軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

死者がこんなに蘇るんだよ?

流石はノイエとその家族だ。完勝だね。

意識が飛びかけると僕の頭を彼女が優しく包み込んだ。

「アルグ様」

「ノイエ」

「はい」

「お疲れ様」

頑張って手を伸ばして彼女にキスをする。

「ちょっと疲れた」

「……はい」

頭がズキズキと痛むけど死んだりしないよね?

大丈夫。僕はノイエとひ孫を抱くまで長生きすると決めてるんだから。

ゆっくり目を閉じて後は任せた。

眠るように目を閉じたアルグスタの様子にノイエは怯え辺りを見渡す。

と、彼といつも遊んでいる大きな人が来た。

「脈に異常は無い。呼吸も正常。頭の裂傷による軽い脳震盪だろう」

「大丈夫? アルグ様は平気?」

「ああ。布で額の傷口を押さえて、そのまましばらく身動きしないで抱きしめてろ」

「はい」

彼の為ならとノイエは本当に身動き一つせずに動きを止めた。

やれやれと肩を竦めたハーフレンはしゃがんでいた弟の隣で立ち上がった。

赤いドラゴンが放った尻尾での攻撃。普通なら頭を吹き飛ばされてもおかしくない一撃だったが、それはユニバンス最強の警護人が居た。

「フレア。スィークは?」

気絶でもしているのか目を閉じている叔母を介抱するメイド姿の彼女に問う。

「はい。左の肩をやられていますが命に別状はありません」

「そうか。手当ては任せた」

あの瞬間……弟の頭部に向けて尻尾が振られた瞬間、ハーフレンは本物の化け物を見た気がした。

どこの世に自身の体を潜り込ませて尻尾を跳ね上げるメイドが居るのか? 何よりそれを確りとやってのけるのだから恐ろしい。

「そこの三馬鹿」

「馬鹿に馬鹿と言われる屈辱を甘受すると良いぞ。ルッテ」

「お前もだミシュ?」

「あん?」

凶悪な表情で歩いて来た馬鹿に拳骨一つを落とし、ハーフレンは3人を見た。

誰もが自分とアルグスタの部下と呼んで問題はない。他の貴族に情報を売るとも思えない。

「さっき見た赤いノイエのことは他言無用だ。言えば俺の持てる力の全てを使って殺しに行く。これはシュニット国王の許可を得ていることだ」

ミシュから拳骨を離しハーフレンは軽く頭を掻いた。

「ノイエはその中に罪人アイルローゼの精神を宿している。と言うより二重の人格に近い状態だ」

「うわ~。マジもんで化け物なんですけど~」

やはり話すべきでは無かったともう一度拳骨を落として黙らせる。

「ただアイルローゼの"術式の魔女"としての力は、国内事情を鑑みても喉から手が出るほど欲しい。

だから俺たちは密約を結んで彼女の正体を誰にも教えないと言うことで協力関係を取り付けた。

その誰にも伝えないと言うのは彼女……ノイエ自身も含まれている。だから今見たことは忘れちまえ。そっちの方が楽だろう?」

拳骨をグリグリしてから離すと、両手で頭を押さえたミシュは涙目で上司の脛を蹴り上げた。

「やってることが昔のユニバンスだよね~」

「言うな。それほどこの国の人材不足は深刻だ」

「あの~ハーフレン様?」

「何だルッテ?」

小さく手を挙げる彼女は何となく周りを見渡してから声を潜めた。

「どうしてそんなに詳しく? 知らなければ余計なことに巻き込まれたりしないと思うんですけど?」

「ああ。逆に知らない者は何も知らない状況になる。つまり少しでも情報が洩れればこの中の誰かと言うことだ。始末するのが楽だろう?」

「……」

顔を蒼くしてペコペコと頷くルッテは性格からして話すことは無い。

「ご心配なく。わたしは誰にも話せません」

ハーフレンが視線を向けただけでモミジはそう告げて来る。

『話しません』では無くて『話せません』の言葉は流石に気になる。

「理由は?」

「詳しくは言えませんが、わたしは余計なことを話すと体を別の生き物に変えられる魔法を受けています」

「俺たちよりも前にあの化け物に出会ったか?」

「……」

答えが無いのが返事だった。

納得したハーフレンは視線を自身のメイドに向ける。

軽く頷いて寄こしたフレアも傷の手当てをしながらスィークに説明を済ませた様子だ。

「まあ喋るな。面倒だからな」

「へいへい」

軽く肩を竦めるミシュなどその様子から一番話してしまいそうだが、彼女は優秀な猟犬だ。

主従関係が確りと構築されているので彼女が裏切ることは無い。

「さてと。後は後片付けをして……何だ?」

それに気づいたハーフレンは背に戻していた大剣を掴み引き抜いた。

無音で無気配。ただ赤い玉が中空に浮かんでいた。

動ける者全員が咄嗟に動き包囲する。

問題はアルグスタの祝福は切れている。

またドラゴンの何かを宿していればモミジの攻撃しか通じない。

ゆっくりと地面へと降りた赤い玉は、そこからじわじわと煙を立ち込める。

煙が形を成して人の姿となった。

「人間?」

「ああ。問題は竜人の類だと」

チラリとハーフレンはモミジに目をやる。

はっきりと疲労が色濃く出ている少女が口を真一文字に結んだ。

「これは物騒な出迎えだな」

「……誰だ?」

ローブ姿の男性の声にハーフレンは大剣を向け言葉を発する。

ゆっくりとフードに包まれた相手の頭がハーフレンを見た。

「……見覚えがあるな?」

「久しいですな。ハーフレン王子」

「……まさかな? お前、エルダーか?」

「はい」

クツクツと笑う男にハーフレンは増々厳しい目を向ける。

「人間を辞めてこの国に復讐しにでも来たのか?」

「いいえ。復讐など……ただ自分は自分が開発に携わった者たちの結果を見に来ただけです」

告げてフードを脱いだ彼はその顔を晒す。

金髪の下には、顔を覆うようにドラゴンの鱗が張り付いていた。

「自分はウイルアム様に協力してあれの研究をしていたのですよ」

「そうか」

「ですがやはり人工のモノはダメですね。これは仕方ない」

興味を失ったとばかりに、彼は視線を外しハーフレンを見た。

「ただあの2人には強い興味を覚えました。司祭テルテントン様の報告は正しかった」

ニヤリと笑い夫の看病をしている妻を見やり、彼は笑うと仰々しく頭を垂れた。

「またいずれどこかでお会いしましょう。今日の敗戦を糧により強きドラゴンを引き連れて」

「ああ。そうしてくれ」

大剣の先を地面に降ろしハーフレンはニヤリと笑った。

「ただしあの2人を狩るのは至難の業だぞ?」

「それは楽しみですね。ではいずれ」

静かにまた赤い煙になって、エルダーと呼ばれた男はゆっくりと消え去った。

しばらく消えた相手が居た場所を見つめ……ハーフレンは大きく息を吐いた。

「もう一度死亡報告の上がっている人間を精査しないとな」

本当に冗談では無い。

「何が狂えば死者がこんなに蘇るんだよ? 全く……」

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