作品タイトル不明
裏切るなシュシュ!
ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸
ポーラはミネルバさんが丁重に運んで行った。ポーラ派を自負しているメイドさんたちの悲しみようは半端ない。痛み止めが効きすぎてぐっすり寝ているだけなんだけどね。と言うか勝手に歩きだすから少し強めの薬を飲ませただけなんだけどね。
そんな一団を見送り、リグを抱えるノイエと一緒にまずお風呂へ向かう。
一日の汚れを洗い落し、綺麗な状態で夕飯を食べたい。
「普通に君が一緒に向かっているのはどうして?」
「面倒臭いから」
「……」
ノイエに運ばれているリグが顔を赤くして俯いた。
「余り肌を見られるのは好きじゃない」
「でもリグの裸は綺麗だよ? ノイエもそう思うでしょう?」
「はい」
「……君たちが変なんだって」
最近リグの肌を褒めていなかったからかまた自信を失ってしまった感じか?
であるのであれば、本日はリグの肌を丁寧に洗いつつその褐色と刺青がどれ程素晴らしいのか耳元で囁くこととしよう。
「頑張るぞノイエ」
「はい」
何の説明をしていなくても理解してくれる妻を得て僕は幸せだと思う。
案の定何も理解していないからリグと一緒に湯船に浸かってから、ノイエはずっと彼女の胸を揉んでいた。どうもリグのサイズになると枕に適していないらしい。枕にならない胸は揉むと言うのがノイエのルールだ。なんて羨ましい。
「リグのこの湯を弾く褐色の肌が」
「もう止めて」
「この刺青のこのギリギリのラインが」
「本当に止めて」
ノイエの揉みに便乗してリグの素晴らしさを延々耳元で囁き続ける。
最終的に茹蛸かと思うほど真っ赤になったリグを連れ食堂に移動することとなった。
「だから寝てなさいって」
「へいきです。たくさんねました」
「周りが心配して仕事にならないから」
「みなさん。しごとをしてください」
無理だから。もうポーラ派のメイドさんたちはハラハラとした感じで君を見ているよ。
特に扉の枠に掴まりこっちの様子を伺っているミネルバさんとか心配を通り越して危ない感じに突入している。
ノイエを愛でる姉たちが見せる表情によく似ているわ~。
「オッサン先生も今日一日安静にして居れば大半の骨がくっつくと言ってたでしょう?」
「へいきです。きあいで」
「却下だ却下。ノイエ~」
「はい」
鳥の丸焼きを綺麗に食したノイエがこっちを見る。
「誰か強化魔法って使えたっけ?」
「……お姉ちゃん?」
「だね。で、誰?」
「……」
首を傾げてノイエが沈黙した。
思い出そうと努力する辺りは高得点である。
「……お腹空いた」
でも諦めて食事の再開を急いでしまうからノイエはダメなんだろうな。
もう少し地道にノイエを育てていかなければ。
「リグは誰か思い当たる?」
「魔法ならアイル」
「やっぱりか」
牛のステーキを口に運ぶリグも迷いがない。
何だかんだでこの子はアイルローゼ大好きっ娘だからな。
「まあ仕方ない。打つ手が無いなら簡単な手を打とう。ミネルバさん」
「……何でしょうか?」
忸怩たる思いって言う表情の見本のような顔をしたメイドさんが僕の傍に来る。
片手で必死に給仕をしているポーラを見ていて……これ以上は精神的にご飯が美味しくなるとは思えません。
「ドラグナイト家当主として命じます。ポーラを抱きかかえて今夜一晩一緒のベッドで寝てなさい」
「……そのようなことは」
笑顔だよ。言葉に対してめっちゃ笑顔だよ。
「命令です。即時実行しなさい」
「畏まりました」
頷きポーラを抱きかかえたミネルバさんにメイドさんたちの羨望の眼差しが集まる。
ジタバタと抵抗を見せるポーラだが、ミネルバさんは巧みにその攻撃を受け流して抱えたポーラを運んで行く。
「申し訳ございません。ポーラ様。アルグスタ様のご指示ですから」
「はなして。ちゃんとしごとをします」
「申し訳ございません。ですが御当主様のご命令ですから」
ハァハァと生温かな吐息を響かせてミネルバさんとポーラが遠ざかって行った。
「うむ。これで食事に集中できる」
ポーラの骨の髄までメイド根性が沁み込んでしまったのは大問題かもしれない。
怪我を押してでも仕事をするのはやはり許せないしな。
魚のムニエル的な物を口に運びながら……僕は気づいた。
ノイエとリグは肉ばかりだな。魚も食え。魚も。
「だからノイエが居るんだから別にボクが相手をしなくても」
「それはそれ。これはこれです」
全裸に剥いたリグがベッドの上でそんなことを言いながら抵抗を見せる。
両手でお腹の辺りを必死にガードし、おかげで後の部分は丸出しである。実にエロい。
「ノイエに見られるのも」
「平気」
「ノイエが良くても」
「平気」
若干早く始めてと言いたげなノイエが、別途に寝そべり足を振りながらこっちを見ている。
子供のような振る舞いであるが、これから行われることはガッツリアダルトです。
「と言うかどうしてお腹を隠す?」
「……食べ過ぎてお腹が」
「うむ。リグにも可愛らしい一面が」
「煩い」
ポッコリお腹を気にしてずっとお腹を隠しているらしい。
「大丈夫。リグは可愛いから」
「君の目はおかしい」
「そうかな? ノイエはどう思う?」
「お姉ちゃん可愛い」
「だよね?」
ノイエの援護射撃を得て僕は確信する。やはりリグは可愛らしいのだ!
「そんな訳でいただきます」
「って何処を? そんな所を舐めるな」
抵抗空しくガッツリリグと楽しんでから何かを学んだらしいノイエとの戦いに臨む。
それを終え休憩してから……脱力しきったリグを捕まえて再度褐色と刺青の素晴らしさを相手の体に教え込んでいたら夜が明けていた。
短時間で体力が回復するスキルが欲しい今日この頃です。
「なぁ~」
「そうね。戻ってきたらリグのあの胸を抉り取って遊んでも良いから」
「は、い」
どす黒いオーラを発し続ける猫を抱き、セシリーンはずっと背中を言いようの無い汗で濡らしていた。
特に気にもせず外へ出たリグに悪気は無かったはずだ。
けれど何と言うか間が悪かったのだ。勝利し雄たけびを上げていたファシーは頂上から地の底に突き落とされた感じになってしまった。
不予の事故だ。
誰が悪いと言うのなら、やはりリグだろう。
確認をしてから外に出れば良かったのに。
必死に猫の頭を撫で続け暴発回避に努める歌姫の苦労をレニーラとシュシュは震えながら抱き合い見ていた。逃げ出そうものなら猫が不可視の刃を飛ばして来るのだ。故に逃げられない。
機嫌の悪い猫に睨まれれば間違いなくバラバラにされる。
その恐怖もあってレニーラとシュシュは逃げられずにいた。
唯一出て行ったのはアイルローゼだ。
彼女は床に転がっていた物を拾い上げ軽く首を傾げると急いで中枢を出て行った。
その様子に猫も攻撃などしない。『アイルローゼだけズルい!』と叫んだレニーラが不可視の刃を向けられ全力で回避していた。
「なぁ~」
「そうね。巨乳は憎いわよね」
「裏切るなシュシュ! 私はちょっと大きいだけだから!」
「十分に~巨乳だぞ~」
グイグイと生贄を押し出してくるシュシュにレニーラは必死の声を上げた。
「あら?」
「にゃ」
物音がしてセシリーンはその見えない目を反射的に動かす。
目は見えないが耳は良く聞こえる。だからこそ音の発生源を中央に捕らえて確認するのだ。
「ホリー?」
「「「……」」」
歌姫は目が見えない。けれど後の3人は目が見える。はっきりと見える。
頭部をグズグズに崩しながらも歩いて来た人物を正面から見つめ、軽い吐き気を覚えた。
ギョロっと動いた1つだけの眼球が中枢の内部を確認する。
暫くギョロギョロと目玉を動かすホリーらしき存在に、レニーラとシュシュは背を向け軽く戻す。そして猫は『にゃん』と可愛く鳴いて首を傾げた。
猫だって突然グズグズな頭部を見せられれば軽い吐き気ぐらい覚える。相手が何であるのかさえ分かれば我慢できる。
必要なら刃を飛ばして全部をグズグズにしてしまえば良いのだから。
「あるグ、ちゃんに……呼ばレタ気が?」
「気のせいよ。今は呼んでないわ」
「そウ」
軽く頷いて血肉を床に落とし……ホリーは去って行った。
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