軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

剣気の一端です

案内されたのは城内の会議室。

重要な事柄が決定される防音などが完璧な部屋らしい。

そんな説明をメイド長から受けながら、ノイエと腕を組んで室内へと入った。

「来たな」

「呼んだでしょうに」

「仕事を理由に逃げ出すかと思った」

「あんな書類の山など、僕ら夫婦が本気になったら敵じゃないよ?」

事実机の上に山となっていた書類の大半は、サインを入れて右から左へと流れて行った。

流れて行かなかったのは訂正が必要な書類だけ。差し戻しなので帰ってくるまでに数日要するだろう。

誇らしげに胸を張る僕ら夫婦の様子に馬鹿兄貴が苦々し気に視線を逸らした。

どうせまた書類の山を机に作って鑑賞してるんだろう。貯めても良いこと無いのにね。

メイド長の案内で、ノイエと並んで椅子に腰かけてから部屋の様子を見渡す。

前国王と次期国王、近衛団長と僕らと言うか本命は僕か……出来たら現王家の3人で対応して欲しい。

隣に座るノイエの甘えの相手をしながら待っていると、メイド長が女性を連れてやって来た。

西から来たカエデさんだ。モミジさんは全力で使い倒されていると報告が上がっていた。

兄のマツバさんはミシュを追い回して死体処理場でドラゴン退治をしているらしい。ミシュを襲うのに邪魔をするドラゴンを撫で斬りして死体の山を作っているとか。

そう考えるとノイエの機動力って重要なんだな。むしろあの機動力があるから1人でドラゴン退治が出来るのか。偉いぞノイエ~。

ウリウリと顎の下をくすぐってノイエを愛でておく。

お兄様と挨拶をしたカエデさんが椅子を勧められて着席した。

で、一体……この集まりは何なのでしょうか?

「ではカエデ・サツキ様も来たので意見交換を始めましょう」

次期国王の言葉にノイエが僕の肩に頭を預けて来た。寝た振りって訳じゃ無いよね?

軽く肩を揺す振ると、うっすらと彼女の片目が開いた。

(外見を変えないように気を使っているから邪魔しないで。話に集中したいのよ)

耳の奥にその声が響いた。間違いなくアイルローゼ先生だ。

寝てしまったお嫁さんの介抱をする振りをして、僕もカエデさんの言葉に耳を傾けた。

私たちの村は西の山奥深い所にあります。

特に秀でた産業なども無く、皆で助け合って暮らしています。

人口は200人程度で誰もがあの蛇型程度のモノなら斬り倒すことでしょう。

詳しい文献などは残っておらず全て口伝となりますが、私たちサツキ家は何百年も前にこの大陸へと渡ってきたと言われています。どこから来たのかは分かりませんが、最近になって異なる世界と呼ばれる場所だったのではないかと思われています。

一族には"カタナ"を用いた武芸が伝わっていて、私たちの一族はそれを使い村を護って来ました。

村長を務める我がサツキ家には、成人を迎える時に何か武芸で秀でた所を見せると言う風習がありまして……今回末の妹であるモミジがこちらの国のノイエ様に挑んだのはそう言った経緯で御座います。

本来なら近隣に現れるドラゴンを退治すれば十分なのですが、少々家族内で見栄の張り合いが進みまして……お恥ずかしい話です。

それでモミジが他国に赴いたことを知って、所属している国の王や村長の協力を得て私たち兄妹で引き戻しにやって来たのです。

説明と言うより経緯かな? ただ僕的には何か似たような話を聞いた記憶がある。

柳生一族とか成人を迎える前に1人旅に出て色々と学ぶ風習があるとか何とか。テレビの番組でそんなことをやっていたのを見たことがある。

カエデさんのサツキ家はもしかしたら剣術家の出なのかもしれないね。

ただ先生が自分の聞きたい話で無いらしく不機嫌なんですけど? 僕に触れているのが理由とかでまた罰ゲームになったら本当に嫌なんですけど?

一昨日のあれとかまた食らったら泣くよ? 久しぶりにマジ泣きして土下座したからね? カウントダウン中の急ブレーキって体に良く無いと思います。

私たちは随分と田舎に暮らしているのもあり、何より王国と言っても小も小な小国なので色々と足らない物も多く……恥ずかしながら魔法と言う物を言葉で知るくらいで、現物を見るのは正直初めてにございます。

ゲートと呼ばれる"門"が魔法で動いているのを知ったのは、初めて使用してこちらに渡って来てからにございます。

と、先生が僕の脇腹をっ!

「あの~質問があります」

「はい?」

部屋中の視線が僕に向けられる。

話を中座するのも悪い気がするけど、先生を敵に回したくないんです。

「ドラゴン退治に使っているあれは魔法では?」

「いいえ違います。あれは"剣気"と呼ばれる修行の末に身に付ける物です。そうですね……簡単に説明するなら、紙を一枚いただけますか?」

スッとメイド長が差し出した。

って普通に居るのねメイド長。王弟夫人だから許されたのかな?

カエデさんはそれを半分に折って立てるように机の上に置いた。

もしかして頬に擦り付けた手から怪しげな何かを出して倒す奴ですか? 田舎のお爺ちゃんたちが自慢げに見せてくれたことがあったな~。

と、カエデさんが艶やかな黒くて長い自分の髪を1本抜いた。

「長いので少し危ないのですが」

指に持つ髪がピンと真っ直ぐに伸び、それをカエデさんが机の上の紙に投げる。

軽く揺れたが、髪が紙に突き刺さり……カエデさんが苦笑した。

「申し訳ございません。やはり貫通してしまいました」

貫通? 何のことだろうと思った馬鹿兄貴が歩み寄って紙を抓んで持ち上げる。だけど黒い髪がスルスルと紙を抜けていく。

そう……紙を貫通した髪が机に突き刺さっているのだ。

「これが剣気の一端です。魔法とは違うと思いますがどうでしょうか?」

言ってこっちを見られても僕には分からないっす。

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