軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

消えた?

「あはは! 弱い弱い! 何故こんなにも弱い存在を警戒したのか分かりませんね!」

耳障りな笑い声を発する相手に、拳を握ったノイエが殴りかかる。だが当たったはずなのに、その部分が黒い煙となって感触を失い……そしてまた形を得た相手の攻撃がノイエの背中を打つ。

痛みはそうでも無いが、何故か攻撃された個所が冷たく感じる。

何か嫌な物を押し付けられているような気がして、ノイエは攻撃の形を変えた。

「もう打撃は終わりですか?」

「吹き飛べ」

掌に魔力を集めて投げつける。

あっさりと回避されて……洞窟にぶつかった魔力が壁を壊す。

「あはは~! そのまま続ければここは崩壊してしまうでしょうね! それで良いんですか!」

「……」

問われてノイエは一瞬悩んだ。

別に問題無い気もするけど、壊すと"彼"が何とも言えない表情で頭を撫でて来る。その撫で方は胸がポッとしないから嫌だ。

拳に魔力を纏わせ結局打撃に戻ったノイエは相手に攻撃を避けられ続ける。

(倒せない)

嫌な気持ちが胸の中に広がる。

また倒せないドラゴンが目の前に現れたのだ。

倒せない子は要らない子だ。要らない子は……次の朝には居なくなる。

ガクガクと拳を震わせ、『恐怖』に飲まれたノイエを相手は見逃さない。

大振りな攻撃を受け……彼女は吹き飛ばされた。

「他愛もない。何て弱い存在でしょう」

クククと笑う竜人は、余裕からかノイエを目で追うことをしなかった。

路傍の石にずっと視線を向けることこそ無駄なことは無い。とでも思ったのか。

吹き飛ばされたノイエは……その髪の色を変え壁を蹴り、入り口となった通路へと転がり込んだ。

「あはは~。私よりカミーラの方が良かったんじゃないかな~」

全速力で走るノイエは、恐ろしいほどの身のこなしで通路を駆け抜ける。

朱色の髪をなびかせ、入り口まで戻った彼女は……その色を金へと変えた。

「カミーラはまだ半分汚物よ。だったら貴女の方が動けるでしょ?」

「あはは~。だね~。って人集まり過ぎてない?」

「邪魔なのは引っ張り出して!」

「あら? それは私のことを言っている? ディア?」

「レニーラ。特にそこの人畜無害風の厄介者を最優先で!」

「無理だよ~。セシリーンを怒らせると後が怖いも~ん。さ、ファシー。出ようね~」

「は、い」

数が減ったお蔭で魔力の乱れが無くなった。

小さな絨毯の前に跪いたノイエ……グローディアはその力を解放する。

「レニーラを外に出すのに魔力を使った分が辛いわね」

大陸屈指の魔力を誇る可愛い妹でも、流石に残量が乏しい。

それでもグローディアは指を走らせ魔法語を綴る。

自身が王国の宝物庫から盗み……借りたままの魔道具は、召喚の魔女と刻印の魔女の合作と言われているとても貴重な物だ。ただ生きていた時代が違うはずだから、その真偽は定かでは無いが。

「ノイエが不安がっているからさっさと来なさいよ。馬鹿従弟!」

魔力を注いでグローディアは転移の魔法を発動した。

「暇だ」

パクパクとパンを食べながら広場のような場所で1人過ごす。

そう指示を出されていたからそうしたまでだけど……これってタイミングを間違ってたら大問題になるんじゃないんですかね?

まあポケットに入れていた透明な石が震えたから問題な点だろうけど。

改めてパンを食べつつ、今回ノイエに先行して貰った理由を思い出す。

グローディアと彼女の屋敷跡で回収して来た魔道具を使って、転移して貰うことになっている。だから呼ばれる前に王都で発生するドラゴンを退治し、こうやって待っていろと命じられた。以上。

言うのは簡単で良いよな。やる方の身になって欲しい。お陰でずっと寒風吹き荒む中で待ち惚けだよ。

一応グローディアが転移の道具を準備したら合図を送ると言う話だったので、最悪その合図を受けてから姿を隠せば良かっただけの話だけど。

「にしても……異世界だよな」

動きを止めている透明な石を見つめてそれを懐に戻す。

便利アイテムと言うか、行き過ぎた科学力みたいな力って本当に凄い訳です。

「さて。そろそろ本格的に飽きて……あれ?」

足が暖かくなったと思ったら、爪先から消えてるんですけど? ねえ?

グローディアってば『転移』って説明してたけどどんな仕掛けか言ってなかったな。もしかしてあのハエ男的な分解合成とか無いよね? 今分解合成されると、恐怖パン男になるんですけど~!

「まっ騒いでも仕方ないか」

消え始めた状態で慌てても仕方ない。だったらちょっとでも早くノイエに逢えることを願おう。

「待っててねノイエ。今からご飯持って行くからね」

見る見る足が消え、腰が消え、胸まで消えて……呼吸ってどうなるんだろう?

「ふぇ?」

祝福を使いアルグスタを見ていたルッテは突然のことで食べかけの串焼きを落としそうになった。

近衛の騎士さんが『食べるか?』と持って来てくれ物をチビチビと食べていたのだ。

「アルグスタ様が……消えた?」

現実に戻りルッテは自身の祝福を駆使して再度確認する。

何度見ても長椅子に腰かけパンを食べていた上司が消えたのだ。

「あ~も~」

余りのことに頭を抱える。

「報告しにくいことをしないで下さいよっ!」

心からの叫びが口から出ていた。

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