軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

立ったらもっと大きそうです

「笑顔に騙されちゃダメ。絶対にダメなんだから……」

隣で膝を抱えて蹲るモミジさんが少々お壊れになり出した頃……ようやくそれがやって来た。

てっきり二足歩行の恐竜スタイルな陸上型の大きいのを想像していただけにビックリだ。

四足歩行の大きな巨体。

ノッシノッシと歩いて来るその様子はまるでコモドオオトカゲ。別名コモドドラゴンか。

「でっかいトカゲだね~」

「……ダメ。立ったら落される。落されるから」

「人聞きの悪い」

見たそうだけど、立つことに恐怖を感じている彼女は蹲ったまま動かない。

しまった。恐怖を与え過ぎたか。

「落さないって」

「……本当ですか?」

「約束するよ」

「……なら腕を貸して下さい」

しゃがんだ姿勢でこっちを見つめ、両手を伸ばして来る彼女に右手を差し出す。

手を掴んで立ち上がるのかと思ったら、そのまま抱き付いて来た。チッ……余計な成長を。

ようやく壁の向こうから来る存在を目にした彼女が興奮気味で指さした。

「アルグスタ様っ! 大きいです。凄く大きくて立派で……わたし初めて見ました」

「うん。でも発言に気をつけようか?」

「何がですか? うわっ……アルグスタ様。立ったらもっと大きそうです」

「……」

声の内容を文章にしたらアウトなんじゃない? 大丈夫この子? 今日一日で色々と壊れてない? もしかして祝福って僕とノイエ以外壊れた人にしか渡されないんじゃないの?

カミューの人間性を疑うわ~。

『ノイエ以外が狂ってるだけよ。で、類は友を』

うっさいボケっ! こんな時だけツッコミに湧いて出て来るなっ! 今の言い分だとまるで僕が悪いみたいじゃないかよっ!

『……覚えてなさい』

邪神の類であるに違いない小姑に文句は言ってすっきりしたし……問題はあのトカゲだな。

『手を握ってて下さいね』と彼女が言ったから……モミジ爆弾ファイナルはまだ使用できない。

仕方なく左手を握ると、彼女は器用に右手でカタナを抜いた。

「居合斬りじゃなくて良いの?」

「はい」

「……なら何故いつも?」

「その方が格好良いからと……違うんですか?」

可愛らしく首を傾げて来る相手に生温かな視線を向けて頷いておく。

何処の中二病ですか? まあその気持ちは分からなくもないけれど。

「断空」

軽い掛け声と共に振るったカタナから不可視の何かが飛ぶ。

剣気と呼ばれる気の一種だろう。仕掛けは分からないけど。

こちらに向かって来るドラゴンの頭に何かが当たったのか、グワンと後ろへと動いて……何事も無かったようにこっちに歩いて来た。

「効かないね」

「……」

強く左手を握って来たモミジさんが軽くキレているように見える。

彼女のお姉さんであるカエデさんは、確かあの中型クラスを15で倒しているはずだ。

「カエデさんは」

「言わないで下さい!」

やはりキレていたか。

振り上げた右腕が大きく振られ、その度にドラゴンの頭がグラグラと動く。

しばらく……本当にしばらく頑張った彼女だったが、ある意味見慣れつつあるスタイルとなった。

しゃがんで膝を抱いていじけだした。

天才タイプだけど彼女は意外とメンタルが弱い。お姉さんが過保護に育てた弊害かな。

「さてと。なら直接あれを斬りに行きますか」

僕の声に顔を上げた彼女は……ゆっくりと顔色を悪くしていく。

「アルグスタ様?」

「頑張れ」

「無理です~っ!」

腰にしがみ付いて全力で泣きだした。

ってコラコラ! 何処に頬を押し付けてグリグリしてるんですか君はっ!

「頑張れモミジさん」

「無理ですからっ!」

「……へ~」

わざとらしく蔑んだような声を出す。

怯えた表情を見せる彼女が何故か狼狽えだした。

「何ですか……あんなの無理です……」

「無理なんだ。そっか~無理なんだ」

「……」

腰から手を離して彼女が後ずさる。

僕は笑って彼女に向かい手を伸ばす。頭に手を置いてもう一度目を見る。

「無理なの?」

カタカタと震える彼女が怯えながら顔を振る。左右に。

「良い子だ」

笑って脇の下に手を入れて立たせてあげる。

ついでにカタナに対して祝福を強めに纏わせて……うおっ。物凄い疲労感と空腹が。

ただモミジさんはボロボロと涙を溢したままだ。このままだと間違いなく僕はただのいじめっ子になる。

「あれぐらいの相手ならモミジさんでも勝てるよ?」

「……っえ?」

「楽勝だって」

ポンポンと彼女の頭を軽く叩いて、肩に手を置いてドラゴンの方へ体を向ける。

迫り来るドラゴンは良い感じの距離まで接近して来た。

「良いかい? 君はとても強いんだ」

「強い?」

「うん。それに僕の居た世界の侍の血を引いている。侍とは強い敵に立ち向かい打ち倒す存在なんだ」

たぶん間違って無いはずだ。

ゲームのお侍さんは、単騎で突撃して行って敵を薙ぎ払っていた。

「強い敵に……立ち向かう」

「うん。それに今から秘密の言葉を教えます」

「秘密?」

肩越しにこっちを見るモミジさんの顔が近いな。

まあ可愛いから見る分には……グローディア基準だと浮気扱いでしたね。気をつけよう。

「そうそう。この言葉を言ってあのドラゴンに斬りかかれば絶対に負けません。何せ古来から伝わる侍を鼓舞する言葉ですから」

「負けない……」

自己暗示でもかけているのか、モミジさんの目がうっすらと濁って見える。

本当に1日で壊れすぎたかもしれない。まったぶん大丈夫だろう。

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