作品タイトル不明
ブクブクブク……
「何がしたいのよ。馬鹿弟子?」
先生の冷めた言葉にゆっくりと顔を上げた。
「……とりあえずグローディアの従弟として、一緒に誠心誠意謝ろうかと?」
「貴方が謝る意味が分からないのよ。貴方だってどう帰って来たのか分からないけど、どこかしらに飛ばされたはずでしょう?」
「あ~うん。でもあっちは別に良いんです」
視線を隣に向けると……床に頭を押し付けている格好の彼女は、こちらに顔を向け僕を睨んでいた。
「グローディア」
「何よ?」
「……ありがとう」
「えっ?」
「本当にありがとう」
あっ……思い出したらちょっと泣きそうかも。
目を閉じて息をしてもう一度従姉を見る。呆然とした表情の彼女はまだ頭を床に預けていた。
「ありがとうグローディア。君のお陰で、僕は死んだ母さんに言えなかった言葉が言えたよ。
多分自己満足だと思うけど……それでもずっと心残りだったんだ。でも言えた。本当にありがとう」
「……」
このことに関しては素直に感謝したい。
「でもノイエがいっぱい泣いてたみたいだから、いつかちゃんとノイエに謝ること。僕からの罰はそれで。後は一緒に謝るから、この中に居る人たち全員に謝罪しなさい。どんなに罵られようが全員に謝りなさい」
それで良い。毎日刻むとかは正直止めて欲しい。
そんなことをしても過去は変わらないし、何より嫌な気持ちが続くだけだ。
確かにグローディアのしてしまったことは結果として悪いことになったけど、それでも彼女は純粋にリア義母さんを救いたかったんだ。
その気持ちは僕にも分かるから。
「一緒に謝ろう。殴られたりするかもだけど謝って回ろう?」
「……」
「はい?」
「ふざけないでっ!」
激高してグローディアが上半身を起こした。と、同時に座っている彼女の股間付近に棒が突き刺さり、僕の背後……背中に自己主張が激しい双丘が押し付けられる。
「アルグちゃんに手を出したら刻むわよ?」
「大丈夫だってお姉ちゃん」
「……もう。アルグちゃんはそうやって甘いからダメなのよ。お姉ちゃん心配で心配で」
肩越しに見たら心配してくれているはずのおねえちゃんの鼻息が荒い。
何の心配をしているのか問いたくなったが、質問したら負けのような気がした。
「あまりやんちゃをするなグローディア? そろそろ本格的に潰すぞ?」
「カミーラも落ち着いて」
「私はホリーと違って」
「姐さんの為に最高級蒸留酒を入手してありますから。今度是非飲みに出て来て下さい」
「……好きにしな」
買っておいたんだけどあれ以降一度として出て来なかったから、ずっと部屋に置かれていたお酒の存在が寂しげだったのよね。
飲んで無いのに買い足すのもあれだし……置いておけといった手前飲みに来て下さいよ全く。
「で、何が『ふざけるな』なの? グローディア?」
「……」
彼女は歯を食いしばると、おかしな程全身を震わせて立ち上がった。
あの~? 足がね。足首から先が考えられない角度に曲がっているんだけど?
「ふざけるな。この馬鹿従弟が」
「はい。ふざけて無いんですけど?」
「それが腹立つのよ!」
激しく髪を振って彼女は僕を睨んだ。ボロボロと涙を溢して。
「あのことは全て私が原因なのよ! 私が何も考えず、ただの我が儘で無茶をした! 結果沢山の人を苦しめた! 全て私が原因なの! 私の罪なのよ!」
泣き叫ぶグローディアは、僕以外の人にも言ってるみたいだった。
「その罪を勝手に半分持たないでよ! ふざけるなっ! この罪は私が1人で背負わなきゃいけないんだから! 私が1人で償わなきゃいけないんだから! だから勝手に手出しをするな!」
絶叫して……彼女は泣いていた。
「謝罪ぐらい……私1人でするわよ……馬鹿……」
そう言って引き摺るように足を動かしてグローディアが出て行く。
追いかけようとした僕をお姉ちゃんが後ろから抱きしめて止めた。
「アルグちゃんの良い所は優しいこと。悪い所は優し過ぎること。
今のグローディアには"優しさ"が一番辛いのよ」
「どうして?」
「ん~。彼女は罰して欲しいから。罪を犯したのに何もされずに許されるのはそれはそれで辛いのよ。だからしばらく放っておきなさい」
言ってお姉ちゃんが僕の首元にキスして来た。
「なら次はお姉ちゃんがアルグちゃんを」
「煩いな~!」
不意にその声が響いて誰かがやって来た。
褐色の肌に金髪の女の子だ。と言うかマジか?
「あれってリグ?」
「そうよ。……アルグちゃん? その目はどこを見ているのかしら?」
「違いますお姉ちゃん。お姉ちゃんの胸は本当に素晴らしいですから!」
ただ目の前にダボっとした服を着て、目をグシグシ擦りながらやってくるリグの胸があり得ないサイズなのです。
身長は普通なのに胸が超弩級とかあり得ないでしょう? 何あれ? リチーナさんレベルかそれ以上だと?
「あれ? どうして君が居るの? 何かあったの?」
「あれだけ騒いでいたのにずっと寝ているリグも凄いわね」
「うん。何か煩かったから起きて来たよ。セシリーンを舐めてからずっと寝てたかな?」
「ある意味平和ね」
呆れた様子で先生がリグの頭を撫でている。
スレンダー美女に甘える弩級の巨乳少女って何さ? ここって本当の意味でハーレムだったの?
「アイル」
「なに?」
「ずっと胸を見て来る。嫌じゃないけど恥ずかしい」
「大丈夫よ。今から罰が下るから」
その言葉通り背後からワラワラと青い髪がね。
「落ち着いてお姉ちゃん! 普段見れない大きさだったから気が迷った!」
「へ~。私ぐらいは見飽きてると言うのね?」
「藪蛇突いたよ!」
全力で逃げようとするけど、この場所には人が集まり過ぎてて逃げ場がない。
「集まりすぎだろう!」
「そうね。外のノイエが泡を吹いてるわね」
「「はい?」」
セシリーンの言葉に全員の視線が彼女に向いた。
「だから集まりすぎよ。流石のノイエも許容を越えたらしくて、ずっと泡を吹いて床を転がっているわ」
「「……」」
沈黙が辺りを支配する。
あの~。集まりすぎとか、許容を越えたとか……どういう意味でしょうか?
「とりあえず全員出て! 直ぐに!」
先生の掛け声で、僕とセシリーンを残してみんな出て行った。
「何なんでしょうか?」
「うふふ。ここもここで楽しいでしょう?」
「そう言える貴女が凄いです」
「アルグさま……ブクブクブク……」
「何しているのかしら? まっそろそろ帰って来そうだし……私も消えないと。
この馬鹿夫婦に付き合ってると魔力を消費するばかりで一向に回復しないし……本当に面白おかしくて困った夫婦よね」
泡を噴いているノイエを見つめ、絶大な力を持つ魔女は肩を竦めるとその姿を消した。
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