軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本末転倒でしょう?

ユニバンス魔法学院には個性豊かな魔法使いが多く居る。

その中でも能力的に優れ即戦力と謳われているのが、アイルローゼだろう。

同年代の魔法使いであればその評価を聞いて皆が頷き認める。

次点で数人の名前が出て来るが……それとて天才アイルローゼの3人の弟子が含まれている。彼女がどれ程優れているのかは語る必要が無い。

でも……それを認めず、否、認めていても努力をする者とて居る。

その者の名をミャンと言う。

「あれ~だね~」

「……何よ?」

「拘束の~魔法で~アイルローゼには~勝てないよ~」

「知ってるわよ」

野外に存在する魔法練習用の広場で大の字になって倒れている青髪の少女が居た。

その傍ではフワフワと黄色髪の少女が漂うように揺れている。

空を見上げて大きく息を吐いた青髪……ミャンは上半身を起こした。

自分の限界など最初から分かっている。どんなに頑張っても幼馴染にすら勝てないのだから。

ミャンは内心トゲトゲした気持ちを押し潰し、フワフワとしている幼馴染のシュシュを見る。

自分と違い間違い無く『天才』と呼ばれてもおかしくない能力を持っているのに、やる気の無さが足を引っ張って評価が全く上がらない人物だ。

たぶん彼女が本気を出せば……あの天才に匹敵する評価を得られるはずなのに。

「ねえシュシュ」

「ん~?」

「貴女が本気でアイルローゼと戦ったらどっちが勝つの?」

「ん~」

フワフワする幼馴染はしばらく揺れ動く。

「きっと~最後は~アイルローゼだね~」

「……でしょうね」

「あはは~。あれは~本当に~化け物だよ~」

言いながら練習に飽きたらしいシュシュが、漂うように歩き出して逃げて行く。

そんな彼女の背中を見つめ……ミャンは何とも言えない気持ちで口を開いた。

「でも最後なんだよねシュシュ? つまり最初ならあれと互角に戦えるんでしょう?」

学院で最強と言われている化け物と互角に戦えると言う幼馴染に……ミャンは心を暗くさせた。

「最強?」

「そうです。先生がこの学院で一番強いと!」

頭の中の配線が切れたのか、蜂蜜色の髪を持つミローテが拳を握って力説していた。

ソフィーアはおたおたしているし、フレアなどは興味無さそうに本を読んでいる。ただ部外者のはずだが最前列でリグとシュシュが彼女の話を聞いて拍手していた。

部屋主であるアイルローゼは、額に手を当てて深く深く息を吐いた。

課題をこなしているから弟子たちが自由時間に何をしていても文句など言えないが、何をどうしたらそんな話になるのかが分からない。

「アイルが一番強いの?」

「……そうなっているわね」

子供特有のキラキラした目で見つめて来るリグに皮肉も言えず、アイルローゼは椅子に腰かけた。

「でも~アイルローゼが~一番だよ~」

「そうかしら?」

「そうですっ!」

力説して来るミローテの言葉に耳を塞いで軽く肩を竦ませる。

アイルローゼとしては……何をもって最強なのかを問いたくなった。

「ちなみにその最強って……基準は?」

「魔法の強さです!」

「強い攻撃魔法なら貴女の切断が最強よ」

思いもしない返事にミローテが凍った。

「ならミローテが最強?」

「魔法の強さならそうなるわね」

ソフィーアに紅茶を頼んで、アイルローゼは悲しそうな表情をしているリグを見る。

「でも私には最速の風魔法がある。ミローテが切断を唱える前に勝てるわ」

「ならアイルが最強?」

「さあ? この風魔法は速いだけで弱い魔法だから」

クスクスと笑い弟子が淹れた紅茶を受け取る。

「強い魔法はどれも詠唱と集中する時間が長くなる。実際戦場で大きな魔法を使うなら周りに騎士や兵たちに壁を作って貰わないと使えないわ」

「そうなんだ」

頭の良い子なだけにリグは納得してくれた。

「でも数多くの魔法を扱い、多くの術を刻める先生なら」

「そうね。最強と呼ばれるかもしれないわね」

「です!」

自分の師を最強だと信じ疑わないミローテに内心で呆れつつアイルローゼはシュシュを見た。

「私としては1つの魔法を極めているシュシュの方がよっぽど最強だと思うけど」

「あはは~。褒めるなよ~」

椅子に腰かけたシュシュがフワフワと揺れ出す。

「でも本心よ。封印魔法を極めている貴女は、たぶん私とやれば互角に戦うはずよ」

「あはは~。ミャンに~同じことを~言ったかも~」

「なら貴女の見立ては間違っていない」

「でも~最後は~わたしの~負け~」

フワリと立ち上がり、シュシュは部屋を出て行こうとする。

「そうやって逃げ続けるから貴女は勝てないのでしょう?」

「あはは~。逃げて~ないよ~」

フワフワを止めて、シュシュは振り返りアイルローゼを見た。

「わたしは戦うことが嫌だから封印魔法を極めたんだよ。それなのに戦ったら……本末転倒でしょう?」

「そうね」

「だからわたしは戦わない。この力は大切な人たちを護る力として使うって決めているから」

軽く一礼をして……シュシュはフワフワしながら部屋を出て行った。

その背を見送ったアイルローゼは、苦笑して手を組んで顎を乗せた。

「だから一番怖いのかもしれない。貴女が本気で攻撃に力を回せば、私なんて勝てる訳無いのだから」

恐ろしい牙を隠し続ける彼女に……アイルローゼは首を振るのだった。

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