軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ノイエが許してくれるなら、ね

「家族を愛していた……と言うのですか?」

ポロポロと泣き続けるコリーさんの言葉に、僕はただただ頷き返す。

「ええ。ただ本当に不器用だったんですよ。それと頭が良すぎたのかもしれないですね。

邪魔を排除する方法として、彼女は自分が出来る一番簡単なやり方を選んでしまった。そしてそれを実行するだけの才能を彼女は持っていた。だからあのような結果となった。

でもきっとホリーは心から家族を愛していた。お姉さんや弟さんを守りたかったんです。何より家族と一緒に過ごしたかったんだと思います。

だから僕はそんな彼女の願いを叶えてやりたくなったんです」

恐ろしいくらいに本音と建前と嘘が出て来るよ。

何よりノイエの腕に抱き付いて来る力が増す一方なんですけど……お姉ちゃん? 本当に我慢して下さい。正体がバレると、たぶんグローディアが大変なことを起こす気がするので。

「でも私たちはホリーに迷惑ばかり」

「気にしなくても良いと思いますよ。そんなこと」

「……そんなこと?」

驚いた様子でコリーさんがこっちを見る。意外と美人なので見つめられるとドキッとします。

「愛している人からならどれほど迷惑をかけられても苦と思わないもんです。だから僕は妻の普通と違う行動ですら 愛(いと) おしく思えるんです。たぶん弟さんもその気持ちが分かるかと」

突然の振りに彼が少し照れた様子で頷く。これで頷かなかったら……ホリーがキレそうで怖いっす。

「だからホリーは迷惑だなんて微塵も思っていなかったと思いますよ。

きっと彼女は貴女たちを守れることが嬉しくて仕方なかったのかもしれないですし……まあ方法はちょっとあれですけどね」

「……そうですか」

弱々しくも、でもコリーさんが柔らかく笑う。

お姉さんがこれだとしたら、もしかしてホリーも相当の美人だったのではなかろうか? 何より胸が大きかったと言う自己申告が……落ち着け僕よ。僕はクビレ派だ。ずっとノイエの胸を押し付けられているから思考がそれ寄りに傾いただけだ。

「でもアルグスタ様は……ホリーを知っているように語るのですね?」

「あ~。ええ。報告書を読み尽くして想像してみたんですよ。色々とね」

「そうですか」

何処か落ち着いた感じに見えるコリーさんは僕のことを信用してくれたのかな?

後は簡単な会話と明日からの予定を話して今日の所はこれで終わりにする。というか、そろそろ僕の腕が限界です。

「では明日からお願いします」

「「はい」」

2人に見送られ歩き出すと、グイグイとノイエが僕の腕を引く。

宿を出て少し歩いて真っ直ぐ裏路地へ。

人気のない場所で……ボロボロと涙を溢す碧色の瞳が僕の顔を見た。

「酷いよアルグちゃん」

「はい?」

泣きながら抱き付いて来たホリーが僕の胸に顔を押し付ける。

「事前に言っておいてよ……じゃないと私、正体明かしそうになったよ」

「ああ。ごめんね」

「嫌だ。許さない」

顔を上げて彼女が僕を見る。

「ギュッてして」

「はい」

優しく腕を回してノイエ越しにホリーを抱きしめる。

彼女は僕の胸に顔を押し付けると体を震わせて泣き続けた。

会いたかったのだろう。

話したかったのだろう。

何より傍に居たかったのだろう……彼女の声からそれが容易に想像出来た。

でもそれは出来ない。

死んだはずの、罪人として処刑された彼女は存在してはいけない存在だ。

亡霊よりも始末に負えない悲しい存在なのだ。

「ごめんねお姉ちゃん」

「許さないんだから」

「うん。でもごめん」

「許さないんだから」

しばらく泣き続け落ち着いたのかホリーがその顔を上げると、僕の首に腕を回して背伸びをして来る。

貪るようにキスされて……また胸に抱き付いて来た。

「今夜は私とずっと一緒に居なさい」

「はい」

「ギュッてしててくれないと許さないんだから」

「はい」

「……」

ホリーが僕にギュッとする。

「アルグちゃん」

「はい」

「……ありがとう」

「どういたしまして」

腕を放してホリーが僕から離れると、クルッとその背を向けて来た。

「ああもう……こんな泣き顔をいっぱい見られて、ノイエが可哀想」

「そうかな? 可愛いと思ったけど?」

「……もう」

向き直ってホリーが笑う。

「もうダメだ。完全にアルグちゃんのこと好きになっちゃったよ? 私……アルグちゃん無しじゃ生きていけないと思う」

物凄く普通にとんでもないことを、うちのお嫁さんの体を借りたお姉ちゃんが口走ってるんですけどっ!

「ちょっと落ち着こうか?」

「無理。だからアルグちゃん」

「はい?」

完全に涙を拭った顔で彼女が言う。

「ノイエと一緒に私もお嫁さんにしてくれる?」

あの~。えっとだからこれは色々とあれ~な訳でして。でも断ると……ああもう!

「ノイエが許してくれるなら、ね」

「そんな逃げ口上は好きじゃ無いな。ノイエだってこういう時は男らしさを見せて欲しいと思うよ?」

少し怒ってホリーが笑う。

色が違うだけでノイエのはずなのに……たぶん今の僕は"ホリー"の笑顔を見ているのかもしれない。

「アルグちゃん」

「……はい」

そして逃げ道は無いらしい。

「私もお嫁さんにしなさい」

「……分かりました」

「宜しい」

クスッと笑ったホリーは、その色を手放してノイエへと戻って行く。

辺りを見渡したノイエがトコトコと歩いて来ると僕の腕に抱き付いた。

落ち着いて考えると、ノイエって本当に凄いな。

突然気が付いたら知らない場所に放り出されているのに全く動じない。強心臓過ぎるだろう。

「ねえノイエ」

「はい」

「ありがとうね」

「はい?」

小さくノイエが首を傾げる。

強心臓よりもこのことを疑問に思わないノイエの性格に救われているとも言える。

「ノイエが僕のお嫁さんで良かったなって話です」

「……はい」

甘えて来る彼女を連れて、僕らは帰宅の途に着いた。

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