軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

助ける為に傷つける

「……それが~無敗の~女王である~アイルローゼの~伝説だよ~」

「伝説ってまだ先生は生きてますし、現役ですし」

「何よりそれって数年前からですよね?」

「……」

「あはは~。手厳しい~な~」

黄色い髪をフリフリと揺らし、落ち着きのないシュシュが湯船の中でフワフワしていた。

それを見つめていたソフィーアは、何となく不安になって湯船深くに自身の身を沈めて行く。隣に居るフレアなどは最初から肩まで浸かり腕で胸などを護っていた。

唯一年長者であるミローテだけが胸から下を湯に浸けて隠そうとしていない。彼女は自分の師であるアイルローゼに対して絶対の信頼を寄せているからだ。

「それに~しても~女子寮の~お風呂を~借りに~来る~なんて~何か~した~の~」

「はい。今日は掃除で……余りにも埃っぽくなったので」

「それは~仕方~ない~ね~」

普段からフワフワとした動きで独特の口調で喋るのがシュシュと言う少女だ。

最初は独特過ぎる相手の言葉に戸惑うが、付き合いが長くなれば人は慣れるのでそれまでは我慢するしかない。

恥ずかしそうに裸体を隠す2人に変わり、シュシュの話に付き合っているのはミローテだ。

後の2人が肌を隠したがるのは、婚約者が居るから他人に見せるのが嫌なのだと理解出来る。それもあってミローテは2人の分まで封印魔法の天才児と名高いシュシュの相手を務めていた。

「でも~今日は~アイルローゼの~当番~だから~完勝~だね~。今~までに~一度も~破られて~ないし~」

「そうですよ。先生が男子共に負けるだなんてあり得ません」

形は良いが膨らみが乏しい胸を張って、ミローテがうんうんと何度も頷く。

その度に彼女の蜂蜜色した髪が柔らかく揺れた。

「あれ? なんでみんな居るの?」

「「……」」

トコトコと入り口からやって来た褐色の肌を持つ少女に湯船に浸かる4人が口を閉じた。

褐色の肌に隠れることなく黒い入れ墨がその皮膚を覆っている。確かにそれも目を引くのだが、全く何も隠さず歩いて来た褐色の少女リグは、湯船の傍で足を止めると前屈みになって4人を覗き込む。

その体勢が良くなかった。

立派な……齢の割には立派過ぎる胸を持つリグの双丘が重力に引かれてより大きく見える。4人の中で一番立派な胸を持つソフィーアですら可愛く思えてしまう相手の様子に、残りの3人は自身の胸に手を当てて……何も言わず湯船の中に沈んで行った。

「リグ。湯船に浸かるなら体を洗いなさい」

「は~い」

その裸体を隠すことなく歩いて来たアイルローゼに、リグが喜んで彼女の元へと駆けて行く。

「なに?」

「洗って。アイル」

「……良いわ」

褐色の少女の図々しい申し出に聞いてる回りの女子たちが身の危険を感じた。だが呆れた様子で応じた稀代の天才魔女は、少女の手を引いて湯が出ている樋の傍へと向かう。

「アイルローゼって~リグに~優しいよ~ね~」

「そうですね。普段からお菓子とかあげてますね」

シュシュの言葉にミローテが答える。と、口まで沈んでいたソフィーアが浮上して来た。

「わたし聞きました。先生が良くリグを自室に連れ込んでるって」

「……わたしが聞いたのは、良くリグが先生の部屋を襲撃してるって」

並んで浮上して来たフレアがそう言うと、周りを見てまた沈んで行った。

この中で一番胸が小さいのが彼女であり……比べられると辛くなるのだ。

「ん~。アイルローゼの~部屋って~誰も~入れ~ないで~有名~なんだ~けどね~」

「そうなんですか?」

「特別な~魔法が~使われ~てて~。何度か~ミャンが~突撃~したけど~返り~討ち~」

ヘラヘラとシュシュは笑う。

「確かに何度か私も先生の荷物を運んで行こうかと思って断られたことが」

「ミローテは~ミャンと~近しい~匂いが~する~からね~」

「私をあんな変態と一緒にしないで下さいっ!」

「あはは~。変態は~酷いかな~」

一応幼馴染のフォローをしつつ、シュシュはこちらに向かい歩いて来る魔女と少女に目を向けた。

「どうかしたの?」

「ん~。リグが~アイルローゼの~子供の~よう~だって~」

「こんな大きな娘は要らないわ」

「痛いよアイル。胸は勝手に大きくなっイタタ……」

湯船に入ったアイルローゼは、とりあえず褐色の掴みやすい部分を握って不満を解消した。

「やっぱり~異国の~人は~育ちが~良いの~かな~」

「そうとも言えないわよ。移民の人でも小さい子は多く居るし、逆にこの国の生まれで大きい人も多く居るしね」

「アイル。痛いよ」

「我慢なさい」

湯船に浸かってから、アイルローゼは嫌がるリグの全身を触り何か確認しているようにも見える。

つい興味を覚えた4人は、彼女が何をしているのか視線を向け……言葉を失った。

リグの褐色の肌が湯で暖まり、うっすらと全身の薄い皮膚が色を変える。

結果として彼女の体にどれほど多くの傷が存在しているのかをまざまざと見せつけるのだ。

「先生。それは?」

「言わなかったかしらミローテ?」

「何も」

「そう」

褐色の肌を伸ばすのを止め、アイルローゼはリグの背後から抱きしめるように腕を回した。

「当たり前だけど人は成長するのよ。大きくなる分皮膚も伸びる。ならリグの刺青は?」

「伸びます」

「そう。伸びるの。その結果入れ墨で施されている術の式に歪みが生じる。つまりリグの魔法は発動しにくくなっていき、最後は使えなくなってしまう」

言いながら、アイルローゼは抱きしめて居る少女の二の腕の"傷"を撫でる。

「刺青の変形を回避するならどうすれば良い? フレア」

「変形しないように……伸びないようにすれば良いと思います」

「正解よ。だから私とキルイーツはこうしてリグの成長を確認しては、彼女の皮膚を切って入れ墨が変形しないように心掛けているのよ」

呆れた様子で鼻で笑い、アイルローゼは小さく息を吐いた。

「助ける為に傷つけるとか……本当に狂ったことをしているわ」

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