軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

嘘だと言って~!

「はい終わり」

「「……」」

パンパンと手を叩いて埃を払い振り返ったアルグスタを、全員が複雑な表情で見つめる。

噂に聞いていた自称"2番目"のドラゴンスレイヤーの実力は、想像だにしないほどの物だった。

群がるドラゴンを文字通りに一網打尽し、疲れた様子も見せていないアルグスタに……恐れを知らない馬鹿がいつも通りに声をかけて来た。

「隊長とか要らないじゃんか~」

「要るって」

「どうしてよ?」

「この国の産業を失いたいならやるけど?」

分かりやすい言葉に全員が納得した。

彼が討伐したドラゴンは全て抉られ断たれボロボロの状態で、残っていればマシな方だ。下手をすれば完全に姿を消した個体すらいる。

「その力を調整して頭だけを消すことは出来ないのですか?」

「僕自身がそんな精密なことが出来るほど、強靭な精神とか持てば可能だと思うけど? だったらノイエに殴って貰った方が早いしね。

何より僕の力はこんな場合の緊急事態でしか使わない方が良いのよ。我が国には屈指の実力を持つノイエが居るんだからさ」

「そうですね」

使い方次第では十二分に使える力を持ちながら、それでも前に出ないのがアルグスタと言う人物だ。

目立つのが嫌いな様子も見えるが、何より妻の楽しみを奪い取るのを避けている。

本当に良く出来た夫婦なのかもしれないと……スィークは納得した。

「ですがこれは他国に知られると厄介でございますね」

「でしょ?」

「この場に居る者は決して口外せぬように。もし言おうとしたならばその命が無くなると思いなさい」

「「はっ!」」

この一戦で増々変な方向に信頼を勝ち取ったスィークの言葉に、近衛の騎士たちが必死の思いで返事を返した。

「さてと。とりあえず怪我人の手当てと……後は援軍待ちか」

「来るのですか?」

「来るよ。コンスーロのオッサンがね」

「……王都の護りは?」

冷めたスィークの言葉にアルグスタは肩を竦めて笑う。

「片づけが終わったらノイエと一緒に急いで帰るけど……それで許して」

「全く……」

呆れつつ頭を振ったスィークは、ため息を吐いた。

「陛下にはご報告します」

「そこを何とかっ!」

「諦めなさい。報告しないと説明が破たんするのです」

「ですか~」

頭を抱えてしゃがみ込んだ甥を、パンを食べてるミシュが肩を叩いて慰める。

「慰めなど要らん! そのパンを寄こせっ!」

「それが上司のすることかっ!」

「上司だからするんだっ! 具体的には持って来た食糧の全てをノイエに食べられたからっ!」

「隊長はああ見えて底無しだからね~」

「うちのお嫁さんの悪口だと理解したから許さん!」

パンを奪い合う2人を眺め、スィークは騎士たちに食糧の提出を命じた。

自身も含め、どうやら空腹者が多数いる状況らしい。

「アルグスタ」

「はい?」

「これからどうしますか?」

「あ~」

視線を泳がし少し考えこんだ甥は、頷き答えを出した。

「まず誰か王都の陛下に結果を届けないとね」

「ならばミシュに行かせましょう」

「勝手に決めるなっ!」

「それから安全を確保して僕とノイエが王都に戻る。途中でミシュを追い抜いたら酷い拷問は、メ……スィークさんにお願いします」

「分かりました」

「分かるなよ!」

「後はコンスーロのオッサンと合流して貰って帰還で良いんじゃないの?」

「問題はありませんね」

「私の酷使は? 結構問題だと思うんだけど?」

諦めず不満を言って来るミシュを無視して、アルグスタとスィークは今後の予定を立てたのだった。

「ならば急いで手紙を」

「良いよ。分かったよ。こうして私は権力者の都合で使い回されて捨てられるのよ。ああ可哀想なミシュちゃん」

「だね~」

「使い回してる奴が何を言うかっ!」

殴りかかって来るミシュの攻撃を交わしている間に、スィーク叔母さんがサラサラと手紙を書く。

「って、叔母さん名義にするの? 代筆?」

「わたくしの名義で良いでしょう。シュニットも納得するはずです」

「おうおう。国王様を呼び捨てとは頭の中が腐ったか? ババアっ!」

スィークさんを『ババア』と言う方が頭が腐っている思うぞ?

しかし怒ることなく背筋をスッと伸ばした叔母様は、出来の悪い子でも見るような目をミシュに向けた。

「問題ありません。公の場でしたら問題ですが、自分の甥の名を呼んで何が問題かと?」

静かに放たれた言葉に、ミシュがさび付いて『ギィギィ』と言いそうな感じの動きでこっちを見た。

「ババアがとんでもないことをだね」

「事実だよ。ってさっき僕も『叔母さん』と呼んだでしょうに。本当なら『とても麗しいスィーク叔母様』と呼ぶのが正しいんだけど」

「褒め過ぎですアルグスタ。事実とは言え」

「……」

ようやく自分の言葉の過ちに気づいたのか、ミシュが今にも腰を抜かしそうに、

「結婚してたのかよババア~っ!」

「そっちかよ」

泣きながら地面を叩き出すミシュを見て、その後の言葉が続かないけどね。

「嘘だ~。このままだと私だけが売れ残りだよ。なんて酷い現実だ。何かこの世は間違ってるよ!」

「事実ですミシュ。現実を直視しなさい」

「嘘だ~。嘘だと言って~!」

絶叫するミシュに、同僚たちの怪我の手当てをしている騎士たちが全員背中を向けて来た。

係わられて絡まれるのを嫌がったのだろう。

ある意味馬鹿王子の部下だな。良く分かっている。

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