軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お主が次の大将軍ぞ

「むりぃ~」

「何だ?」

突然聞こえて来た声に、王都の入り口で警備に立つ守兵は視線を向けた。

何処からやって来たのかは分からないが、全身を濡らした少女が地面に転がって居る。

昨日から今朝まで降り続いた雨で濡れたのだろう。

「そんな所で寝ると風邪をひくぞ?」

「無理……食べる物を」

「物乞いか?」

と、ゴソゴソと少女が懐を漁り何かを取り出す。

必死に腕を伸ばし見せようとする行為に、守兵は持ち場を離れて受け取った。

鈍い色をしたそれは本来なら腰に付ける物だ。準騎士の飾りでもある。

「騎士様かっ! 誰か! 人を!」

慌てて守兵は同僚に声をかける。

「食事~」

「……飯だ。何か食える物をっ!」

「あとワインとおつまみ~」

「……注文が多過ぎるだろう!」

守兵の言葉はもっともだった。

「ユニウが?」

「はっ」

王都の入り口で飯をたかる馬鹿の飼い主としてハーフレンが呼び出された。

昨日は夕方まで抱き付いて離れないフレアの相手をし続け、それから相手を屋敷に送り届けてからたまりにたまった急ぎの仕事をして帰っていない。

着替えは屋敷から取り寄せれば問題無いが、眠気ばかりはどうにもならない。

だがあの馬鹿犬が持って帰って来た報告に眠気など吹き飛んだ。

「馬鹿は?」

「コンスーロ様がお話を聞いてます」

「なら俺は城に向かう。コンスーロには聞き終り次第、城へ向かえと伝えろ」

「はっ」

走って行く部下を見つめ、ハーフレンはやれやれと頭を掻いた。

仮に報告通りユニウ要塞が落ちたとなると厄介だ。

場所が場所だけに共和国と手を結ばれると、王都までの守りはバージャル砦しかない。

「最近雨ばかりでドラゴンが静かだと思ってたらこれかっ!」

愚痴を発しながらもハーフレンもまた城へと急いだ。

「報告を」

「はっ」

王の横に立つ若き宰相見習いである兄の言葉に促され、ハーフレンは部下から預かった報告書を読み上げる。

薬事件の容疑者が国外に逃亡した恐れがあると言うことで、国境に派遣した部下の1人が偶然ユニウ要塞での騒動を目撃。調査の結果、要塞は陥落し内通していなかった兵たちは処刑された。

「そして首謀者と思われる人物が数人確認されています」

「名を告げよ」

「はっ。セルグエ・フォン・エフリエフ大将軍。ゾング・フォン・ロイール近衛副団長が主な人員で、ゴーンズ・フォン・エフリエフ元騎士隊長などの職を解かれ家を潰された貴族などが多数、それと除軍した兵たちも数多く見受けられます」

ハーフレンの報告の途中からざわついていた者たちが、各々の顔を見合わせる。

火急の知らせを受けて集められた王都在住の貴族や軍関係者などには何一つ情報を手渡していないからだ。

玉座に座る国王は、自身の髭を軽く撫でてゆっくりと視線を巡らせる。

「ドウリアス」

「はい」

「ゾングは今どこに?」

国王の問いに少し頬を紅くしている甲冑姿の男が一歩前に出る。

近衛団長のドウリアス・フォン・グエルだ。

年齢は40を越えているが、その剣の腕前はユニバンス最強と呼ばれている。ただ酒と女に弱く、職務怠慢などの問題を多く抱える人物でもある。

「部下の報告によると、数日前から登城していないとか」

「左様か。セルグエも同様か?」

大将軍は副官なども連れて行ったのか、誰が返事をするべきか王国軍の重鎮内で視線が飛び交う。

やれやれと言った様子で1人の男が前に出た。

「左様にございます。陛下」

シュゼーレだ。

将軍でもある彼ならば返答すること自体問題は無いのだが、軍の貴族たちは面白い顔をしない。

だが話が進まないと理解している一般出の将軍は、矢面に立つことを選んだ。

「他にもユニウに参加している者は?」

「急の招集でしたので今の時点では何とも……早急に調査し報告を上げます」

「分かった」

一礼し元の位置に戻る彼にウイルモットは口角を上げる。

仕掛けるなら今しかない。

「ドウリアス」

「はい」

「貴公は近衛を率いて王都の防衛に努めよ」

「はい」

そして国王は玉座から立ち上がった。

「大将軍が反乱……反逆軍に組みしていることは明白。現時点を持ってセルグエの職を解く」

告げてウイルモットは将軍たちが立ち並ぶ列を見る。

自意識過剰の者が進んで前に出る素振りを見せるが、それを無視して末席に目を向ける。

「火急の事態に付き後任はこの場で決める。シュゼーレ……お主が次の大将軍ぞ」

「……」

国王の返事に彼は直ぐに動けなかった。

一度目を閉じて深く深く息をし、それを吐いてから一歩前へと出る。

ゆっくりと体を仕える王に向けて片膝を降ろす。

「謹んでお受けします」

「うむ。緊急の事態であるから任命式などはユニウ要塞を落としてからとする」

だがこの判断にざわつく者たちも多い。

一般の者に従うなど出来ないと言う"貴族"としての誇りを捨てられない者だ。

それを見通して……ウイルモットは再度口を開いた。

「この任命に不満のある者はこの場より出て行くが良い。ユニウに向かい儂に弓を引くことも許そう。だがこの場に残る以上はシュゼーレの指揮に加わり彼の指示に従え。もし今日より以降に不満や反意を見せるのならば、儂への反逆と受け取り死罪とする。良いな」

「「はっ!」」

国王の言葉に大半の者が従い膝を着く。

だが……従わないことを選ぶ者も居た。

「お主たちは従わぬか?」

「はい。国……いいえウイルモット」

数人の上級貴族と中級貴族が集まり徒党を組む。

跪く者たちは、何かあったら飛びかかり制圧する構えを見せた。

「私たちはユニウへ向かいましょう」

「そうか。家族はどうする?」

「ご心配に及びません。我々が勝利すれば問題無いのですから」

言って彼は跪いている者たちを見渡す。

「ユニウに居るセルグエ様の背後には共和国の守護がある。この意味が解らぬ愚か者はこのまま滅びゆく国と共にするが良い。だが今なら私の口利きでユニウに合流できる。良く考えるのだ!」

やはり残っていた内通者の存在にウイルモットは胸の内で笑う。

跪いていた貴族の中から、周りの勢いに飲まれ同調してしまった数人ほどが立ち上がり彼らの元へと向かう。

「これで全てか? ならばユニウへと向かおう」

立ち去る彼らの背に国王は、伏目がちな顔を向けて頭を振った。

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