軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これで終わりよ

『とても綺麗な花が咲きました、まる』と言葉にすればあれだけど……本気のノイエの一撃を受けた魔女は頭を失って棒立ちしている。

トコトコと軽い足取りで戻って来たノイエが、撫でてとばかりに頭を突き出して来た。

とりあえず撫でながら……後はノイエの家族を救えば、

「アルグスタ?」

「はひっ」

叔母様のとても冷たく有無を言わせない声に僕の全身が凍り付いた。

「……詳しい報告は後で聞きましょうか?」

「それでお願いします。それと国王陛下からの厳命ですので、今見たことは他言無用でお願いします」

クルッと振り向き、90度に腰を折って深々と頭を下げてお願いする。

「分かりました」

「あとの2人もきつく言っといてください」

「ええ」

静かに歩き出し短剣を回収に向かう叔母様を見送る。

さあ今からの僕はどうやってアイルローゼ先生の登場を誤魔化すかって……いつもいつも勝手に出て来て僕のハードルを上げやがって! 今度会ったらあの足に頬をスリスリしてやるからな!

不満も胸の中で発散し、馬鹿兄貴たちの救援に……ノイエさん?

ノイエが動かない。

彼女のアホ毛がゆっくりと立ったままの魔女に向けられている。

ノイエ自体はこっちを向いて頭を差し出した状態だけれども。

「どうかしたの?」

「……生きてる」

「はい?」

撫でてモードを解除してノイエが顔を上げた。

「まだ生きてる」

説明としては十分だ。僕は咄嗟に残る力を彼女の手に注いだ。

弾けたようにノイエが飛び出し、今度は胴体へ直接拳を振るう。だが弾かれて吹き飛ばされた。

棒立ちしていた魔女の胸に存在している玉が溶けだし、新たな何かが生じようとしている。

ドロドロとスライムのような動きを見せて魔女の体を飲み込んだ。

あ~あれだ。一度負けてパワーアップするパターンか。忘れてたよ。

ブクブクとスライム状の何かが膨らむのを見つめ、僕は頭を掻いてノイエを呼んだ。

「ノイエ」

「はい?」

「待ってやる義理は無い。全力で殴ってあげなさい」

「はい!」

ノイエが殴りかかるのと同時に僕は馬鹿兄貴に目を向ける。

あっちも残って居る部下たちに苦戦している。祝福が切れたのと相手が魔法攻撃に切り替えたのもある。ドラゴンの血肉とかを体に宿すとどうやら魔力が強まるらしい。頑張れ馬鹿兄貴。

視線を戻すとノイエが必死に殴り続けている。

その度に回復と言うか、ノイエの拳で抉れた部分が内側から膨らんで元に戻る。変化が終わるまで無敵時間とか鬼仕様だな。

「ノイエこっちに」

「……」

倒せないことに大変不満そうな彼女が僕の隣で頬を膨らました。

それは良い。どうする? どうすれば良い?

「アルグスタ。ノイエ」

「はい?」

「これでも食べておきなさい」

「どうもです」

流石は前メイド長。気が利いていて助かります。

受け取った特大のサンドイッチを齧りながら空腹を紛らわせる。

馬鹿兄貴たちの方は顔面蒼白になっているモミジさんが必死に剣気を飛ばし続けている。

そろそろ弾切れだな。せめてノイエが……そっかあっちが先か。

「ノイエ」

「あむ」

「……それを食べたらあっちを先に」

「はい」

ちょっと待て! 半分以上あったパンは何処に消えた? 一瞬で消滅したぞ? 飲んだの? ねえ? 飲んだのねえ?

拳を握ったノイエに、祝福と僕の食べ残しのパンを半分に千切って渡す。

無表情のまま『あ~ん』と口を開いてノイエがパンを一瞬で消費した。

トンッと地面を蹴って彼女は馬鹿王子たちを襲っているフード姿の者たちの背中を軽く叩いて行く。

いつもの拳では無く優しく叩いて……それがノイエなんだ。本当に優しくて優し過ぎる。

舞うように全ての人たちの背を叩いて彼女は地面に降りた。

『さようなら』とその口が動いたように見えたのは僕の思い過ごしだろうか。

「アルグ様っ!」

振り返ったノイエが横に動く。ああ……僕が横に、げぶっ!

モロに地面を転がり視界が何とも言えない色が足されて行く。黒と言うか茶と言うか赤茶と言うか……見る見るそれが景色に足される。

「アルグ様っ!」

「ノイエ……」

滑りこんで来た彼女が僕の頭を抱えてポロポロと涙をこぼす。

「ごめんなさい」

「良いから……」

そもそも敵を前によそ見していた僕が悪い。

どうにか息を吸い込んで……残る力の全てをノイエの両手に注ぎ込む。

「ノイエ」

「……ぐすっ」

「全部持ってけ」

「……はいっ!」

グッと涙を拭ってノイエが立ち上がる。完全にアホ毛を怒らせた状態でだ。

「許さない」

どうにか顔を動かし見ると、血の色をした歪なドラゴンが居た。

腕や足の長さもバラバラで顔も歪み崩れて見える。

でもそこに居るのは僕が知る最もポピュラーな二足歩行のドラゴンだった。

「アルグ様をっ!」

一瞬の踏み込みから距離を詰めたノイエの色が赤くなる。

タンッと爪先で地面を叩くと地面から土の槍が生えてドラゴンに突き刺さる。皮膚は破れないが動きは止めた。そして色が抜けてノイエに戻ると、全力で拳を振りかぶった一撃が放たれた。

上から下に……頭から股間までぶち抜いてドラゴンの体が半分以上消滅した。

「これで終わりよ」

もう一度赤くなり、ノイエが左手をドラゴンへと向けた。

高速詠唱から放たれた魔法は腐海だ。

残って居た赤いドラゴンが腐り地面の染みとなった。

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