作品タイトル不明
何で首を傾げるのよ?
ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸
『ノイエの馬鹿。嫌い。大っ嫌い』『むぅ』『許さないんだから』『むぅ』『……本気じゃないからね? 本当に嫌ってないから』『むう』『でもお姉ちゃんとして許せないこともあるの』『むう』『だからそろそろ解放して! ノイエ!』『お姉ちゃん可愛い。これが可愛い?』『忘れてた! 見るな馬鹿弟子! ってどうして刻印の魔女が横に居るのよ!』
回想終わり。ノイエに抑え込まれて罰を受ける先生が可愛らしく吠えた。
そんなの決まっている。2人で終始見ていたからだよ。
ノイエが先生に罰を実施し始めたら、カサカサと家庭内害虫も真っ青な動きでやって来た馬鹿賢者は、僕の横に座ると見学しつつ録画までし始めたけどね。
流石偉大なる三大魔女の1人だ。ちょっとだけ尊敬したよ。
「……もう死ぬ」
全裸の先生がベッドの隅で膝を抱えて絶望に飲み込まれている。
その横では全裸のノイエが満足気に大の字で寝ていた。
とても平和だ。ただおかげで僕は興奮しすぎて眠れそうにない。
「尊い物が撮れたわ」
「今度見せてね」
「もちのろんよ! 何なら私の秘蔵コレクションも一緒に!」
「師匠! 自分一生師匠に付いて行きます!」
「ついて来い弟子よ! ともにオールジャンルを制覇するのよ!」
「あっ僕、ジャンルはこだわる派なんで」
「お前は敵だ!」
殴りかかって来た拳を掴んでお馬鹿な存在を投げ飛ばしておく。
オールジャンルは危険だ。エグイのとか汚いのとかは絶対に無理ですから!
無事にベッドの上に着地し弾んだお馬鹿がノイエにぶつかって止まる。
ムクッと起きたノイエが馬鹿賢者を猫掴みして……ポイっと投げ捨てた。
一応それってポーラだから乱暴に扱って欲しくないんだけど……ベッドの下に視線を向けたら、足をVの字にしてクラッシュしていた。
気にしないでおこう。ツッコむと色々と疲れそうだ。
「……そうだ。死のう」
「ノイエ~」
「はい」
危ないことを言いだした姉の背後からノイエが抱き着いて甘えだす。
そうするとアイルローゼは弱々しくノイエの頭に手を伸ばして撫でだした。
アイルローゼたちはノイエの姉である限り妹の甘えを邪険には出来ない。
まあ僕もノイエが甘えてきたらどんなに疲れていてもその頭を撫でることだろう。
「こっちは無視!」
「色気のない下着を見てどうしろと?」
「穢れを知らない存在よ! そっちの穢れしか知らない魔女より万倍もピュアよ!」
ズンとアイルローゼが肩を落とした。ノイエの甘えが全力モードに移行する。
「そっちの魔女を穢したのは僕だから文句はないよ」
何故かノイエと2人して先生がビクッと大きく体を震わせる。
「僕色に染めたって感じ?」
「はっ! そんな中坊のセリフを聞いて誰が喜ぶのよ?」
「……」
プルプルと震えだしたアイルローゼを何処か嬉しそうにノイエが抱きしめている。
「まあ遊びはこれぐらいで」
ヘッドスピンからのジャンプでお馬鹿が立ち上がった。
「ボチボチその魔女を中に戻すんで色々と話を詰めたいんだけど」
椅子を引きずって来てお馬鹿がそれに座った。
「まずそこのお姉様が抱え込んでいる魔道具ね」
「何故お前がそれを知っている?」
「それは私が偉大なる魔女だからよ!」
「お前は残念が頭に付く魔女だろう?」
「乙女の恥じらいドロップキック!」
「これが若さかっ」
助走からのドロップキックを食らった僕は、床に向かい倒れ込むが倒れない。
音もなく移動して来たノイエがギュッと抱きしめて支えてくれたからだ。と言うかノイエが助けてくれると信じているからこんな肉体派なボケが出来る訳だが。
あ~。ノイエの胸の感触が柔らかくて素晴らしい。
ふとベッドの方から冷たい視線を感じた気がしたから、ノイエの胸に向けていた神経を散らす。先生が居る時は僕は足派になると決めました。
「で、魔道具よ。私とそこのツンデレとで山分けが決まっている物を出しなさい」
「おひ」
先生に視線を向けたら彼女は全力で顔を背けていた。
魔女の私が全ての罪を的なことを言っていたけど、あれってこういう意味なのか?
「アイルローゼさん?」
「……何も聞こえないわ」
耳を塞いでも返事をしている時点で聞こえているよね?
「まあ魔道具に関しては、この後にでも話すこととしましょう」
「何よ? 私は今すぐ結論を出しても良いのよ?」
馬鹿の横槍が本気でウザい。
「ノイエ~」
「はい」
「ちょっとそこのお馬鹿さんと枕でお手玉してあげて」
「はい」
「ちょっと! ふにゃ~」
ノイエが枕とポーラを手にお手玉を開始した。時折アホ毛でワンクッションを挟む器用さまで披露する。
ただウチのお嫁さんは深夜に全裸で何をしているのだろうか? これが深夜テンションか?
命じたのは僕ですけどね。
「先生も後でちゃんと話し合います。良いですね?」
「……何も聞こえないから」
「胸、見えてますよ?」
「馬鹿っ!」
聞こえてるじゃん。
顔を真っ赤にして両手で必死に胸を隠す先生の様子が愛らしい。
ただプルンと胸を揺らしてお手玉しているノイエの方に視線が移りがちなのは仕方ない。だって僕は男の子ですから。
しばらくして飽きたらしいノイエが馬鹿を床に落としてベッドに戻る。
そのままゴロッと横になって寝てしまえる彼女は本当に凄いと思います。
「……それで次に決めたいんだけど、 門(ゲート) は何処に置くの?」
何ごとも無かったかのように椅子に座り直した馬鹿が足を組んで僕らを見る。
若干その目がまだグルグルと揺れているのは見なかったことにしてあげよう。
「王都の傍っしょ」
馬鹿の質問に迷わず返答する。
「理由は?」
「アイルローゼが移動の指揮を執るからかな」
「なるほどね」
腕を組んでお馬鹿がうんうんと頷く。
「それをすると周りの貴族が騒ぐわよ」
「うん。それで?」
「……恨み買うわよ?」
「こっちが何もしなくても勝手に恨む人たちだしね。だったらちゃんと喧嘩を売って恨まれた方が気分が良いかな?」
面と向かって喧嘩を売れと言いたい。
ただ僕の返答に小柄なメイドが呆れたように肩を竦めた。
「はぁ~。そんなことを言っているからどこかの魔女が中に戻るのを拒否るのよ」
「先生が?」
改めて視線を向けたら先生は、枕を抱えて顔を隠していた。
「だから胸が見えてるよ」
「んっ!」
「うっそで~す」
「馬鹿っ!」
可愛らしい不満の声が聞こえて来たよ。
「まあノイエも居るから平気っしょ?」
「ええ。貴方はね」
何でしょう。その含みのある言葉は?
馬鹿賢者に目を向ければ彼女はニヤニヤと笑っていた。
ポーラの顔でそんな表情を浮かべるなと言いたい。
「どういう意味よ?」
「ん~? 貴方は2人も優秀な用心棒を抱えているけどって話かな~?」
「はっきりと言いなさい」
「え~?」
「お手玉セカンドシーズンの開幕をここに宣言したいと、」
「貴方の部下は?」
脅しに屈するなら最初から言えと言いたい。
「僕の部下と言うと……」
「何で首を傾げるのよ?」
「何だろう。命を狙われてもどうにかしそうな人多数なんで」
ルッテの場合は性格的に自滅して終わる感じがする。暗殺で死ぬキャラじゃない。
モミジさんはの場合は……襲い掛かった襲撃者に同情する。もっともっとと叫ぶ彼女の姿しか想像できない。
イーリナは良く分からん。来たばかりだからそれほど関りが無い。
そうなると狙うとしたらイネル君とクレアか。
「狙うならクレアかな~。あの馬鹿っ娘は総合的に判断しても一番狙いやすいかな」
「でしょうね」
「でもあの2人にはクロストパージュ家が護衛を配置しているとかいう噂を聞いたけどね」
「それってどれほどの手練れなの?」
「知らんです」
他家の護衛まで僕は把握していません。
「なら狙う方はそこの姉ぐらいの手練れだとしたらどうする?」
「そんな人いないでしょう?」
仮に居たとしたら『あの日』に大暴れ……そう言うことか。
「あの日に暴れなかった若い世代?」
「そう言うことよ」
ぴょんと椅子から飛び降りて馬鹿賢者が扉へと歩き出す。
「どうするのかは自分で考えなさい。私は門の方を担当してあげるから」
「サービス悪いな~」
「そう?」
扉に手をかけ馬鹿が振り返った。
「ヒントだけでもサービスだと思うわよ?」
確かにね。
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