軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これは罰が必要ね

「あら?」

「どうかしたの? ミローテ」

「ええ。今朝は先生からの課題が無いわね」

いつもなら何かしらの重要書類の上に置かれているその日の課題が書かれた紙が見当たらない。

昨日は自分たちと一緒に研究室を出た稀代の魔女は真っすぐ女子寮に戻っているはずだ。

術式の魔女と名高いアイルローゼの弟子たちは全員が王都の屋敷から魔法学院に通っているため、女子寮のことについては色々と疎いが……朝になっても師である彼女が姿を現さないのはある程度理由が分かる。

「寝坊かしら?」

「本に夢中で朝になったことに気づいて無いのかも」

ミローテとソフィーアの言葉を聞き、最年少のフレアは……読書の方が正解な気がした。

師であるアイルローゼは没頭すると物凄い集中力を発揮する。そのせいで寝食すら忘れるなどいつものことなのだ。

仕事まで忘れられるのは正直困るが、彼女の身分は講師兼学生だからあまり強く非難が出来ない。そもそもあの魔女を相手に非難などする勇気も無い。

「どうするの? ミローテ?」

「いつも通り書き写しをしていれば怒られないと思うけど……」

徹底的な基礎を叩きこんで来る師の教育方針により、基礎中の基礎である魔法語の書き写しなどはいつもやらされている。つまりそれをやっておけば怒られはしないというミローテの判断だったが……椅子に座りぼんやりと窓の外を見ていたフレアが口を開いた。

「先生を呼びに行かなくて良いの?」

「……そうよね。少なくとも声をかけないと」

最年長であるミローテが自分に問いかけるように言葉を口にする。

ただその言葉に3人がその事実に思い至った。

つまりは『それを理由に師である彼女の部屋に行くことが出来る』という訳だ。

「なら私が行って来るわ。うん。それが一番よね?」

「いいえ。何かあったらミローテが対応しないと。年長者だし。だから私が」

「……みんなで行けば良いと思う」

「「……」」

フレアの意見に2人は頷き合って問題が解決された。

「ふなっ!」

開かれた扉から中を覗いたミローテが奇怪な声を発した。

女子寮へと来た3人は、寮内をフワフワと歩いていたシュシュに師の部屋の場所を聞き訪れたのだ。

一応ノックから声をかけて待ってみれば……開かれた扉の向こうには、全裸のリグが目を擦りながら立っていた。

「リリリリリグ? せせせせん先生は?」

「どうかしたのミローテ? 喋り方変だよ?」

「いつもいつも通りよ」

「そう? アイルなら今着替えて……ちょっと待って」

スタスタと室内へと戻って行った少女の悲鳴らしき声が響いた。

しばらくすると部屋着らしい服を着たアイルローゼが歩いて来る。

「ごめんなさいね。昨日リグの検査をしていて今朝は寝坊してしまった。まあこんな場所で立ち話もなんだから全員入りなさい」

「……失礼します」

年下の2人に押されミローテは意を決して師の部屋へと入る。

研究室の状況を知る彼女たちからすると、訪れてしまった今……何となく後悔の念を抱いていた。

間違いなく掃除をさせられると気付いたからだ。

「あれ?」

「どうかしたのミローテ?」

「いいえ。何でもありません」

「そう。なら3人とも適当な場所に座りなさい。紅茶ぐらい出すわ」

「ああ。なら私が」

紅茶の支度をする師の元にミローテが飛んで行く。

改めて室内を見渡したソフィーアとフレアは……その様子に驚かされた。

綺麗に収納されている魔法書が並ぶ本棚。机や床の上には埃1つなく、唯一あるのは頭を抱えて床を転げ回っているリグぐらいなものだ。

何より驚かされるのは棚に並んでいる人形の数だ。どれも精巧で品のある物ばかりが置かれている。

「綺麗」

「うん」

らしく無い趣味を垣間見て驚きつつも、ソフィーアとフレアは棚に置かれている人形を手にする。

「あら? それが気に入ったのなら持って行っても良いわよ」

「良いんですか?」

「ええ。リグにせがまれて暇潰しに作った物だけどね」

「「……」」

師の言葉にソフィーアとフレアは手にした人形を凝視する。

暇潰しで作られた様な出来栄えには見えない。熟練の人形師が丹精込めて作った一品にしか見えないのだ。

「適当に何個か持って行ってくれると助かるわ」

「本当に良いんですか?」

「ええ。手先の練習にもなるからたまに作ってるんだけど……私人形って苦手なのよ」

言いながら立たせたリグに服を着せるアイルローゼが苦笑した。

「そもそも人形ってそう言う物だと思っていたんだけど、リグが言うには別の物があるって。その別の物の方を欲しているリグは作っても貰ってくれないし」

「だから違う。もっと柔らかい。もこもこなの」

「柔らかい人形なんて意味が分からないわ」

本当に要らないらしい彼女の様子から、紅茶を淹れて合流したミローテと共に人形を奪い合う。

「何なら全部持って行っても良いわよ」

「良いんですか?」

「ええ。ただし返品は不可ね。貰って行く以上不要になったら自分たちで始末なさい」

「……妹が喜ぶ」

弟子たちの中で一番姉妹の多いフレアが両腕で抱えるほど人形を確保して行く。

ミローテも人形が好きなのか2体ほど手にし、ソフィーアは一番出来の良さそうな物を1つ手にした。

「ところで貴女たち?」

「「「はい?」」」

「今日の課題は?」

「……先生からの指示が無かったので」

サッとミローテの背後に年下の2人が隠れ、渋々彼女が口を開いた。

すると……魔女の目が細くなり、冷たい笑みを浮かべる。

「毎日あれほどやらせているのに……指示が無いと書き写しも出来ないの? 貴女たちは?」

「「「……」」」

「これは罰が必要ね」

クスリと魔女が微笑んだ。

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