軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

……やる

撤収はスムーズに終えた。

シュニット国王が手配していた近衛の精鋭が近くで待機していたからだ。

ハーフレンはまず怪我人を預け、それと急ぎミシュに手紙を預け王城に走らせた。

厄介事は山盛りだ。何一つ解決していないのに増える一方だ。

「このままアルグを屋敷に監禁しておくのが良い気がして来たな。アイツが動くと厄介事が増える」

「ええ。ですがその反面、国は良くなり何より過去の隠れた問題が明るみに出て来ています」

「それなんだよな。全く……今更エルダーとか会いたくなかったぞ?」

「お諦めを」

サラリと告げるのは、彼の前に座る二代目であるメイド長だ。

横向きに座り確りと主人の片腕に抱かれている彼女の姿を見て警護する騎士たちは何も言わない。

それが本来の姿だと受け入れているからだ。

「エルダー・フォン・ルーセフルトか……あれも魔法使いだったな?」

「はい。放出系の優れた魔法使いです。専門は確か幻術の類かと」

「そうか。つまり俺が斬り飛ばしたアイツの首は偽者だったということか?」

「可能性は十分に」

その現場に立ち会っていないフレアとしては特に言う言葉は無い。

「分家屋敷は処分後に火を放ったからな。首実検などしている暇も無かった」

「なら本当に仕方ありません。次の機会に確実に首を刎ねれば宜しいかと」

「そうだな」

ようやく諦めたのか、彼は頭を振ると視線を前に向ける。

「なあフレア」

「はい」

「……体調はどうだ? 辛くなったら早く言え」

『ふふっ』と笑いフレアは少しだけ相手の胸板に自分の肩を預けた。

「今しばらくは大丈夫です。ですが激しい動きは」

「分かっている。疲労困憊だしゆっくり戻ろう」

「絶対に……割りに……あわん」

王都の正門へとたどり着いたミシュは、衛兵に手紙を託しその場で大の字になり倒れた。

休憩もろくに貰えず、食事を与えられてからの全力疾走だ。

「あ~。しんどい。もう齢かな……」

言ってから悲しくなって膝を抱えていじけだす。

だが『触るな危険』で有名な売れ残りに声をかける勇気ある者は居ない。

よって彼女は自分で起き上がるまでその場に放置され続けた。

「本当に行くんですか?」

「……はい」

ルッテは食べ物を袋に詰めて背負う同僚に目を向けた。

姉からの課題が終わっていないらしく、ボロボロになっていてもまだドラゴン退治に向かうらしい。

「あれですよ。竜人を何人か狩ったし、それも加えれば?」

「それでも足らないんです」

「そうですか」

もう言葉が見つからない。

小さく手を振りモミジがまた森へと消えるのをずっと見送り続けた。

28日目

「……あれ?」

見覚えのある天井だ。うん。知ってる天井だね。我が家の寝室だ。

体を起こすとベッドの端でポーラが寝ている。

「あれ?」

何故に片眼が開かない?

手を伸ばすと、この感触は包帯だね。

あ~。最後に油断して一発貰ったんだ。

ベッドに居るってことはノイエが勝ったんだな。流石ノイエだ。

何度か頷いて気づく。お腹が減り過ぎだよ。

「ポーラ。お~い。ポーラ」

「……ふぁっ」

「おはよう」

「……」

起き上がったポーラが僕を見て、見る見るその目に涙を貯める。

「にいさまっ」

「うおっ」

飛びついて抱き付いて来た。

あ~。本当に妹って良いな。うん。可愛いし。

「はいはい。お兄ちゃんはもう大丈夫だから」

「ぐすっぐすっ」

「だから何か食べるの持って来て」

「ぐすっ……はい」

泣きながらもポーラは駆け足で部屋を出て行った。

「ノイエはもう仕事か」

「はい」

「休み無しだな」

共和国を攻めて帰って来た人に対して何と言う鬼っぷりでしょう。

もしかしたらサツキ村の人たちが限界を迎えているだけかもしれないけど。

はむはむと厚切りベーコンを食べながらポーラから話を聞く。

僕が意識を失ってからの話は後で馬鹿兄貴から聞けば良い。今聞くのはノイエのことです。

「ねえさまは、きのうかえってきてからずっと……にいさまのよこにいました」

「そっか」

「ずっとないてました」

「だろうね。ノイエは本当に優しいから」

だったら起きたことは伝えないと。軽く耳の下を叩いてノイエの術を繋げる。

「今夜は膝枕が良いな」

「……はい」

バコッと大きな音がしたと思ったら、蛇型のドラゴンを抱えたノイエがやって来た。

「ノイエ」

「はい」

「その荷物を捨てて来なさい」

「はい」

トコトコと窓まで行ってポイッと投げ捨てる。

ただズズーンと振動が伝わって来たから、軽くは放っていないな。

「アルグ様」

「ん?」

「……」

言葉が見つからないのかノイエのアホ毛が揺れる。

「みんな」

「うん」

「ちゃんと出来た?」

頑張れ僕。みんなとは何だ? たぶんノイエの家族かな? ちゃんと出来たって言うのは……そう言うことか。

「僕が怪我しちゃったからどうなったか分からないんだよね。だから後で2人っきりで確認しに行こうか?」

「はい」

「なら今はお仕事頑張ってね」

「はい」

楽し気にアホ毛を揺らしてノイエはその場から姿を消した。

そっか。そうだよな。ノイエの家族をちゃんと開放して眠らせてあげるのが今回の役目なんだよね。

うん。ユーリカみたいには無理だとしても、今回は小さなお墓でも作ってこよう。

「あ~。今回も僕は疲れたよ」

ベッドに倒れ込んでとりあえず眠ることにする。

「ん?」

むにっと柔らかな感触が顔を塞ぐ。

とても身に覚えのある……何だっけ?

「起きたのか。少し待ってて」

「ちょっと待て」

今の感じは間違いない。

むにむにの物から抜け出すと、包帯を両手に持った金髪で褐色のノイエと目が合った。

どうやら包帯を外すのに彼女の胸が僕の顔に触れていたらしい。ありがとう包帯。

「顔の傷は残ると大変だ」

言って彼女は外した包帯を投げ捨てる。

「それに残すと戻ってから皆に怒られるし……ボクの身にもなって欲しい」

「だからちょっと待って」

「なに?」

小首を傾げる姿が可愛らしい。

でも知っている。この後の地獄を僕は知っている。

「痛くしない方法とかってない?」

「うん」

めっちゃいい笑顔だ。

「無いよ」

言い切って彼女は抱き付いて来た。

「それに男は我慢だよ」

「いや~! だからリグのぉっ!」

余りの激痛に本当に死ぬかと思ったよ。

徹底的に舐められ、燃え尽きた僕に……小さく舌なめずりしたリグがこっちを見た。

「お願いがあるんだ」

「はひ?」

「アイルに優しくしてあげて」

「は~い」

「ありがとう」

チュッと治ったばかりの額の傷にキスしてノイエの色が変わった。

「……アルグ様」

「なに?」

ギラッとノイエの目が光った。

「……やる」

「ちょっと待ってノイエさんっ! あ~!」

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