軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

行きたい場所がある

「ふおっ!」

突然胸の上に何かが!

息が詰まって飛び起きたら、荷物を入れた鞄がベッドから落ちて床を転がった。

「寝てたのか?」

「……おはようございます」

「まだ夜中だよ」

椅子に腰かけ膝を組んでワインの瓶をラッパ飲みしている人物なんて1人だ。

何故に姐さんが出ているのか謎なんですけど? 今回の姐さんは基本僕の護衛では?

「何かあったんですか?」

「ああ。共和国の暗殺集団が来たから返り討ちにして来た」

「……そっすか~」

どう返事をすれば良いのか結構謎です。

ただ助けられたのは間違いない。

「ありがとうございます」

「はんっ……礼なんて要らないよ。今回は旦那の手伝いをすると決めてるしね」

「それでもお礼はしたいんです」

「好きにしな」

またワインを煽ってカミーラがこっちを見る。

「……お前に死なれると色々と困るんだよ」

「僕としては結構長生きしたいんですけど?」

「だったらユーリカの願いなんて聞いた振りをすれば良い。なのにこんな場所まで来てノイエと2人で共和国相手に戦争なんて正気の沙汰じゃない」

「でも……ノイエの家族をそのまま放置なんて出来ないですから」

「そうだな。お前はそう言うんだよな」

苦笑染みた笑みを浮かべ、彼女は瓶を机の上に置いた。

「なあ旦那?」

「はい?」

「お前は自分が"支配者"の資質があると気付いているか?」

支配者の資質? なにそれ美味しいの?

「全くそんな物を感じてませんが?」

「ある意味恐ろしく鈍感だな」

増々苦笑されるし。

カミーラはそっと右手の人差し指を立てると、自分の瞳を指さした。

「この中の支配者はグローディア。何故だか分かるか?」

「えっと……王族だから?」

「正解だ。でもグローディアはただの王族じゃない。アイツも支配者の資質を持つ女だよ」

意外といっぱい居るのね。でもだったら、

「先生とかもそれっぽい気がするけど?」

「アイルローゼか? あれは無理だ」

「無理?」

「ああ。アイツがもし死地に向かうとしたら付いて行くのはリグぐらいだろう」

先生ってリグしか友達居ないの?

「ならグローディアは? グチャッとされるほど嫌われているって聞いたけど?」

「ああ。でもあれが動けば私たちは従うさ」

「……」

「分からないか?」

「分かりません」

ワインの瓶を掴んで飲み干すとカミーラは軽く肩を竦めた。

「アイルローゼは他人を頼らない。自分1人で全てを成し遂げようとする。だがグローディアは違う。彼女は王族であり、支配者だ。だから他人に命令することに躊躇いが無い」

「それって命令出来れば誰でも支配者になれるって理論になるのでは?」

「その通りだ」

その通りなんだ。

「でも他人に命令するのは難しいぞ? お前は他者の命を好き勝手に扱えるか? 見ず知らずの人間に『死んで来い』と命令できるか?」

「あ~。無理です」

「だろうな。でもグローディアは出来る」

……ん? その言葉だと僕には資質とやらが無い気がする。

「僕は命令できませんよ?」

「そうだ。でもお前には別の方法で人を引き付ける。

自ら歩んでそれを成す。呆れるほどにお人好しで弱いくせにこんな場所に来てまで他人を救おうとする。そしてお前に救われた者たちは皆力を貸そうと集まる。命を捨てる覚悟でな」

クククと笑ってカミーラは椅子から立ち上がった。

「その気になればお前は大王にもなれるだろうよ。どうする? 大陸を支配してみるか?」

「遠慮します」

「だろうな。だからお前に手を貸す者は多いのだろう」

軽く赤い髪を振ってカミーラは窓の傍まで歩くと外を見る。

『何だろう?』と思いベッドを出て……と、物凄く怖い目で彼女がこっちを見た。

「見なくて良い。あれはアイツ等が選んだ自分なりの答えだ」

「ん?」

「気にするな」

軽く目を閉じてカミーラは一瞬沈黙した。

「ホリーからの指示だ。『次は中央都市で暴れる』だそうだ」

「お姉ちゃんの指示が容赦無いんですけどね」

ため息を吐いて床に転がっている鞄を手にする。

開けば中にパンとジャムが詰まっている。これだけあればノイエも黙って寝てくれるかな?

「なあ旦那」

「はい?」

「……これが終わったら少しはファシーに優しくしてやってくれ」

ボリボリとカミーラが頭を掻く。

「今回だいぶ無茶をしている。ホリーの挑発に乗って暴走していると言うのも正しいが……それでもアイツはアイツなりに必死に頑張ってるんだ。不器用すぎるがな」

何とも言えない表情を彼女は向けて来た。

「私はどんなに不器用でも下手くそでも……一生懸命に無茶をする奴が好きなんだ。だから終わったらあれが満足するくらい相手をしてやってくれ」

「はい。ならそのことをファシーに伝えておいてください」

「分かった。悪いな」

「いいえ」

本当にファシーが頑張ってくれてるのは知ってるし、何より終わったら全員が満足するまで僕は付き合う所存です。どんなに貪り尽されたとしても!

「姐さんへの感謝の気持ちはお酒で良いですか?」

「ああ……それともう1つある」

「もう1つ?」

まさかのラブフラグ!

「行きたい場所がある。王都にある戦死者の名を刻んだ石碑だ」

軽く俯いて彼女は口を開いた。

「スハ以外の部下は全員殺しちまったからな……どの面下げてって思うが、それでもグロ―ディアを見てたらアイツ等に頭の1つでも下げたいんだ。ノイエの体だけどな」

頭を振ってカミーラはその長い赤髪で表情を隠した。

「ならその時は高級酒を樽で抱えて行きましょうか」

「……」

「謝って謝って謝って……それで酒を振る舞って許して貰いましょう」

「……そうだな」

こちらを見た彼女は微かに笑うと目元を拭った。

と、色が抜けてノイエに戻る。

「アルグ様」

「ご飯ならここに」

「はい」

軽い足取りでこっちに来たノイエは、ふと足を止めて自分の頬を拭う。

ジッと手の甲を見つめるが、気にせずまた歩き出した。

「……お肉が食べたい」

「朝のお楽しみにしようね」

「む~」

拗ねながらもパンを抱えたノイエがジャムを塗りだした。

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