軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これが答えよ

全員の視線が険悪で殺気立っているのです。

はっきり言おう。僕の祝福はドラゴンにのみ無敵であり、その他には一切通じない。そして僕は弱い。

結果としてこうやって隠れているしかないのです。

とりあえずどこからか湧いて来たモミジさんのポニテの先を掴んで放せない。

顔がグインッと上向きになっているのにハァハァ言える彼女は凄い。

そもそも変態な彼女ではあるが、普段の僕なら女性に対してここまで酷いことはしない。

彼女は以前僕に何かしたっけ? うん変態がうざいな。それかノイエに……記憶に無いが中の人たちがこの変態っぷりを覚えでもしたら大ピンチだ。

これは迫害でも差別でも無い。越えられない壁が存在しているのだ。

「で、モミジさん?」

「ハァハァ……何でしょうか?」

「何でここに来たの?」

「実はお姉様からの課題をこなしている途中でして……」

何かを思い出したのか逝っちゃった目で僕の方を見ようとするので、ポニテの先を引っ張ってまたハァハァ言わせておく。

旅行前にカエデさんからドラゴン500匹退治を命じたとか聞いたな。今まで忘れてたけど。

「まっ良いか。飛び道具が増えた」

「ハァハァ……何をさせる気ですか?」

嫌がっている口調なのに、なぜ涎を溢すのこの変態は?

「僕の祝福をそのカタナにかけるから、あっちの馬鹿王子たちの支援をして」

「……ご褒美は?」

「何を言ってやがるこの変態? 調子に乗ってると地面舐めさせるぞマジで?」

「頑張りますっ!」

マジギレしたはずなのに大興奮された。

もうこの変態、本当に嫌だ。アーネス君に押し付けて何なら一緒に帰国して貰いたい。

「なら」

手を伸ばし彼女のカタナに祝福を与える。

「行って来い。変態!」

ついでに尻を蹴って送りだしたら内股で駆け出したよ。

と、目の前にスィーク叔母様がっ!

「良い判断です。あの……変な娘に敵の視線を向けるとは」

敵である相手が本気で嫌がって居ないか不安になりますけどね。

ガシッと彼女の腕が僕の肘に絡んで……肩から腕が抜けるほどの衝撃を受けたら、目の前に馬鹿兄貴が居た。

「追加だ。急げ」

「これってお腹空くのよ? 祝福持ちなら理解してくれるはず」

もさもさとミシュとルッテが干し肉を齧っ要るのを見て、とりあえず売れ残りの鎧の胸の部分に手を突っ込む。

万能貯蔵庫には干し肉が詰まっていた。胸肉は……無い。

「うぎゃ~っ! こんな場所で襲われたっ!」

「色気の無い。つか生暖かい干し肉って最悪だな」

はむはむと齧りながら、隣に居るルッテの谷間に手を入れて……ドライ杏子の親戚的な物を掴み出す。

「先輩と違ってこっちは冗談じゃ済まないんですけどっ!」

「煩いボケっ! 胸に隠すな! それに僕はノイエの体以外にときめいたりしない!」

言い切って杏子を口に入れて咀嚼する。

ノイエの家族……その本来の姿なら誘惑されるだろうが、今の時点でその心配は無いから嘘じゃない。変化とか出来ないって言ってたしね。

ブンブンと腕を振ってくる馬鹿たちの攻撃から逃れていたら、

唯一魔法で相手の攻撃を防いでいるフレアさんの視線が絶対零度に突入し始めたので、馬鹿兄貴から順に祝福を与えた。

空腹が辛いが……でもどうにかノイエに祝福を渡さないとだ。

ドレス姿の魔女と殴り合いをしているノイエは見た限りほぼ互角だ。

ふざけろよ? あのノイエと互角とか何を間違ったらそうなれる?

「いつから魔女ってドラゴンスレイヤーと殴り合える存在を指す言葉になったの?」

「知るか馬鹿。たぶんもう人間辞めているんだろう」

両手に剣を持ち馬鹿兄貴が、最愛の人と共にノイエの家族を迎え撃つ。

ミシュは自由に飛び回り、その動きに翻弄される相手をルッテが射る。

モミジさんは祝福が切れても剣気とか言うのがあるから互角に戦えている。

で、僕の背後にとても恐ろしい……大変頼りになる叔母様が。

「叔母様は何故そこに?」

「何を言い出すのかと思えば……わたくしの本職は警護ですよ」

「そうでしたね」

脅迫とか暗殺とかが主体な警護人ってどうなんだろう?

「ならお任せしても?」

「ええ。安心して自分の妻を見てなさい」

「ありがとうございます」

言葉に甘えて僕のジッとノイエと魔女を見る。

無表情のノイエと不気味な笑みを浮かべて殴り合っている魔女は確かに人間を辞めている。

ドラゴンを一撃で粉砕するノイエの拳を受けても笑えるのは、余程の馬鹿か変態か化け物だ。

《頭は良かったんだろうな……それをもっと正しく使えば良いのに》

残念ながら彼女はその力をノイエ打倒に傾けた。

って何か変だな? どうして彼女はそこまでノイエを憎む?

前に来た時はノイエを欲しがっていた。それは色々と切り刻んで実験したいとか言ってた。

それから僕にちょっかいを掛けては、ノイエに塞がれていた。それだけだ。それだけであそこまで普通人間って人間を辞めてまで復讐するか?

一度息を吐いて頭の中を落ち着ける。

集中しろ。そして思考は柔軟にだ。先生やお姉ちゃんがいつも僕に言う言葉だろう?

……うん。分かんない。

分からない時は相手に聞くのが一番だと僕はこの人生で学んだ。

一歩二歩と前に出たら後ろから咳払いが。

足を止めて右耳の下を叩いてノイエを呼ぶ。

「ノイエ」

「っはい」

殴った反動でこっちに飛んで来たノイエが僕の横に立つ。

頬を半ばまで引き裂いて笑う魔女に……出会った頃の面影はない。

「聞きたいんだけど良いか? 魔女マリスアン?」

「……何かしら?」

ペッと血の混じった唾を吐いて、彼女はこっちを見た。

「どうしてそこまでノイエに執着する? 今のお前は僕の知る魔女マリスアンには遠く及ばない」

だが彼女はまた笑うと、両手でドレスの胸元を掴み……そして引き裂いた。

「これが答えよ」

「ダメ」

ノイエの両手が僕の目を覆ったので、答えが見えませんでした。

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