軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

何せ本当に強いですから

「休暇届か」

「はい。陛下」

僕が提出した書類に……人払いをした国王陛下がはっきりとため息を吐いた。

「真っすぐ共和国か?」

「はい」

「……」

立ち上がったお兄様に誘われソファーへと移る。

唯一残って居たメイド長がお茶の支度をしてくれ、そのまま陛下の背後に立った。

「メイド長。馬鹿兄貴への説明を頼んでも良いかな?」

「……分かりました」

呆れた様子でフレアさんが頭を軽く左右に振った。

「アルグスタよ」

「はい」

「今回も色々と無理をしている。自覚はあろう?」

「はい」

「……そこまでしてノイエを傷つけられたことを許せんというのか?」

「はい」

それだけが理由じゃ無いが、それだって大きな理由だ。

「たった2人で共和国へ行ってどうする? どこまでする?」

「いつも通りの気が済むまでやって来ます。殴り飛ばす相手は決まっているので」

「……」

眉間の皺を指で揉んで、お兄様が本当に深くため息を吐いた。

「お前の気持ちは分かるが、下手をすれば共和国と戦争だ。それをお前はどう考えている?」

「あったぶん戦争にはなりません」

「なに?」

指摘されると思っていた事柄はもう対処済みです。

叔母様ったら仕事が早すぎるんたですもの。

「えっと……フレアさん。ユニバンスと共和国との国境沿いが分かる地図を持って来てくれるかな?」

「畏まりました」

一礼をし出て行ったメイド長を視線で見送り、紅茶を楽しんでいたら思いの外早く戻って来た。

センターテーブル上のお茶セットを退かし、替わりに地図を広げる。

「現在共和国との国境はこのバージャル砦を中心に北東地域に偏っています」

地図を指さし僕はパーシャル砦に指を置く。

「僕が無茶をすれば共和国はパーシャル砦を中心とした北東部。後は北部と東部沿岸に船からの攻撃も予想できます」

「そうだ」

「だったらパーシャル砦から北東部のこの辺の土地をユニバンスのモノにしちゃいましょう」

はい解決。

「……何を言っている?」

しかしお兄様が納得しなかった。

「だからこの辺にキシャーラのオッサンのような新領地を作って緩衝地域を作るんです」

「お前は自分が何を言っているのか理解しているのか?」

「ええ」

軽く頷き僕は、馬鹿兄貴が集めて来た情報をお兄様と共有しているか確認する。

「共和国の国家元首は亡くなっています。ですが選挙をする素振りが無い。つまりハルツェンが無投票で国家元首となる道筋が出来たのでしょう」

応じるようにお兄様が口を開く。

「ただ我が国には未だ亡くなったと言う報は届いていない」

「ええ。共和国は地盤固めを急いでるのでしょう。何より楽勝で国家元首になったから驕っているのかもしれません。なのでこちらはそれを逆手に取ります」

「どうする?」

「ハルツェンが国家元首を暗殺し、国を牛耳ったことにします。それに異を唱えた者が現れユニバンスはその者の手助けをし兵を貸し与える。侵略では無く軍事同盟関係である共和国からの依頼に応じる形ですので非難されるいわれはありません」

「そうだな」

苦笑したお兄様がこっちを見た。

「建前はそうするとして……新領地か?」

「はい」

キシャーラの所のヤージュさんだっけ? 彼が考えたこれを見た時のホリーの興奮のしようは凄かったな。ベッドの上でバッフンバッフンと飛び跳ねたぐらいに。

「ここに共和国前内務大臣ウシェルツェンを領主とし、自治領を作ります。そうすればユニバンスは帝国とも共和国とも接していない国となります。自治領が攻められれば援軍の手配は必要になるでしょう。ですがあくまで援軍。今まで通りの大軍を動員する必要もありません。これで現在我が国が抱えている人材不足の解消にもつながります」

「……兵士の総数を減らせると言うことか」

「はい」

思案に更けるお兄様と、『何か悪い物でも食べましたか?』と言いたげなメイド長。

素案は僕だけどそれをここまでにしちゃうのがホリーです。

「自治領を任せるウシェルツェンをどうする? 彼の所在は不明なはずだが?」

「あの馬鹿はユニバンス国内に隠れ住んでいます。ハルムント家を中心に彼の隠れ家を襲撃する準備は整っています。現場指揮者はスィーク・フォン・ハルムント様。多分しくじりは無いかと」

「そうだな」

苦笑してお兄様が軽く頭を振った。

もう捕まえてありますは問題あるかと嘘ついたけど……問題無かったかな?

「つまりお前が自治領分の領地を共和国から奪って来ると?」

「いいえ。自治領分の領地を残して共和国にはちょっと人災を見て貰おうかと思います」

「ノイエと2人でか?」

「はい。ですから陛下に願いたいのは……国軍の動員と自治領の構築です」

「……」

また思案し、そして数度頷いた。

「私はユニバンスの歴史に名を残せるだろうな」

「それは?」

「大国と呼ばれる二国を攻めたのだからな」

「ええ。ならば大きくその名を残すのも良いかと」

「違いない」

笑いお兄様が僕を見た。

「なあアルグスタよ」

「はい」

「戻って来たら、国王か宰相のどちらかをやらないか?」

「辞退します。自分はノイエとのんびりして居たいので」

「そうか。ならば仕方ない」

冗談か。もし本気だったらノイエとそのまま冒険の旅に出ちゃうところだったよ?

地図をしまい代わりに紙を取り出しメイド長に書記をして貰う。

「ノイエの代わりは?」

「カエデさんのところの30人を」

「お前の代わりは?」

「カエデさんの交渉と一緒にイールアム様にお願いしてます」

「あれなら仕事も確実だし留守を任せるのなら適任だろう」

「はい」

何より彼は王族だ。

他の貴族からのやり玉に上がりにくい。

「ユニバンスからいつ兵を出す?」

「ルッテに監視を。共和国西部に居る敵主力が北部に移動しますので……それを合図に」

「分かった」

あとは細かく詰めて陛下と僕のサインを入れて密約は成立だ。

「だがアルグスタよ」

「はい」

「本当に2人で共和国とやると言うのか?」

「はい」

大きく頷いて僕はその視線を外へと向ける。

いつもの執務室では無く陛下の政務室に来ているので、宙を舞うノイエがこちらに顔を向け続けている。それでもドラゴンを退治するのだからやはり色々と凄い。

「陛下。どうか御心配なく」

正面に顔を向け直し僕は断言する。

「自分とノイエ……僕ら"家族"は共和国ごときに決して負けません。何せ本当に強いですから」

そう。今回は仲間を救う……ユーリカの願いがあるから、ノイエの家族たちが協力を惜しまない。

一騎当千以上の存在を相手に戦争する共和国の方に僕は同情するよ。

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