軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

異議を申したいっ!

「どこを見てるんだい?」

バシッ

「はうっ!」

バシッ

「おうっ!」

まさかの往復ビンタに驚きだよ!

「これぐらいなら出来るんだね」

相手の言葉に何か冷たい物を感じる。

急いで体を動かして相手を振り落とそうとするけど……どうして落ちないの~! 術式を使っていないノイエはその辺に居る女の子と大差無いはずなのにっ!

「あはは! 動け動け……止まったらまた頬を打つよ?」

「マジっすかっ!」

止まりかけたら本当にビンタが来たから急いで相手の体を揺する。

胸に彼女のお尻が吸い付いたのかと思うほど引き剥がせない。

本来なら喜ばしい状況のはずなのにっ!

「無駄無駄。人間はここを押さえられると立てないんだ」

「でも根性でっ!」

「ああ……根性で退かしてみな」

必死に体を動かしているのに全く退かない。

で、休憩とばかりに動きを止めると本当に頬を叩いて来る。

カミーラは出て来て欲しくない人リストに追加だ。

ちなみにこのリスト筆頭はグローディアだ。

「本気で痛いんですけど?」

「ああ。痛いことをしているんだから痛く無かったら変だろう?」

言いながらまた頬を打って来る。

容赦の無い往復ビンタを食らっていたら……不意に喉を掴まれた。

「痛いだろう?」

「そりゃ……」

「だったら言うことを聞きな」

「はい?」

冷たくて人を圧倒するような目で彼女が僕を見る。

「ノイエと別れるんだ」

「……どうして?」

ニヤッと笑い彼女が言葉を続ける。

「お前は弱すぎる。ノイエに相応しくない。何より弱いのが嫌いなんだ……私がね!」

バシッ! とまた頬を打たれた。

でも視線を背けない。彼女を見つめたままでビンタを食らう。

「何だい? そんなに睨まれると叩きたくなるよ!」

また頬に喰らって視界が歪む。でも背けない。

「……」

「ん?」

「……叩けよ」

相手を睨んで鉄の味のする口を開く。

「好きなだけやれよ! でも僕は決してノイエと別れない!」

「へ~。良いんだ。好きなだけやっても?」

「来いやっ!」

往復で結構強いのを食らう。でも僕は歯を食いしばって我慢する。

ふざけるな! 痛いのから逃れるくらいでノイエと別れる訳無いだろうがっ!

何回、何十回と両頬にビンタを食らっていたら……彼女がまた喉を掴んで来た。

「馬鹿だろうお前? 黙って喰らってれば終わるとでも思ってるのか?」

「……思ってない」

「へ~」

冷ややかな目が見下して来る。正直痛くて怖くて辛いけど、

「ノイエと別れるくらいなら全部我慢する」

「死んでもか?」

「ノイエの手で殺されるなら本望だっ!」

怖すぎて全身が震えるけど相手の言葉にだけは屈したくない。

ノイエは可愛いし綺麗だし、泣き虫で甘えん坊で意外と頑固で……でもすっごく優しくて、何より僕が大好きな大切なお嫁さんなんだ。

「殺すなら殺してみろよっ! ただし僕に何かあってみろ!」

「何だい?」

「ノイエが許さないからな」

鼻で笑った彼女がまた手を振り上げる。だけどそこで相手の動きが止まった。

驚いた様子で自分の右腕を見た彼女は……脱力して腕を降ろした。

「驚いた。ノイエがここまでお前のことを想っているだなんてな」

「……」

「動かずそのまま黙ってな」

と、カクンとノイエの首が垂れて髪の色が抜ける。

息を吐き出して……余りの頬の痛さに泣きだしそうなんですけど? 泣いても良いですか?

「……酷い顔だね」

「第一声が容赦ないっ!」

「……また怪我してるし」

金髪で黄色の瞳。口調からしてリグさんだ。

「リグさん」

「なに?」

「痛くしないで治してくれると嬉しいです!」

でも不思議と彼女は不満顔だ。

「あの~?」

「……寝てた」

「はい?」

不満げな目が僕を見る。

「ぐっすりと寝てた」

「はい」

「誰か知らないけど引っ張り出さないで欲しい」

「……」

たぶん引っ張り出したのは……って、あれ?

訝しむ僕に彼女がお尻の位置を動かしてお腹に座られた。

「始めるよ?」

「物凄く片手間な感じがっ!」

「うん。眠いからさっさと済ませて寝る」

体を寄せて来た彼女の舌が僕の頬をペロッと舐める。そして始まる激痛地獄。

ジタバタと両手両足を使って彼女を退かそうとするんだけど、ピタッと張り付いた彼女は退かない。

普段ならノイエの裸体の密着さ加減をを味わうんじゃ~とか思考が走るのに、余りの痛さで何も考えられない。

「これぐらいかな」

「……もう少し優しくして」

「うん。無理だから。何より君……やっぱりスケベだね」

頬を紅くした彼女が視線を下げる。釣られて見れば、無意識に両手が胸をっ!

「違うんです。余りの痛さに引き剥がそうと」

「なら押せば良い。揉む意味が分からない」

「……別のことで痛みを誤魔化してました」

「………………スケベ」

汚物を見るようなリグさんの視線が辛いです。

「って、元はと言えば全部あの串刺しカミーラが悪いっ! アイツ……今度会ったらヒィーヒィー言わせてやる!」

「へ~。それは楽しみだね?」

「ひぃ~っ!」

赤い髪。赤い瞳……纏う空気は武闘家な感じ。

指をバキバキと鳴らしながら軽く肩を回して彼女がまた僕を見下ろして来た。

「で、誰に何をするんだって?」

「……全て秘書のやったことです!」

「お前だよお前」

「痛い痛い。地味に痛い」

鼻を掴まれてグリグリとされた。

「全く。寝ぼけながら蓑虫のように這っていたリグを引き摺って来てやったのに……感謝の言葉も無いのか?」

「最初に叩いたの」

「あん?」

「ありがとうございますっ!」

また叩くのを再開しそうな相手の感じに僕の心の何かが折れた。

頬を治されるリグさんの術が本当に痛いんですって!

と、彼女は立ち上がり……視線を自分の体に向ける。

「着る物は?」

「ベッドの何処かに転がってます」

「……これか。って何だいこれは?」

「まだ暑いので」

必死に誤魔化そうとしたけど、透け透けキャミソールを広げた彼女が深いため息を吐いた。

「……ノイエもとんでもない変態と結婚させられたみたいだね」

それに関しては異議を申したいっ!

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