軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勝手に終わるな馬鹿娘

「あるぐさま~」

「良し良し」

「ん~」

屋敷の外の椅子に2人で腰かけ、らしくないほど甘えて来るノイエが本当に可愛い。

クレアなどから『いい加減に仕事しに来い!』と苦情が来ているが、たった3日休んだだけだ。

その3日でノイエの手もだいぶ再生が終わり、後は指が完全に伸びるのを待つばかりだ。明後日くらいから仕事に復帰できそうだ。

つまり突如湧いたこの休みも明日までと言うことか!

ならばやはりノイエとこうして甘々な時を過ごすべきだ。

「旦那様」

「はい?」

「お城から近衛団長様がお見えになっています」

「本日の旦那様は全ての業務を休んでいます。以上です」

「そんな言い訳が通じるか馬鹿!」

メイドさんを押し退けて馬鹿兄貴がやって来た。

「出直せ馬鹿兄貴よ。業務なら明後日から再開するであろう」

「そうも言ってられんのだ。イネルが熱を出して倒れクレアが限界だ」

「何してるのよあの子らは?」

だからクレアからのヘルプが矢継ぎ早に届いていたのか。

何よりイネル君が熱を出して倒れるとか……あの子ら野外で変なこととかしてないだろうな。

「で、何で近衛のお偉いさんが迎えに来るかな?」

「お前が休んでいる間に色々と問題が生じたんだよ」

「だから『呼びに行く』と言ってサボりに来たか」

「言うな」

事実かよ。まあ仕方ないな。

「ほらノイエ」

「……」

お嫁さんがすがり付いて離れてくれません。もう本当に可愛いな。

「一緒に行くから着替えましょうね」

「……はい」

置いて行かれると思っていたらしいノイエがあっさり離れてくれた。

僕も着替えを済まし外に出ると、馬小屋からナガトが出て来た。

玄関に来てから鞍を掛けていると、馬鹿兄貴が首を傾げてこっちを見る。

「何かがおかしいだろう?」

「何が?」

「普通鞍をかけてから連れて来るものだろう? 何で歩いて来てから鞍を掛ける?」

「うちの愛馬はこれが普通ですが」

「……馬からして常識が通じんのか」

失礼な。うちのナガトはノイエに対して全幅の信頼を寄せているだけです。種族を越えたあれ~な仲なのです。

まず僕が馬に跨って、次いでノイエを引き上げて前に座らせる。

いつも通りノイエがチュッとキスして来て準備終わり。

「流れるようにキスした訳は?」

「……出発完了の合図?」

「疑問形かよ」

呆れながら馬鹿兄貴も自分の馬に跨り、僕らは城へ向かい馬を進ませた。

「イネル……わたし頑張ったよ……でももう限界だよ……あはは……ごめんね……」

「勝手に終わるな馬鹿娘」

ポカッと叩いたらクレアがムクッと起きた。

「元気じゃないか」

「死ぬわよ!」

「イネル君に甘えられないからか?」

「くにににに~」

腕を上下に振って悔しさを体現する。

それだけ元気なら僕が来る必要なんてないやん。

部屋の入り口に戻ってフラフラしているノイエを回収して僕の席に戻る。

椅子に腰かけてノイエを膝の上に乗せて横座りさせた。

「ほい。急ぎの書類を頂戴」

「そこの山」

「……仕事が多過ぎるだろうが!」

「ガッツリ休んでおいて寝言を言うな!」

「寝言では無い。ただの不満だ」

「……サインしろ」

危ない目つきのクレアがヤバそうなので、書類を並べて次から次へと内容を斜め読みしてサインを入れる。

「2枚後の書類を退けておいて」

「はい」

赤ちゃんのような指でノイエが書類を弾いてくれる。

こんな忙しい時に誤字とかマジ勘弁なんですけど。

次々と書類を並べてはサインを入れて行く。

「ノイエ……遅れてない?」

「……負けない」

むっ? 術式を使い始めたか?

だがこっちも毎日のようにサインを入れて来たんだ。ほぼ脊髄反射でサインなど入れられるわ!

「その書類は弾いて」

「はい」

「ほれほれノイエさん。どうしました?」

「……本気」

うおっ! 最速で並べだしやがった。

「3枚目は金額に抜けがある。その隣は誤字」

「むっ?」

「間違っていない書類を並べるのがこの勝負の秘訣です」

「……負けない」

「ほれほれノイエさん。事務の難しさを体感してますか?」

「……まだまだ」

ふははは! 自分のフィールドであればノイエに勝てるのだ!

夫婦仲良く全力勝負した結果……だぶん2時間ぐらいで書類の山を制覇した。

「終わったから帰るね」

「……」

燃え尽きたクレアが机に突っ伏している。

再提出の書類の山を突き返したぐらいで死なないで欲しい。

でもまあ急ぎの仕事は全部終えたはずだしな。

「とりあえずクレアさんや」

「……」

「急ぎの仕事が無いなら今日はもう帰って良いぞ。あと明日は休みね」

ムクッと起き上がったクレアの目が嬉しそうに血走っている。

「看病に行くのは良いけど病気貰うなよ? よってキスは禁止」

「この人で無しっ!」

「……でも添い寝くらいまでなら許してあげましょう」

「分かりましたっ!」

バタバタと仕事道具を片付けたクレアが、駆け足で扉に向かい一礼して去って行った。

「アルグ様」

「ん?」

「笑顔。嬉しそう」

「だね」

病気の好きな人に逢いに行くって……夢見がちなクレアからしたら一大イベントなんだろうな。

そっとノイエを抱き寄せてその額にキスをする。

「さて僕らも家に帰ってのんびりしようか」

「……はい」

2人並んで仲良く執務室を出たら、

「お待ちしておりましたアルグスタ様」

メイド長がとても綺麗なお辞儀を見せて来た。

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