軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

俺はまだ戦いたいんだ

その男は正門入り口の前で陣取っていた。

前線での活躍で『巨人』の別名を得て、その別名に似合うように改名までした。

憧れである近衛団長『ドウリアス・フォン・グエル』から『ゴブリアス』と。

これからもまだ自分の名は広く知れ渡るはずだったのに……争いが終わった。

突然の終戦。前線からの撤退。

残された戦いの道は、ドラゴンと言う規格外との戦いの場だけだ。

魔法を持たない人間では抗うことも難しい存在と何をどう戦えと言うのか?

ならばまた戦いの場を作れば良い。得れば良い。

「俺はまだ戦いたいんだ」

血走った目で敵を睨みつける。

やって来てから包囲と降伏勧告ばかりする腰抜けたちをだ。

戦場に来たのなら相手が居なくなるまで殺し合いをするのが常なのに、自分たちを取り囲んでいる者たちはどれほど挑発しても決して動かない。

張り合いの無い相手に……ゴブリアスは単身での突撃を考えていた。

自分が動けば味方も動くはずだ。

むしろ血に飢えた同胞たちの期待の眼差しが向けられているような気すらして来る。

それに背後の要塞は数多くの敵を屠って来た難攻不落の存在。少し離れたぐらいで落ちる訳が無い。

『行くか?』と覚悟を決めた所で、敵兵に動きがあった。

頭を軽く振りながら首を鳴らして歩く巨躯の青年を先頭に、10にも満たない者たちが歩いて来る。

また降伏勧告の使者かと思い……ゴブリアスは相手の首を取って戦いの火ぶたを切ろうと企んだ。

「そこで止まれ! ユニバンスの弱虫共が!」

前方からの声に先頭を行くハーフレンは足を止めた。

鉄製の鎧を身に纏った……鼻の潰れて折れ曲がっている男が踏ん反り返って歩いて来る。

ハーフレンは反射的に左斜めに手を差し出したら、顔から突っ込んで来たミシュがひっくり返った。

掃除する気満々で足を止めていなかったらしい。

「また降伏勧告かっ! 我々は決して降伏などしない!」

前まで来た男がそう吠える。

それを冷ややかに見つめ……ハーフレンは背負っている荷物を掴んだ。

「済まんな。俺たちは別件だ」

「はぁ?」

眉間に皺をよせ顔を寄せて来た相手が……何度か瞬きをして驚いた様子で後ずさる。

「まさっ……お前はっ!」

「邪魔だから退いてろ」

両手で持った荷物……宝剣『胴斬り』で、ハーフレンは目の前の邪魔な存在を文字通り吹き飛ばした。

何より最初から彼の獲物は、ゆっくりと近づいて来る巨人だ。

弱い自分。それを自覚しているからこそハーフレンに迷いは無い。

弱いのならば強い者を打ち倒して強くなれば良い。

まともに剣が振れないのなら振れば使える武器にすれば良い。

そう思い今手にしている宝剣を王城の宝物庫から勝手に待ちだして来た。

どうせ誰も扱えずに死蔵されている武器だ。存分に使ってやる。

「何だ。俺様が殴り殺そうとした王子様じゃないか」

両手で戦斧を左右に持つ男が楽しげに笑う。

前線で暴れ続けた巨人ゴブリアスだ。

「殺しておかないから……今からお前は死ぬことになる」

胴斬りに纏わせていた布を剥いで、ハーフレンはその剣先を相手に向けた。

と同時に部下たちが動いて二人だけの決闘の場を作る。

様子を伺っていたゴブリアスは鼻で笑うと、自分の背後に顔を向けた。

「手を出すな! 王子を殺してから敵に突撃する! 準備をしておけ!」

「「おおっ!」」

正門前で待機していた男たちがその声に湧く。

誰もが戦場での人殺しに酔って精神を狂わせた者たちだ。

折角殺し合いが出来ると思い来たのに……何日もお預けを食らって我慢の限界だったのだ。

正面に向き直ったゴブリアスは、両足を肩幅ほどに広げて軽く腰を下ろす。相手の攻撃を真正面から受け止める構えだ。

対するハーフレンは左足を前に出して剣先を相手に向ける。突撃を主体とした一撃必殺の構えだ。

「今度は生かしておかねえ」

「奇遇だな……俺もだ」

同時に2人が動いた。

「王子が!?」

部下からの報告を受けたシュゼーレは、想像していなかったことに椅子から転げ落ちそうになった。

今回の遠征に王子が勝手に来ていたことも問題だが、そんな人物が敵を相手に正面から戦いを挑んで一騎打ちをしているのだ。

思わず頭を抱えそうになる自分に鞭打ち、シュゼーレは立ち上がると駆けるように足を動かす。

「王子の元に案内せよ!」

勝手の行動は後で国王陛下に報告して処罰して貰えば良いことだ。

だが何かあれば一大事だ。大切な希望を失う訳にはいかない。

シュゼーレはあの日、あの時の少年の顔を今でも覚えている。

自分の母親を助けて満足気な表情で眠る少年の姿だ。

あれこそが国を支える者たちが本来持つべき素顔なのである。

自分たちの代では叶えられなかったことでも、子供たちの代になれば叶えられるかもしれない。

その為には……道しるべとなる王子には生きていて貰わなければいけないのだ。

『何よりあの日……自分は死ぬことも出来なかったしな』

部下たちと共に迫りくるドラゴンと戦い、多くの部下たちが死んで行った。

それでも彼は最後まで生き残り、今では『大将軍』などと言う地位に居る。

『この命など国の為に捨てる覚悟だ。必要ならば王子の盾になってでも』

迷うことなく足を動かす彼は……野次馬と化している兵たちを掻き分け前方へと躍り出た。

その視線に入った物は、

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