軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二試合1人目は

ユニバンス王国・王都内勝ち残りトーナメント会場

深く深く息を吐き、その人物は自身の内に何かを貯め込む。

普通の騎士たちを相手にするのであれば自分は決して負けないと思っていた。だが第一試合から自分の目で追うのですら精いっぱいの戦いを見せた。

流石は最強と誉れ高いドラゴンスレイヤーだ。

「第二試合1人目は、リディ」

「はい」

静かに応じて女性騎士は椅子から立ち上がる。

立て掛けておいた双剣を腰に吊るし、階段を昇って舞台へ上がる。

見世物となることには抵抗はある。

普段なら仕事を理由に断る所だが、それを上役に広く知られていたのか今回は説明も無く王都に呼ばれた。でも大将軍の配慮に感謝している。今から自分の実力でも勝てるか分からないかもしれない相手と戦っていけるのだから

「2人目はジャルス」

「はいよ」

面倒臭そうに椅子から立ち上がった妖艶の美女に観客の視線が集まる。

舞台上のリディは革鎧姿の騎士然とした姿だ。正直見ていて面白みに欠ける。けれど今立ち上がった長身の美女は否応なしに注目を集める。

波打つような長い紫の髪。勝気にも見せる整った顔。何より胸の位置に存在する豊かな双丘に多くの男性の視線が集まる。不思議と女性の視線も集まっていた。半数は嫉妬混じりであるが。

ジャルスは右肩に棍棒を預けて担ぎ、左手にも棍棒を掴んでいる。

双棍棒と言えば良いのか言葉に困るが、それが破壊魔と呼ばれる彼女の昔からのスタイルだ。

「両者開始線に」

審判の声に2人は向き合う。

「始めなさい」

「なあアルグスタよ」

「ほい」

「お前はあんな美人をまだ隠しているのか?」

「顔より胸でしょう?」

「ああ。あれは凄いな」

正直者の馬鹿兄貴は素直に認め、アイルローゼの後ろに立ち肩を揉んでいたフレアさんが静かに主の背後へと移動する。

肩もみが始まる。決して首に腕を回して締め上げてなどいない。首が太いからあんな形になっているのだろう。

「ねえ馬鹿弟子」

「ほい」

「あれってもう貴方が発案した水着じゃないの?」

「……だよね」

ぶっちゃけジャルスの服装は、ハリウッド女優が着そうな水着にも見える。

腰には作業中のアイルローゼが好んでいたカラフルなパレオを巻き、上半身は肩を通す形で布が前後でクロスしている感じに見える。ただそれで動くと胸がこぼれ落ちるから、それを回避するようにクルリと胸の所を布が一周している。

安心してください。動いてもこぼれませんよ。

だが世の男性諸君はそれでも何かを期待しているのか、大半が前かがみで嚙り付いている。

これがこの国を支える多くの貴族だと思うと泣けてくるよ。

「意外と冷静ね」

「失礼」

チラリとこっちを見て来る先生に対し、落ち着きを払う僕は揺れる胸如きでは動じず毅然とした態度を見せる。

「大きいのは見慣れているしね。最近は小さいのも美味しいなって思っています」

「黙れ変態」

バッサリと先生に言葉の刃で切り捨てられました。

良いもん。今夜にでもその小さな胸を味わい尽くしてやる。

僕の視線に気づいた先生が静かに両手で自分の胸を隠して舞台に目を向ける。

恥じらう姿がこれまた可愛いね、本当に。

それはさて置き疑問を1つ解決しよう。

「先生質問」

「……何よ?」

「ジャルスって強いの?」

今更それをするって質問をしたら、案の定先生に呆れられた。

「貴方はカミーラに棍棒を持って挑める?」

「あはは。聞く必要もない」

「よね。でもジャルスはそれが出来る馬鹿よ。少なくともカミーラもいつもの余裕綽々とした感じで戦ったりはしない数少ない相手ね」

「あの人間凶器と互角に戦える化け物って存在するの?」

そんな人物が居るのであれば一度見てみたい。

「少なくとも私はジャルス以外では知らないわね。ああ。魔剣があればスハが互角に戦えるって言う噂を聞いたことがあったけど……今となっては確認のしようは無いわね」

こっちの話に聞き耳を立てているフレアさんに配慮したのか、先生はスハを亡き者にした。

魔剣使いさんは魔眼の中に存在しているらしいけど出会ったこと無い。

いつも魔眼の深部の方に居るってレニーラが言ってたな。

で、愛妾に首を絞められている馬鹿兄貴が必死に自分をアピールして居るのがウザい。

貴方は馬鹿ですか? 貴方程度の人物がカミーラに勝てるとか、どんな自惚れですか? 闇に葬るぞ?

「「「おおお~!」」」

観客席からの大歓声に視線を舞台に戻したら、ジャルスがパレオを外していた。

生足的なあれは普通だが、意外と腰が細くて魅力的なお尻をしている。

この国の前の王様は……お尻好きーだったことを思い出して何となく涙が出て来たよ。

実に惜しい人を喪った。

「あの尻は~!」

「この浮気者~!」

王家専用の観戦席から、爺の絶叫からの悲鳴が響いて来た。

ナレーション殺しで遊んでいたらリアルになってしまった様子だ。

嫁の前で浮気はダメだよ。どんなに自分好みなお尻があったとしても。

「どうして私の足を見ているの?」

「深い意味はありません」

「浅い意味だと?」

「……死を覚悟して先生の足を舐めてみようかと」

サッと顔を真っ赤にしてアイルローゼが必死に役に立たないスカートで自分の足を隠そうとしている。本日の先生はコリーさんお手製の足が良く見える衣装だ。何気にこの服を着てくれる率が高いので生足を見れて嬉しいです!

「……で、馬鹿弟子」

「ほい?」

「試合は見なくて良いの?」

うむ。見ることとするか。

ぶっちゃけ格闘技に精通していない人が格闘技の試合を見ている感じ、『わ~凄い』とかしかコメント出ないんですけどね。

「ふむ」

棍棒の先を石畳に置き自分の足に立てかけたジャルスは、外したパレオを舞台下へと放り投げた。

当初は足を出すことに抵抗があったし、何より相手を舐めてかかっていた。だから外すとは思っていなかったが、どうやら相手はそこそこ戦える人物であった。

「良し。続けよう」

「……はい」

両手で剣を握る女性騎士が何故か笑みを浮かべていた。

普段ならそんな相手に興味を抱かないジャルスだが、こんなお祭りのような状況で見世物と化している自分に気づき……軽く息を吐いて声をかけた。

「ずっと笑っているな。気でも触れているのか?」

「いいえ」

「なら何故笑う?」

問いに女性は笑顔のまま口を開く。

「自分が憧れていた人物と戦っている。こんなにも興奮することはありません」

「憧れ? 私を?」

気が触れているわけではないようだが、違った意味でジャルスは相手を心配した。

「普通は串刺しだろう?」

棍棒の先を舞台下の最強に向けるジャルスに対し、リディは静かに頭を左右に振る。

「自分の憧れは貴女です」

「面白いな。訳を聞こうか?」

「はい」

向かい合う状態でリディはゆっくりと相手を見つめる。

「貴方は特に男女の扱いが酷かった北西部分で名を馳せた。それも串刺しとは違い1人で」

「部下を持つのが面倒だっただけだよ」

「そうなのでしょうね。確かに串刺しには部隊運営に優れた副官が居たと聞く」

その言葉にジャルスは鼻で笑う。

確かに魔剣使いは優れた副官だったのだろう。けれどそれは表向きだ。

あの忌々しい串刺しは、元々部隊運営に優れていた。自分とは違い部下を、人を信じることの出来る彼女にはそれ相応の部下が集まっていたのだ。

だからこそ強かった。

彼女の部隊は強く、あの大戦の世でその名を轟かせたのだ。

「でも貴女は違う。1人で全てをやって見せた」

「群れるのが面倒だったからだ」

それも事実だ。自分だけなら、周りに人が居なければ足手まといは生じない。

だからこそジャルスはいつも1人で戦場に赴いた。

1人だったら……余計な仲間の死を見ずに済むからだ。

「実を言うと自分も人付き合いが苦手なのです」

「……」

「ですが最近ようやく友人が3人も出来ました」

「……」

「だから自分は分かります。貴女の孤独が! 1人で奮起して友を得ようと頑張っていた貴女の気持ちが!」

迷いのない絶叫に……ジャルスは左の耳に小指を入れて掃除した。

どうやら耳に問題は無いらしい。問題があるとすれば目の前の人物だ。

「良く分かった」

「分かっていただけましたか!」

「ああ」

その目から光を消してジャルスは棍棒を掴み担いだ。

「どうやらお前は一度殴り飛ばして矯正した方が良いと思う馬鹿だということがな!」

吠えたジャルスの猛攻に、剣だけで挑んだリディに勝ち目は無い。

数分後。死なない程度に全身を滅多打ちにされたリディが担架で運ばれて行った。

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