軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟は出来てるんでしょうね?

「南西地域でドラゴンの異常発生だと? そんな訳なかろうっ!」

もたらされた報告にウイルモットの厳しい声が飛ぶ。

これで3度目だ。おいそれとドラゴンの異常発生などあり得ない。

「何を隠している! 答えよ!」

大臣や将軍たちが居並んでいるが誰1人として返事を寄こさない。

隠しているのか本当に知らないのか……ギリッと奥歯を噛んでウイルモットは玉座から立ち上がる。

「そうか。ならば徹底的に調べることとしよう!」

《ざわっ》

国王の発言に居並ぶ者たちが慌てた。

探られたくない腹の中まで探られる事態は避けたいのだ。

と……1人の人物が前に出た。

「恐れながら我が王」

「名乗れ」

「はっ。近衛副団長のゾング・フォン・ロイールで御座います」

片膝を着いて首を垂れる者にウイルモットは目を細めた。

まただ。またこの男が出て来た……と、国王は胸の中で苦々しく思う。

「何だ?」

「はっ。失礼ながら……最近王国軍の働きが足らず、ドラゴンを取り逃がす事案が多いとの報告を受けています」

「何を言うかっ!」

声を張り上げまた男が前に出る。大将軍セルグエ・フォン・エフリエフだ。

鎧姿の彼もウイルモットに膝を着いて首を垂れた。前回と同じようにだ。

「ドラゴンの数が予想よりも多く対処に手間取っていることは事実でございますが、王都に引っ込み何もせずに酒ばかり食らっている近衛よりも国の為に働いているのは我々に御座います。もし我らの働きに不満があるのでしたら、精鋭揃いと噂だけの近衛を遣わせてください」

大将軍の声に近衛副団長が顔を紅くさせる。

「何を言うかセルグエ殿! 近衛とは王都を護る者たちに御座います。それが王都を離れて何とするか!」

「お前こそ何を言っている! 王都を護る前に国を護るべき時だと言っている! 王国軍は先からの戦いで疲弊している。ろくに仕事もせずに引っ込んでいたお前たちも少しは働け!」

「何を言うか! そもそも疲れた疲れたと言って働きもしないからドラゴンが増えるのだ!」

「だからお前たちも動けとっ」

「もう良い!」

国王の一喝に大将軍と副団長が改めて姿勢を正し首を垂れる。

ウイルモットは冷ややかに膝を着く者を見つめ思案する。

王国軍と近衛の仲の悪さは昔からだ。方針が違うから互いの仕事を軽んじるのは仕方ない。

ただ最近何かあれば示し合わせたかのように言い争うばかりの2人の様子がどうも怪しい。現に王国軍も近衛も何かを隠している節がある。

息子に調査を命じているが、これと言った報告はまだ届いていない。

「ゾングよ」

「はっ」

「近衛団長はどうした?」

「……」

苦虫を噛み潰した様子の表情を見せる彼に、ウイルモットは心の中で頭を振る。

現在の近衛団長は、腕は立つのだが酒と女に目が無いと言う問題を抱えている。たぶん今日も昨夜から楽しみ酒が抜けきれずに来ていないのだろう。

「あまりに自由が過ぎるとその地位を見直すと告げておけ」

「はっ」

「セルグエ」

「はっ」

「現在動かせる兵は如何ほどか?」

一度背後に視線を向け、副官らしき者と言葉を交わした大将軍が苦い表情を作る。

「現在余剰の兵力は」

「シュゼーレ将軍の兵が待機中のはずです。陛下」

横合いから口を挟んで来たのは、自身の傍仕えとしている長子シュニットだった。

ウイルモットとしてはさっさと彼を宰相に据えたいのだが、『経験不足』を理由に大臣たちが反対している。彼がどのような人物か判断出来ずに様子見なのだ。

苦々しい視線を飛ばして来る大将軍に、眉一つ動かさずシュニットは言葉を続ける。

「シュゼーレ将軍の兵500なら早急に動くことが出来るでしょう。それを至急南西地域に差し向け、ドラゴンを討伐か数を減らした後に次第北西地域に派遣すれば宜しいかと」

「失礼ながら勝手に決められては困ります。シュニット様」

「これは失礼しました」

形の上の謝罪を返し、彼は素直に引っ込んだ。

軽く鼻で笑いウイルモットは小さく頷いた。

「シュゼーレは?」

「……待機場にて兵の訓練をしています」

「此度の招集は『全員参加』のはずだが?」

「……」

『次期大将軍に最も近い』と言われる"一般の出"であるシュゼーレは、貴族たちから疎まれている。

たぶん今日の招集命令すら彼の耳に届いていないだろう。否、届いていても動かない可能性もある。

彼が強かな思考を持つ人物であることを国王は知っていた。

「まあ良い。鍛練中なら都合が良い。シュニットが申した通りに命じよ。これは厳命だ。良いな?」

「……はっ」

頷き返し大将軍は列に戻る。

それを見てウイルモットは胸の内で息を吐いた。

まただ。またこうして……話が纏まってしまった。だが今更蒸し返すと問題が大きくなるばかりだ。

「現状我が国は、敵が人よりドラゴンに変わっただけで厳しい状況だ。だが相手がドラゴンであれば駆逐すれば済むだけのこと。ここが正念場と思い必死に働くのだ。良いな」

「「はっ」」

一同が首を垂れるのを見て……ウイルモットは心の中でまた息を吐く。

結局今回も大将軍と副団長の口論で話をすり替えられてしまったのだ。

(面白くは無いな)

胸中でそう思いながらも、現状を打破する一手を国王は持っていなかった。

(ところで……何故ハーフレンは参加して居ないのだ?)

ウイルモットは気付き改めて疑問に思った。この場に息子の姿が無いのだ。

そして国王は知らなかった。

第二王子は現在……自宅の寝室で死に掛けていたことを。

「お前……死ぬぞ……俺が」

「……」

冷ややかな視線で第二王子を見下す彼女は、学んでいた師である女性を彷彿させる姿だった。

胸の前で腕を組み、床で股間を押さえて蹲る彼に怒りの気配を見せている。気のせいかその背後にどす黒い何かが見え隠れするほどの迫力でだ。

「わたしが隣に居るのに違う女の名前を口にして……覚悟は出来てるんでしょうね?」

(イシュって誰よ。後で調べないと)

蒼い顔をして震える彼を見下ろすフレアは全裸ままだ。

見下されるハーフレンも彼女同様に全裸だ。

股間を押さえ震えるハーフレンは、自分の迂闊さを呪っていた。

昨夜は"仲良く"過ごしたのだが、寝る前に部下からの報告書を見たのが悪かった……そう思うしかない。

ついあの馬鹿と殴り合う夢を見て寝言を呟いてしまったのだ。

せめてもの救いは彼が『ミシュ』では無く『イシュ』と言い間違えたことだ。

結果としてフレアの調査の手は、第二王子の傍に居る野良犬の存在にまでたどり着くことは無かった。

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