軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お嫁さんが眠らせてくれなくて

「アルグスタ様」

「ん~」

「何故燃え尽きているんですか?」

「……うちのお嫁さんが眠らせてくれなくて」

返事を受けたクレアが数瞬固まると、顔を真っ赤にして後ずさって行った。

「何てことを言うのかな~っ!」

「動揺し過ぎて口調が変だぞ?」

「しょんなことありましぇん。ふちゅーでりゅ~」

トマトよりも赤い顔してわたわたしているクレアは見ていると面白い。

「つかクレアも結婚相手を探しに王都に来ているんだろう? こんな話で真っ赤になっていたらダメじゃ無いのか?」

「……ダメって何がですか?」

「ほら……付き合えばする訳だし」

「する?」

まだ顔を赤くしたままクレアが首を傾げる。

「そう。ベッドの上での体を使った愛情表現?」

「……ふにゃ~っ!」

頭を抱えてクレアがソファーに飛び込んだ。どうやら脳内の処理が限界を超えたらしい。

ついでに視線をもう一人の部下へと向けると……顔を机に突っ伏して身動き一つしていなかった。

まだまだ初心よのう。まあこっちの世界には漫画とか無いから、エッチの知識って年上の人から聞いて学ぶしかないんだよな。

「クレアもそっちに興味があるならフレアさんに聞くと良い。何でも『男食い』とか呼ばれるほどの猛者らしいから」

「ぬがぁ~っ!」

クレアが壊れたようにソファーのひじ掛けに頭を打ち付けだした。

「お~いアルグ。って何だこの惨状は?」

「ん~。まだまだうちの部下は初心ってことです」

本当に可愛らしい 部下(おもちゃ) から視線を無駄に暑苦しい男へ向ける。

まだ夏季の暑い日々が続く最中に、見ただけでも暑っ苦しい筋肉を燃やしたい。

「で、何よ?」

「何か視線にイラッとするが」

部屋の中に入って来た馬鹿兄貴は、バタバタとソファーの上で足を振っているクレアのスカートを掴んで一度捲ってから元に戻す。今日の彼女は青でした。

「ちとお前に対して苦情が上がって来ている」

「どこの馬鹿貴族よ?」

「否、市民からだな」

思いかけない相手の言葉に僕の動きが凍った。

何故に? ノイエの夫に相応しいよう毎日頑張っているというのに?

「あ~。ノイエと抱き合ってキスしながらの移動が、子供の教育に良くないという苦情が大半だな。後は嫉妬が少数来ているモテない男の恨みに耳を貸す必要は無いな」

クシャッと紙を握り潰して馬鹿王子がゴミ箱に放り込んだ。

「で、こっちだ」

ドンと机の上に置かれた紙を確認すると、

「お前今朝はどんな感じで城に来た?」

「……いつも通りです。ノイエを前に乗せて二人仲良く、です」

嘘は吐いてない。決して嘘など言ってない。

だが馬鹿兄貴は懐から紙を取り出した。

「えっと……屋敷を出てからずっとノイエとチュッチュッとしながらで、城内に入るとずっと後ろから抱きしめ、何かあるとチュッとしていたか」

「覗き見など人の屑がすることだぞっ!」

「公衆の面前で抱きしめてキスしている方が人の屑だ」

「はうっ!」

そんな馬鹿な……だってあれをするとノイエが凄く嬉しそうにアホ毛を揺らすんだもん。

クルクルと手に持っていた紙を丸めた兄貴がポカッと頭を叩いて来た。

「とりあえずお前らしばらく街中でのキスは禁止な」

「…………はい」

子供たちの教育に悪いと言われたら我慢するしかない。

でもお触り禁止が解除されてからノイエのボディータッチが凄くて我慢出来ないんだよ。

今度からは家を出る前にいっぱいして、お城に入ってからするしかない。

「それと……別件で用があったんだ」

「はい?」

馬鹿兄貴は辺りを見渡すと、使われていない椅子を手にして腰かける。

うちは常に在勤の事務方と外勤の現場方とか存在している都合……約半数の机が使われていない。

そんな空席のフレアさんの椅子に腰かけ馬鹿兄貴が足を組んだ。

「先日……と言うか、もう何日も経った話なんだがな」

「はぁ」

「北のゲートを通って不思議な女がやって来たそうだ」

まさかネクロマンサーとか言い出さないでしょうな?

「で、門番をしていた帝国兵が言うには、『薄くて長い刃を振ったら飛んでいたドラゴンが真っ二つになった』と言う話なんだ」

「へ~」

世の中にはそんな奇特な特技を持った人も居るんだな。

だが馬鹿兄貴は軽く前のめりで体を折ると口を開く。

「心当たりは?」

「馬鹿ですか君は? 僕に何故その質問をするのか問いたい」

「薄くて長い変な武器って辺りで何か思いつかないかと甘い考えを抱いたんだが……どうだ?」

「分かるかっ!」

「だよな」

ボリボリと頭を掻いて馬鹿が軽く背伸びをする。

そもそも論だが……何故その話が僕の元に来るのかを問いたい。

「その人が何かしたの?」

「ドラゴンを退治してユニバンスに向かったらしい。それで向かった理由がノイエらしいんでな……お前ならもう出会っているかと思ったんだが」

「残念ながらそんな珍しい技術を持った人とは出会って無いな」

「そうか」

相手も納得したのか、適当に机の引き出しを開き中身を物色する。

コラコラ。それはフレアさんの机だから気をつけないと……馬鹿兄貴が小さく丸められた何かを手にしていた。ゆっくり広げると、紫色した紐パンでした。

「クレア~。ちょっと穿いてみ」

「あっは~い。ってなるか馬鹿ぁ~!」

馬鹿兄貴に呼ばれ、手渡された紐パンを床に叩きつけてクレアが吠える。

ケタケタと笑っている馬鹿を見つめ……僕は心の中でそっと神に祈った。

「何をしているのかしらハーフレン?」

「はは……あがっ!」

「……また改めて来ます」

馬鹿兄貴の首根っこ掴み丁度部屋にやって来たフレアさんがまた静かに出て行く。

あの人ってもしかして二重人格か何かじゃないの? 絶対に変なスイッチ搭載してるって。

僕は顔色を真っ青にしているクレアに視線を向け、出来る限り優しい口調で言った。

「あの紐パン……しまっておいて」

今日が馬鹿兄貴の命日かな?

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