軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あれの仕業かと思ったよ

「学院に預けると?」

「はい。正しく調査されているか分からないので」

「そうだな……」

宰相としてやって来た息子の報告に、国王であるウイルモットは額に手を当てた。

南部の馬鹿共は半年も費やし、結果としてろくな調査をしていなかったのだ。しいて言えば調査はしている。あの少女は並大抵のことでは死なないことが判明している。

それを知り恐怖した彼らは地下牢に閉じ込めたのだ。

「馬鹿か阿呆か……使えん者たちばかりだ」

「だからこそ御しやすく扱いやすい。そう思いルーセフルトは自分たちの手の内に誘ったのでしょう」

「厄介だな。あの家は」

「ええ。それにアルグスタも居ます。王位継承権を持つ彼が居るとなれば」

「お前たちを殺してこの椅子を取りに来るぞ?」

ニヤリと笑い国王は自身が腰を下ろしている椅子を叩く。

「ですからハーフ……近衛団長が部下を使い調査しています」

「壮絶な潰し合いだと聞いているがな」

「ですが必要なことです」

「そうだな」

息を吐いてウイルモットは息子を見た。

「共和国より正式な通達が来た」

「そうですか」

何事も無いように返事をする彼に、ウイルモットは何となく興味を持つ。

「若すぎる……娘ほどの年齢の妻を得る訳だ。それをどう思う?」

「何とも。ただ自分の行動の邪魔をしないのであれば、何が来ようとも構いません」

興味が無いと言った様子に国王は頭を振った。

「そんなことを言っているから帝国から、もっと幼い娘たちが側室として送り込まれることになる」

「仕方ありません。帝国も共和国もドラゴンの襲撃で国が疲弊しています。今は休戦し、機会があればこの国を奪う気なのでしょう」

息子の言葉は正しい。だからこそ幼い娘たちを妻にさせるべく送り込んでいるのだ。

生まれる子供を傀儡にしユニバンス王国を乗っ取る為に。

「我が国のドラゴン被害は?」

「はい。確実に増えています」

暗記している報告を宰相シュニットは国王に告げる。

「現状酷いのは北西部です。東部はクロストパージュ家の魔法戦士隊が支えているのでどうにか穀倉地帯を護れていますが、西部は帝国領から流れ込んで来る小型が暴れ回っている状態です。

国としては領主たちに柵の制作と補強を勧めていますが……自分の懐を肥やすことばかり考える貴族たちが多く」

「仕方あるまい。人間とは愚かしく欲の塊だ」

苦笑いをし、ウイルモットは息子に目をやる。

「ハーフレンが何か言い出すかもしれんが、その保護した少女……もし使えるのであれば実戦投入も視野に入れよ。良いな?」

「はい。畏まりました」

国王の命を宰相は頷き応じた。

「……私は情報処理担当に命じられましたが?」

「ああ。分かっている」

呼び出した雑用係……では無く情報処理担当にハーフレンは椅子の背を向けた。

正面で相手の顔を見たくなかったのだ。たぶん物凄い表情を見せるのが分かっているから。

「お前はあの場所の一応卒業生だ。知り合いも……まだ居るだろう?」

「ええ」

「別に毎日通えとも言わん。ただ数日おきに確認しに行って欲しい。学院内の出入りはこちらで手配し許可証を発行する」

ちょっとした沈黙の後に、フレアは椅子の背を睨みながら口を開いた。

「だったら新しい魔法隊の隊長にでもやらせれば良いでしょうに」

「あれには断られた。自分の専門では無いらしい」

「……」

背後から伝わる寒々とした気配に、椅子に座るハーフレンは一瞬体を震わせた。

「……分かりました」

「ついでに学院から上がって来る報告書の方の確認も頼む」

「はい」

感情の無い冷ややかな声を残し、彼女は執務室を出て行った。

椅子を……体を正面に戻し、ハーフレンは肺の中が空になるまで息を吐いた。

《何が情報処理担当だ。勝手に捕らえた相手の密偵を拷問して情報収集しているくせに》

集まった情報を処理するのではなく、処理して情報を集めている彼女は地下牢の担当者から恐れられている。だが確実に情報が集まるので止めるに止められない。

何より彼女があんな風になってしまったのは……ハーフレンは大きく頭を振って仕事に戻った。

ユニバンス王国王都内魔法学院

「お久しぶりです。先生」

「……ああ」

まずは相手に一度会ってみようと、馬に跨りフレアがやって来たのは魔法学院だ。

入り口で手続きをすれば『国王命』で特別な許可が発行されていた。

一応卒業生であると言うのもあってすんなりと中に入り、研究棟へと向かい……そこで知人に会った。

王都の一画で姪と2人で診療所をしている元魔法使い。キルイーツだ。

「先生もご依頼で?」

「ああ。つまらん仕事だった」

久しぶりに会った彼は覇気が無くなっていた。学院で最後に見た頃も覇気が無くなっていたが……今は本当に燃え尽きたかのように見える。

ふとフレアは一瞬居るはずの無い存在を目で探してしまい、軽く頭を振った。

彼の養女はもう居ない。罪人として処刑されたのだから。

「良ければ報告を聞きたいのですが」

「……これがそれだ」

「拝見させていただきます」

受け取った木製ボードに張りつけられた紙を見て、フレアは軽く息を飲んだ。

死なない少女……違う。殺すことが困難な少女の報告書だった。

「毒すらも効かないのですか?」

「ああ。飲めば血を吐いて苦しみもするが死ぬことは無い。確認はしていないが実験報告がある」

「……」

彼がこうもやる気を示さない理由が分かった。

少女を実験動物にしていることが許せないのだろう。彼の養女がそうであったように。

「他には……膨大な魔力ですか?」

「らしい」

「……先生。この子は?」

「少なくとも祝福を得ている。見立てでは2つだろう」

道具を仕舞いながら彼は断言した。

「それとかなり複雑な術式が施されている」

「術式ですか?」

「ああ。あれはたぶんこの国の魔法使いでは解除できないだろうな」

鞄を手にし歩き出した彼の背を見つめるフレアは呼び止めることも出来ない。

だがキルイーツは自分で足を止め、肩越しに旧知の学友を見た。

「アイルローゼが居たら大喜びしていただろうな。それかあんな術式……あれの仕業かと思ったよ」

寂しげな表情をして立ち去る彼に、フレアは何も言えずただ静かに頭を下げた。

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