軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

美味しそうな顔

問答無用で執務室に押し入ると、クレアとイネル君がキスしている現場を目撃しました。

節操のない部下たちをそのままスルーして、メイド長と二人で早速新しい暇潰し……怪しい人物に対する質疑応答を始めたいと思います。

椅子に座らせられた彼は、椅子の足に自身の足を縛られているけどね。

ついでに両手も拘束してあるし、猿ぐつわまでしているとかメイド長の仕事はいつでも完璧だ。

ジタバタとイネル君くらいの少年をイジメる……保安上の対応するのは心に来るモノがあるけれど、酷過ぎることをしなければセーフのはずだ。

何より彼は自分自身の幸運に感謝するべきだと思う。これが馬鹿兄貴とかだったらそのまま拷問室に直行して、噂に聞く『king of sadist』の手によって再起不能にされているはずだ。

「アルグスタ様?」

「何かねイネル君」

「……クレアが怖がっているから変なことは止めて下さいね」

「おおう。大丈夫。僕の優しさはこの国でも上位に入りますから」

全力笑顔を二人に向けるが、甘えん坊モードになっているクレアはイネル君に抱き付いたままだ。

うむ。これで激しい拷問は禁じられた。

「でしたらアルグスタ様。こちらで」

「ほほう。鳥の羽ですか……流石メイド長です」

手渡された羽を装備し、メイド長とアイコンタクトしてからほぼ同時にくすぐり始める。

顎の下とか耳の所とか……徹底的にくすぐってから猿ぐつわを外した。

「さあ白状すると良い。城の中で怪しい行動をしていた少年よ。一体何を企んでいたのかね?」

「……本当に道に迷っただけで……」

「ん~。まだそんな嘘を。ここか? ここが良いのか?」

「はわ~っ! 耳はっ! 耳は止めて下さいっ!」

つまり押すな押すなのあれですね。メイド長と頷き合って徹底的に耳をくすぐる。

全身をビクビク震わせて……その手の趣味の人が見たら卒倒しそうなほど、やらしい表情を見せる少年が誕生した。

メイド長がうっとりとして見つめているのは欲求が溜まっているだけだろう。

「正直に言う気になったかね?」

「……本当に……道に……はうんっ!」

「ん~。なかなか根性のある少年だね。ならどうしてメイドさんに道を尋ねない?」

「……仕事をしている女の人の手を止めるのは失礼かと思って」

「いい心がけだがやはり怪しい。メイド長……足の裏とかやっちゃいますか?」

「アルグスタ様。良いと思います」

上機嫌な彼女と今度は拘束されている少年の足の裏を重点的にくすぐる。

気付くと興味津々な様子でこっちを見ているクレアと、何か危ない気配を感じているイネル君が必死に婚約者を制止しようとしている。

身の危険を感じて回避することは夫婦生活の上で大切なことだぞ。

「もう……許して下さい……」

全身を怪しく震わせて少年がビクビクとしている。

やり過ぎた気もするけど、メイド長が物足らなそうだから匙加減が難しい。

「うむ。ならば全てを語ると良い」

「はい……今度の合同実験について質問したいことがあって……近衛では無く対ドラゴン大隊の執務室に行くように言われて……でもどこか分からなくて……」

「「……」」

少年の告白に僕を含めた全員が顔を見合わせる。

うっとりとしているメイド長はスルーしておいて良い。クレアとイネル君と視線を合わせたら……『僕たち関係無いですから』と言いたげに2人は抱き合って何故か窓の外に視線を向けた。

裏切ったな……僕は悲しいぞ!

コンコンッ

「失礼します」

ノック後に一礼して入室して来たのはフレアさんだった。

「アルグスタ様。今度の合同っ」

と、言葉が途切れ……何故か頬に手を当ててム○クの叫びのようなリアクションを見せた。

「きゃぁぁぁぁあああああ~っ! アーネス!」

「あーねす?」

全力の叫びからフレアさんがこっちに走って来て、椅子に拘束されている少年を解き放つ。

「どうしたのアーネス? 大丈夫?」

「フレア」

「ああ……こんな美味しそうな顔にされて……」

弟を介抱する……ようには見えないですね。

あれ? 背筋にゾクッと嫌な物が。

「誰にやられたの?」

クレアがイネル君を押し倒して机の物陰に身を隠した。

僕は咄嗟にメイド長の背後に回避する。この盾だったらしばらく持つはずだ。もしかしたら返り討ちにしてくれるかもしれない。

「大丈夫だよ。ちょっと変なことをして勘違いされただけだから……」

「良いのよアーネス。貴方は優し過ぎるから勘違いされやすいものね。それで誰が私の婚約者をこんな姿に?」

完全に逝っちゃった目でフレアさんがこっちを向く。

アカン。また変なスイッチがonしてしまったかっ! 頑張ってメイド長!

「貴女の許嫁でしたか。城内で怪しい行動をしていたのでつい」

「……スィーク様。貴女は彼が私の婚約者であると知っているでしょう。それなのにどうして?」

「知っていても不自然な行動を取る貴方の許嫁が悪いのです」

「……彼が何をしたと言うのですか?」

「さあ?」

挑発っぽく見えるメイド長の対応にフレアさんの殺意が大変なことに!

絶対に触れたら危な過ぎる空気に僕もこの場から逃げたくなって来た。部屋の入り口で書類を抱いて入って来ようとしたミルが、直角に曲がってそのまま逃げて行った。何て羨ましい。

マジで誰か助けて下さい!

(c) 2019 甲斐八雲