドカと国王の許可も得ずやって来た近衛団長が宰相の横に立つ。

「地方で牙を剥けばわざわざ討伐隊を組織し派遣しなければならない。だったら最初から彼女の首を取れる者を傍に置いておく。その方が被害は少なくて済みます」

「ふむ。悪くは無いが誰を当てる?」

許可の無い発言など無礼な振る舞いなどこの際忘れ、ウイルモットはもう1人の息子を見た。

兄とは違い不真面目であるが国の為ならどんな汚い手段も使える息子だ。

第二王子であり近衛団長はニヤリと笑い口を開いた。

「近衛所属で小隊を作り、ノイエを隊長にする。副隊長にはフレアともう1人を考えています」

「……魔女の弟子か」

「はい」

実力は折り紙付きだ。家柄も悪くなく、他の貴族たちも『彼女以外に誰を?』と言われれば困ることだろう。

ただし彼女は近衛団長の懐刀であり、何より色々と悶着のあった相手だ。

「それぐらい置かなければ周りが納得しないでしょう? 何よりフレアはあの日、魔女の魔法と対峙して封じ切った実力者です。現状として国軍や近衛の中で出せる最上の魔法使い。それがダメならクロストパージュ家の当主に出向いて貰うしか無い」

正しい判断だ。だからこそウイルモットは苦笑いをする。

この2人は残念なことに2人で1人なのだ。2人が協力すれば優れた王となれるであろう。仲違いすることなくならばだ。

「もう1人の副隊長は誰とする?」

「現在人選中ですが……報告からしてノイエは人として色々と問題があります。その部分を教えて調教できる人材と言うことで、エバーヘッケ家の馬鹿娘をと考えています」

馬鹿娘が誰かは知らないが、国王はその家名を知っていた。

「……あの家は軍馬の育成が主な仕事であろう?」

「馬も人も大差無いかと。何より言葉が通じる分、まだ育成も楽かと思います」

「うむ。それはまあ良い。ただ……フレアだけでノイエを狩れるのか?」

そもそもの疑問をウイルモットは口にする。

報告では彼女はとにかく死なない。毒を飲んでも剣で刺しても生きているのだ。

当然の質問にハーフレンは軽く頷き、一歩二歩と無礼を覚悟で国王に近づいた。

護衛の騎士などが軽く動きかけたが、ウイルモットは片手を上げてそれを制した。

「自分の最強をノイエの傍に置きます」

「……噂に聞く『猟犬』か?」

頷きなどもせずハーフレンは国王から離れ元の位置へと戻った。

今度はウイルモットが悩まされる番となる。

現状使える最強の魔法使いと最強の暗殺者だ。その2人をノイエの元に置くことになるが、ドラゴン退治に兵の数を割くことが減らせるのであれば悪くない。

「ならばノイエ小隊の創設を認めよう」

計算しウイルモットは近衛団長の申し出に応じた。

「だが1つ条件を出す」

「条件とは?」

シュニットの言葉に王は軽く笑った。

「たぶんではあるが、ノイエの小隊はこれ以降もっとも実戦経験が多い部隊となるであろう。であれば、国軍並び近衛より将来有望な人材を集め鍛えるのが良いと思うが……宰相と近衛団長はどう思うか?」

軍事のことであり、先に答えようとしたハーフレンを兄が視線で制した。

「国軍のことは大将軍との話し合いが必要となりますが、この場には近衛団長が居ります。陛下の相談に対しての返答であるならば問題無いかと」

「うむ。ならば近衛団長はどう思うか?」

「悪く無いお考えかと」

「うむ。ならばシュニットよ。シュゼーレとも話を進めよ」

「はっ」

こうしてノイエ小隊の創設は決定した。

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