軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

彼に会いたい?

「どうした? 坊主?」

「ん~」

「まさかあれか? お前も盛ったか?」

「何故にそうなる?」

「お前ん所の近所のあれだあれ。太一だっけ? 小川で水遊びしていた小学生の女子たちに大興奮して」

「あれは昔っからの変態のなので一緒にしないで欲しいです」

確かに最近太一の姿を見ないと思ったが、今年もお寺にて強制合宿かな? 最近念仏がそらんじられるとか言ってたけど……今時分に将来の仕事が決まるのって羨ましいかもしれない。決まらない場合はコンクリートな建物の中で番号で呼ばれる人生だろう。

「ならどうした?」

「ん~。何か最近凄く寂しいのです」

「ああ。甲子園も終わったしな」

「自分高校野球ファンじゃないっす」

「なら何だ? 競馬か? 夏競馬は儂は好かん」

「自分の趣味に当てはめるのは止めようか? おっちゃん」

振るっていた鍬を止めて何となく周りを見る。

十分に耕したから明日から秋物の野菜を植えて行くんだろうな。個人的には茄子が食べたい。

「おっちゃん」

「どうした?」

「今年は茄子多めで」

「うむ。任せろ。儂の作る茄子は昔っから奥さん方に大好評なんだ。

お前ん所の母親も大喜びだろう? ずっと独り身だしな」

「途中からそんなネタだろうと気付いていたよっ!」

どうもこのおっちゃんは会話を下品な方に持って行く。基本真面目な農家なんだけどね。

「それよりも匠よ」

「へい?」

「お前は将来どうするんだ? 農家したいなら使ってない農地が腐るほどあるからしたい放題だぞ?」

「ん~。将来ね~」

ぶっちゃけノープランだ。

今やっている手伝いだって正直に言えば、お駄賃と新鮮野菜が得られるからやっているだけで……しないで済むならしたくは無い。

となると、僕ってば何がしたいんだろうか?

夢や希望は無いけど……漠然としたビジョンはある。

「自分……将来ビッグな男になる予定なので」

「そうか~」

「信じて無いな?」

「若いうちは法螺吹いてるくらいがちょうど良い」

あははと笑っておっちゃんは受け流した。

おかしい。僕的には将来人の上に立つような感じになるはずなんだけど。

「で、未来のビッグな男よ」

「はい?」

「その辺は牛糞混じりだから長靴じゃ無いと終わるぞ?」

「先に言ってよマジで~!」

帰りに小川に寄った。

向かう途中に商店でジュースを買って、それを飲みながらぼんやりと石を椅子にする。

牛糞混じりの靴は小川の水で綺麗にした。この川って下流の方は取水して飲料水にしてるんだよな……気にしたら負けだ。僕の家は井戸水だから問題無い。

ゴロンと石の上に寝そべって透けるように青い空を見る。

遠くで子供たちの笑い声が聞こえるけど、僕はロリ~では無いので無駄に反応などしない。

「何だろう?」

良く分からないけど凄く寂しい。

いつも通りの生活をしているのに凄く寂しい。

半身を奪われたような気がして……半身以上を失った気がする。

気が付くと何かを撫でたい気分に襲われる。仕方ないから石の表面を撫でて誤魔化す。

「何でこんなに寂しいんだろう?」

ずっと1人だった。片親だから仕方は無いけれど。

寂しさになれていると思っていたけど……ここ最近の衝動は半端無い。

家に帰って相談できる相手でもいれば良いのだけれど、母さんの帰宅は基本遅い。

それについて母さんに文句を言う気など微塵も起きない。どれ程頑張っているか知っているし。

母さんはパートをしながら貯金を切り崩して僕を育ててくれている。贅沢は敵だけど、家族2人で暮らせて行けている。高校に行けたのは無償化のお陰だ。その点だけは政治家な人たちに感謝したい。でも大学は無理だ。通える距離に大学が無いし、奨学金を得たりしてまで行って学びたくも無い。

働きに出て少しは母さんを楽させてあげたい。それにまだ若いし、美人なのだから再婚とかしてくれてもいい。僕の為に一生懸命にならずに自分の人生を楽しんで欲しい。

「……何だろう? 凄く寂しい」

らしく無い真面目なことを考えた結果か……さっきより辛くなった。

こんな時はさっさと帰って寝るに限る。夏休みの宿題は……明日の僕が頑張るだろう。

《……さま……》

「ん?」

体を起こして辺りを見渡す。

誰かに呼ばれた気がしたけど、僕の周りにあるのは溢れんばかりの自然だけだ。

それに『さま』付けされるほどの身分じゃないか。

「まっ帰ってのんびりしよう。そうしよう」

部屋の隅で膝を抱いて一点だけを見つめていた。

ベッド上の彼ではなくなった"もの"を見つめ、ノイエはその表情を完全に殺していた。

息をすることすら面倒臭い。彼が居ないなら動くことも面倒臭い。

ただただ一点を見つめ……そして絶望をしていた。

光と一緒に消えた彼は何処にも居ない。何も聞こえない。何も感じない。

いくら泣いても頭を撫でてくれる彼が居ない。だからノイエは泣くことを止めた。

そしてずっと座っている。何時間とずっと、だ。

「アルグさま……」

抜けたような空気と一緒に吐き出された言葉はそれだけ。

このまま時間だけが過ぎて朝になれば……と、一瞬だけノイエはこれが『怖い』ものであることを願った。それだったらきっと彼が起こしてくれるはずだ。それか抱きしめててくれるはずだから。

でも何の感触も温もりも無い。何も無い。

あるのは……居ないと言う事実だ。

「……」

胸の奥からジワジワと広がる嫌な感情にノイエは喉を震わせた。

泣いても撫でてくれる人が居ないのに、涙が勝手に出て来ようとする。

辛い。苦しい。胸が張り裂けてしまいそうで。

と、ノイエの頭にその手が置かれた。

「本当に彼を愛しているのね」

「だ、れ?」

「私は魔女。すっごくわる~い魔女よ」

ノイエの視線にその姿が映る。

栗色の髪とその目に不思議な模様を浮かべた女性だ。

「でも私はこの世界を唯一愛するって決めた"魔女"なの。だから貴女のその気持ちに応えてあげる」

「……」

「彼に会いたい?」

「はい!」

即答だった。今にも飛びかかって来そうな少女を見つめ魔女は笑った。

「だったら助けてあげる。私も彼には用があるから」

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