軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どんな上司だよっ!

「それは確かに困りましたね」

「はい」

まだ季節的に外は寒いから朝から暖炉には薪をくべて燃やしているが、それでも室内は丁度良い温度で熱い訳ではない。

そんな僕の執務室で、汗をかきかきしている小太りの男性が目の前にいる。

どうしてこの手のモブ的な大臣って、小太りか痩せの二択チックなんだろう? たまには個性的な大臣とか居ても良い気がするんたけど。居たら居たらで面倒臭そうではあるが。

「ですが自分が動くことは出来ませんね」

「……何故でしょうか?」

察しろよ。このお馬鹿さん。

「自分は対ドラゴン遊撃隊の監督責任者です。近衛の副団長の地位は『何かしらの緊急事態で近衛が機能できない場合のみ』適用されると現国王から言い渡されています。ですから現状近衛が機能している状態で、自分が何かしらの行為をすることはこの決まりの根底に抵触します」

「ですがアルグスタ様は近衛から人員を引き受け」

「それは近衛の事務仕事が破たんし、緊急処置として一時的にうちの人員と共に手助けをしているだけのこと。本来なら近衛がやらなければいけない仕事なのに、現状近衛を二分し調査していることが間違いだとご理解して頂きたい」

そっちのつまらん悪だくみでこっちか被害を被ってるんだ……そろそろ気づけよ?

「ですが」

「それでしたら国王陛下の許可を取り次いで再度お尋ねください」

めっちゃ笑顔で相手に両手を広げてみせる。

「たぶんシュニット王なら現在調査している事案を即時中止させ、前王一行からの到着の報が無いことの調査をご命じになると思いますがね」

「……」

貧乏くじを引いたのであろう大臣さんが、顔色を蒼くして部屋を出て行った。

「は~。嫌になるね全く。誰か~紅茶」

椅子に座り直してクルッと回して窓の外を見る。

王弟領に向かったパパンたち御一行から『無事到着』の報告が届いていないのだ。

閃光系の魔法なり昔ながらの狼煙なりで、報告して来る方法はあるのにだ。

「どうぞ」

「ありがと~」

珍しくクレアが紅茶を淹れて来た。

「アルグスタ様?」

「ん~」

「どうしてあんなに頑なにお断りしたんですか?」

「ん~」

紅茶を一口啜って……ちょいと茶葉が多いな。気持ち渋い。

「言ったでしょう? どこかが2つに分かれて調査し合っているから問題なんだって」

「言いましたね」

「で、あのお父様のことだから故意に報告をして来ないくらいのことをするっぽいのよ。

そうなるとこっちは確認の為に人員を割かなければいけない。でも近衛団長は基本王都の守りだから去年までみたいに動き回れない。そうなると派遣されるのは信用の出来る誰でしょうか?」

「コンスーロさんですね」

「はい。正解」

その通り。大臣たちが調査責任者としているコンスーロのオッサンが向かわざるを得ない。そうなると何日も……下手をしたら何十日も戻ってこない可能性が生じる。

折角フレアさんの件でクロストパージュ家を突っつけるチャンスだから彼らはそれを逃したくない。

そうすると代わりに誰を向かわせるかという問題が生じ、そこそこの地位を持ち近衛に関係する人材を代役に……で僕となる。

「僕は基本、他人の悪だくみに付き合って面倒臭い状況に追いやられるのが大嫌いです」

「……本当はノイエ様と離れるのが嫌なだけですよね?」

「否定はしないよ。ノイエは僕の命ですから」

あっさりと認める。

ノイエは王都の対ドラゴンの防衛の要だから許可なく王都を離れられない。

許可の申請と王国軍への協力要請などの手続きを踏むくらいなら『1人で行け』と絶対に言われる。

何故愛しいノイエと離れて、メイドの尻を追いかけるパパンを探しに行かねばならん!

だったらここでソファーではむはむとケーキを食べている彼女を見ている方が良い。

ああ……やっぱり可愛いな、僕のお嫁さんは。

「アルグスタ様~!」

「うおっ?」

換気の為に開いたままの入り口から黒い髪の女の子が飛び込んで来た。

あ~。モミジさんだ。久しぶりだな。

「アルグスタ様~!」

「おう。久しぶり」

「お久しぶりです」

ペコリと挨拶をして来て、彼女は顔を上げるなり泣き出した。

「申し訳ございませ~ん。勝手に王都を出てしまって」

「あ~。うん。勝手は拙いよね。うん」

やべ~。最近忙しかったからすっかり彼女のことを忘れてた。

王都に居なかったの? 拙くない?

「それもこれもトリスシア様が~」

「オーガさん? あ~。分かるように説明してくれるかな?」

「はい」

で、新年後……と言うか温泉から戻って来てからの彼女の行動が判明した。

色んな意味でアカン気がする。他国の要人を勝手に連れ出して新領地を巡るとか……オーガさん的には持て余す暇を潰す為のゲーム感覚なんだろうけど。

「ご心配しましたよね?」

「あ~」

念を押すような彼女の視線がちこっと痛い。

「ごめん」

「はい?」

「存在自体忘れてた。本当に忙しくて」

「あ゛っ!」

人の口から出る音なのかと言う音が出た。

何故かモミジさんはその身をクネクネさせると、とても穏やかな表情をこっちに向けて来た。

「失礼します。ちょっとお花摘みに」

「……」

「おほほほほ……」

何故か内またで退出して行く彼女が全力の小走りだ。

本当にお花摘みに行くの? 絶対別のことをしに行く感じでしょう? ねえ?

「問題が山盛りなのに騒がしいのが帰って来ちゃったな」

「……捨てる?」

「そっちの方が大問題になりそうだから許して下さい」

「はい」

いつの間にかに隣に来ていたノイエがそう言って僕の顔を見る。

何だろうと思って見返していたら、軽く腰を折った彼女がキスして来た。

うん。今日のノイエのキスはケーキの味がする。

「っていきなりキスで部下を出迎えるとは、どんな上司だよっ!」

久しぶりに聞くやかましい声が部屋に響いた。

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