軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚悟は出来てます

「ふっふ~ん」

鼻歌交じりに作業服姿の少女が荷物を抱いて通りを歩く。

ミシュだ。

数えで14歳なのにもかかわらず8歳で通りそうな容姿をしている。

そんな彼女は変わらず王妃の屋敷で働いていた。

当初は引っ越す王子について行って脱出を図ろうとしたが、調教……師匠が手放してくれなかった。

『まだ修行が足りません』と言っていたが『まだ憂さ晴らしに必要です』と聞こえた気がした。

お陰で馬小屋で暮らしつつ雑用係としてしっかり働く日々だ。

それでも一応住み込みで仕事をしているのだから給金が出る。

半分ほどは借金の返済で消えるが、残りの半分は貴重な楽しみを得る大切なお金だ。

さっそく本日貰った給金でお酒とつまみを買って来た。

これが無いと生きていけないだけだ。大切な活力なのだ。残金が残り半分以下になったが気にしない。明日死ぬかもしれないのだから今日を全力で楽しんで何が悪いのだろうか!

(にしても……最近ガラの悪いのが増えて来たな~)

通りの隅にたむろしている男たちをチラッと視界の隅で確認し、ミシュは早足で過ぎる。

喧嘩に巻き込まれるのは面倒だし、何より大切なお酒に万が一のことがあったら皆殺しにしてしまうかもしれない。否、する。

危険には関わらず……としながらも彼女の視線は隈なく辺りを観察する。

どうやら男たちは前線から戻って来た元王国軍の兵らしい。そのまま軍に残りドラゴン退治をする者も居れば、軍を辞めて故郷に帰る者も居る。だがどちらも選ばずにこうして王都に残っている男たちは何を考えているのか……きっと良い答えでは無さそうなのでミシュは深く考え無いこととした。

まずは今夜の細やかなお楽しみが重要なのだ。

「ハーフレン様」

「よく来たなフレア」

「はい」

クロストパージュの王都屋敷に住む彼女は、最近では魔法勉強を再開したらしく魔法書を抱いてハーフレンの屋敷にやって来た。

去年のやせ細った体は嘘のように回復をし、年相応の柔らかそうな感じに戻っている。

何より笑顔なのがハーフレンにとって1番の喜びだった。

応接室へと移動し、メイドたちに離れて貰うと……フレアは甘えるように肩を寄せて来る。

隣で座る少女は数えで11歳。どうもその年齢が嘘のように大人びて見えるが。

「ハーフレン様」

「ん?」

「来年になったらわたしを貴方様の部下にしてください」

「……」

「毎日自宅で読書は暇です」

少し拗ねながらフレアは足の上に置いている魔法書の表紙を撫でる。

「わたしの力はハーフレン様を護る為に鍛えたんです。ちゃんと役に立ちますから」

「……そうか」

「はい。ブシャールの時だってお役に立ったでしょう? その後のアイルローゼの時も」

クリっとした迷いの無い目で少女はそう告げて来る。

相手の姿が胸に痛い。見ているとズキズキと疼いて来る。

だから彼はつい聞いてしまった。

「俺の部下になるってことは、人を殺すことになるかもしれない。お前に出来るのか?」

言って後悔してしまった言葉だった。だがもう放たれた言葉はかき消せない。

キョトンとした様子で小さく首を傾げたフレアは迷わず愛しい人を見る。

「出来ます。ハーフレン様に敵対するような愚か者はみんな死ねば良いんです。だから迷わずご命じ下さい。わたしはハーフレン様の為ならいつらでも魔法を使って命を奪いますから」

「……」

迷いが無いだけに痛烈にハーフレンの心を抉る。

微塵の躊躇も見せない少女は、やはり思い出の中の存在とは違うのだ。

「ハーフレン様?」

「ああ。済まない」

また無垢な目を向けて来る相手に、ハーフレンはいたたまれなくなって腕を伸ばして抱き寄せる。

自分が望んで変えてしまった存在をだ。

「あっ……ハーフレン様? その……」

「ん?」

「……覚悟は出来てます。だからその……」

少し腕を緩めると、頬を紅くした少女の表情が飛び込んで来た。

ソワソワとした感じから、何か覚悟を決めて目を閉じて唇を突き出す。

もう『どうぞ!』と言わんばかりの相手にハーフレンは薄く笑っていた。

そっと唇を合わせると、少女の全身が大きく震える。

唇を付けたままでその手を伸ばして少女の胸に触れる。

「やはり無いな」

「……」

「せめて揉める物が無いと寂しい。とは言っても俺は親父と違って尻に色気を感じない」

「……」

ワナワナと全身を振るわせる方向に変化したフレアは、そっと持参した魔法書を掴んだ。

「ハーフレン! もう絶対に許さないんだから!」

何やら呟き、ブンと振り下ろされた本の威力でソファーの背もたれが砕ける。

それを見たハーフレンは全身から冷や汗を噴き出させる。

「お前っ! 魔法を使うのは卑怯だろ!」

「煩いっ! わたしがどんな思いで……もう馬鹿っ!」

癇癪を起して泣きながら暴れる彼女の手には、強化された魔法書が確りと握られている。

正直下手な凶器よりも危な過ぎる武器を相手にハーフレンも必死に抵抗を試みる。

はっきり言えば体格差が顕著な二人だ。

その気になったハーフレンが本気を出せはフレアはあっさりと組み敷かれた。

「流石に凶器は使うな。危ないから」

「煩いっ!」

「全く……可愛い癖に怒ると危ない奴だな」

良し良しと頭を撫でてやり、ハーフレンは彼女の上から退く。

と……捲れたドレスのスカートから白い足と際どい黒の下着が目に入った。

「フレア」

「……」

「流石にこれは勝負し過ぎだろう?」

今日こそはと覚悟を決めて身に付けて来た下着なのに、思いもしない酷評を受け……切れたフレアがまた暴れ出した。

また必死の防戦を強いられたハーフレンは、その後彼女の機嫌が直るまで抱きしめ続ける罰を受けたのだった。

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