軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お互い齢を取ったものだ

「ほほほ。随分と頭を痛めているようだなシュニットよ」

「ええ。あの2人は仲が良いのか悪いのか」

随時上げられてくる報告の大半が、近衛と遊撃隊とのいざこざだ。

協力して任務に当たっているようにも見えるが、その実巧妙に嫌がらせをし続けている。

ただ問題児アルグスタは分け隔てなく敵対する全員に攻撃を仕掛けている。

つまり被害者は近衛と大臣たちだ。

「アルグスタの性格の悪さが際立っているのう」

「ええ。あれは悪戯と言うか嫌がらせに関しては全力で望みますので」

「困ったものだな」

本当に困った問題ではあるが、それを笑って済ませる父親も大概なのだろう。

苦笑し、現王は前王に1枚の紙を差し出す。要点だけを細かく纏めた報告書だ。

「こう言った点に気を配れるのは、アルグスタの美点だな」

「ええ。感情的になっているハーフレンには無理かと」

「感情的になって無くても無理だろう。普段ならコンスーロが提出して来るだろうがな」

現状近衛は2つに分かれて仕事をしている。

本隊は団長ハーフレンが指揮し、分隊を副官コンスーロが指揮している。

ただ調査内容が互いに一致しない為に普通なら内部でいざこざが起きるはずだが、今回は明確な敵が存在しているので近衛の中は比較的穏やかだ。

「アルグスタはここまで考えていると思うか?」

「たぶん偶然だと言って笑うでしょうね。自分も偶然の産物だと思いますが……あれは何かと運が良い」

「否定は出来んな」

好き勝手やっているアルグスタだが、今のところ致命的なミスをやらかさないで居る。

手ぐすねを引いて彼のミスを待っている者たちも居るが、ミスをあっさり挽回する幸運の持ち主だから始末に負えない。

「まあ良い。ただアルグスタの報告が正しければ二大国……たぶん帝国辺りが裏で手を引いているかもしれんな」

「新領地の腹いせですか?」

「それもあるが……現状ユニバンスは、ドラゴン過多のこの時代で戦争を仕掛けて領地を奪い取った数少ない小国だ。全方向から帝国を攻めている者たちの希望であろうな」

『小国ユニバンスにも出来たのだから、彼の国に続け!』と言って戦場で兵たちを鼓舞する。

関係の無い場所で勝手に名前を使われ下手をすれば恨みを買う……国を統べる執政者ならば誰でもすることなので文句は言えないが。

「まあお主には良い経験じゃろうて」

「普通と違う経験ばかりですが?」

「血で血を洗う経験ばかりで無いことは良いことぞ」

言って前王は立ち上がる。外出用の出で立ちでだ。

国王を辞した身であるから彼の身なりは前より質素になっている。

だが端々に手の込んだ細工などが施され決して貧相には見えない。

今日の彼は現王に挨拶に来ただけに過ぎないのだ。

「伯父上様に宜しくお伝えください」

「分かっている。だがあれが病気とはな……お互い齢を取ったものだ」

笑いウイルモットは王の執務室を出る。

「リアのことは頼んだぞ。誰か顔を出して話し相手を務めてくれ」

「分かりました父上」

彼の念押しに苦笑し、シュニットは立ち去る父親の背中を見つめた。

自分が大きくなったのか彼が小さくなったのか、昔に比べ縮んだように見える背中が何処が儚げだたった。

これがシュニットが見た……元気に歩く父親の最後の姿となる。

「すごっ」

「はい」

仕事の途中で国王様からの命を受けて城を出る。行き先はラインリア義母さんのお屋敷だ。

『少し行って話し相手を務めて来て欲しい』との言葉で、暇だと思われている僕らが選ばれた。

あの人は人前に姿を晒せないので、行ける人は限られているから仕方ないんだけど。

で、折角だから新店舗を覗いて行こうと思って来たら……本日開店だったのを忘れてた。

実際はもう何日か後の予定だったんだけど、問い合わせが多過ぎて急遽開店を前倒ししたらしい。

店舗の前には長い行列が出来ていて、列を捌くのに人が足らないらしく巡回している衛兵まで手伝っていた。

「これはあれだな。馬鹿兄貴が別の仕事をしてなかったら、朝から文句を言いに殴りこんで来てたな」

「はい」

帽子にマフラーまでさせたノイエが、僕の腕に抱き付いて離れない。

姿を晒すと人気者の彼女を見た人たちが騒ぐから言う理由で変装させているが、実際はホリーが出て来て色が変わっても良いようにの配慮だ。

ここ数日は、夜な夜な出過ぎてガス欠のはずだから出て来れないはずだけど。代わりに最近出れなかったファシーが昨夜拗ねまくって大変だったけどね。

拗ねながら笑うとか新しい恐怖体験だったな……あれは。

「あっ! アル……じゃなくてオーナー」

「ほい。凄いね」

「ええ。ビックリするくらいに」

駆けて来たホールンさんがめっちゃいい笑顔を見せて来る。

商人として千客万来なこの状態は嬉しくてたまらないだろうな。

「何日かすると落ち着くと思いますが、数日はこんな状態だと思います」

「だね。落ち着いたら報告して頂戴な」

「はい」

「それと」

懐を漁って硬貨を取り出す。

「衛兵さんたちに『酒代にして』とか言って渡しておいて。お店の従業員の方は店長と話して少し賃金増やしても良いからさ」

「分かりました」

小銭を受け取り、彼はまた店の方へ走って行く。

本当ならホールンさんに店を任しても良かったのだが、経験不足がマイナスに出ると困るので、メイド長が連れて来てくれた隠居した元商人さんに店長に就いて貰い見習いとして仕事を学んで貰っている。

ただホリーの弟だけあって頭は良いらしいので、何か月かしたら店長にしても良いかもしれない。

「アルグちゃん」

「うん?」

碧い目がチラッとこっちを見て、甘えるように身を寄せて来た。

「本当にありがとう」

「良かったね」

「……はい?」

色が変わってまたノイエに戻っていた。

可愛らしいお嫁さんを連れて僕らはそこから移動した。

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