軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あれの言うことは基本嘘だと思った方が?

ユニバンス王国・王都王城内国王私室

「いや~アルグスタ殿は本当に策士だ。あのような恐ろしい罠を仕掛けているとは」

「……ほう」

満足いくまで舞姫の踊りを見て来た宮廷魔術師に対しシュニットはとてもとても冷たい視線を向ける。

たらたらと冷や汗を流していた人物は、軽く咳払いをしてから国王と向かい合うような形でソファーに腰かけた。

「それで陛下。あの魔女は何と?」

「……彼女はアイルローゼだそうだ」

「なら」

「その内あの馬鹿王女と一緒に私の前に現れるとも言っていたよ」

「……そうですか」

小さく息を吐いて彼……ケインズはメイドに飲み物を頼む。

「陛下」

「分かっている。2人が一緒に私の前に来たとしても両者が本物であるかは分からない」

「ええ。ですが少なくとも魔女は本物でしょうな」

「根拠は?」

「彼女しか使えない魔法……腐海を共和国領で乱射していますから」

乱射の結果共和国領の田畑は腐り果てたらしい。

現在は山林から土を運び、腐った土壌と混ぜ合うことで土の改良が進んでいるとも聞く。

早ければ来年から農作業が再開し、今まで以上に豊かな栄養を持った田畑からたくさんの食物が得られるかもしれないと言われている。

「ではグローディアが偽者と?」

「あ~それなんですが、どうやら彼女も本物らしいです」

「根拠は?」

「前任のメイド長が『本物だ』と言い切ったそうですよ」

「……スィークがか」

ならば間違いない。シュニットは頷き確信した。

あの化け物は恐ろしいことに他者の歩く音を記憶している。

人それぞれの個性をもつ足音を耳で覚え、スィークはその音のみで誰が誰かを判断する。最も恐ろしいのは多少歩き方を変えたぐらいでは彼女の耳を誤魔化せない所だ。

「ならば2人とも本物であると?」

「現時点ではそう判断するしかないでしょうね」

「そうか」

山積している問題が1つでも減ってくれるのは正直助かるが……ただ今回は解決したとも言い切れない。本来であれば魔女も、そしてあの従姉もこの王都で暮らしてくれればこんな問題など生じないのだ。

「何故彼女らは王都を嫌う?」

「……難しいですな」

クシャクシャと頭を掻いてケインズは窓の外を見た。

「許されたとはいえ彼女たちはその手で人を殺めた」

「そうであるな」

「ただ……それが前回のあの1回でお終いとも限らない」

「つまり再度同じことが?」

「起きるかもしれないし、起きないかもしれない。だが警戒はしている……そんなところでしょうか?」

「厄介であるな」

「ええ。本当に」

メイドが準備した紅茶で口の中を潤し、ケインズは懐から一通の封筒を取り出した。

「陛下。これを」

「それは?」

「さあ? 貴方の弟君から預かりました」

「あれが手紙を?」

怪訝に思いつつも受け取り、シュニットは手紙の封を切る。

内容は……余りにも酷かったので、シュニットは思わず便箋を握り潰そうとした。

「誰か。至急近衛団長を」

「はい」

待機していたメイドを走らせ、シュニットは思わず頭を抱えた。

「お伺いをしても?」

「……後悔はしないな?」

「内容にもよりますが、まあ後で知って頭を抱えるくらいなら」

「ではハーフレンが来たら話そう」

しばらくすると近衛団長が汗かきながらやって来た。

急いで駆けて来たのだろう……多少息が上がっている。

挨拶をし、国王の許しを得て入室したハーフレンは国王の横に立った。

「お呼びでしょうか陛下」

「ああ。至急下町の治療院に部下を派遣してもらいたい」

「理由は?」

「……アルグスタの馬鹿がある人物を連れてきているはずだ」

「人物?」

首を傾げそうになったハーフレンは思い出した。

「ああ。確かアルグスタが酷い怪我を負った女性を預けて行ったはずですが?」

「……特徴は?」

「特徴ですか? スラリとした女性でした。胸は薄く顔立ちは整っていて髪は金髪。一番目を引いたのは褐色の肌でしたが」

「……」

再度頭を抱えシュニットは動きを止める。

訳も分からず近衛団長は、向き合う形でソファーに座る非公式の義父と呼んでも差し支えの無い人物に目を向けた。

彼の視線を受けたケインズも頭を静かに左右に振った。

「どうやらその人物は……」

疲れ果てた声が頭を抱える国王から漏れ出て来た。

「帝国に滅ぼされた旧フグラルブ王国の王女らしい」

「「……」」

「あれが旧フグラルブ王国に立ち寄るとは聞いていたが……確か未発見の魔道具捜索では無かったのか?」

そう弟からシュニットは聞かされていた。

だから出発する日を弟に任せ……その結果がこれだ。

「あ~。陛下」

「何だ?」

ハーフレンは恐る恐る声を発した。

「あれの言うことは基本嘘だと思った方が?」

「……そうだったな」

深く深く息を吐きだし、シュニットは宰相代理のイールアムも呼ぶようにメイドに命じた。

ユニバンス王国・王都王城内アルグスタ執務室

荷物を抱えて部屋に戻ったら、優雅にアイルローゼがお茶をしていた。

クレアは仕事に戻ったのか、机の上の書類の山と遊んでいる。本日得た臨時収入は……たぶん先生が腰かけているソファーの前に存在するテーブルの上のあの袋かな?

「あら? お帰りなさい」

「ただいま」

「こんな時間からお風呂なんて優雅ね」

「……」

全てを理解しているのであろうアイルローゼの機嫌が若干悪い。

仕方なかったんや。相手はあの馬鹿だよ? 普通満足いくまで踊ったら帰ると思うでしょ? それが『体が良い感じに温まったよ旦那君』とか言い出し、嫌がる僕を個室に拉致だ。

舞姫って踊ると体力が回復する特殊なスキルとか持っているのですか?

「お土産いる?」

「要らない」

「ですよね」

それでも抱えて来た宝玉を先生の横に置く。

不機嫌そうに彼女は指先で押し、宝玉を少しだけ自分から遠ざけた。

宝玉に罪はない。罪があるとしたら何故か出て来て大暴れしたレニーラが悪い。

「先生は休憩ですか?」

「ええ。誰かと違って私は陛下に会っていただけで体は動かしていないのだけど」

「……」

「精神的に疲れたから休んでするのよ。精神的に」

きっと大事なことなので2回言われました。

「で、陛下は何て?」

「……私がグローディア王女様の振りをしていると疑っていたわ」

「あの性悪の? あり得ないし、先生の方が遥かに美人だし胸あるし足が奇麗なんだけど?」

「……」

顔を赤くして先生がプルプルと震えだした。

ヤバい。胸あるは地雷だったか?

「一応誤魔化しておいたけどまた何かとんでもないことを言いだすかもしれないわね」

「あっそう」

こっちの手の内を明かせない以上、周りは好き勝手言うものだから仕方ない。

「とりあえず陛下は今頃頭を抱えているはずだから何日かは静かなはず」

「そうなの?」

「はい。で、落ち着いたら矛先が僕に向くから……先生はのんびりしててください」

「そう言うならそうするけど」

ティーカップを戻しアイルローゼが僕を見る。

「危ないことはしてないでしょう?」

「危なくはないかな。厄介で凄く地味に強力な嫌がらせっぽいことをしただけ」

「なら良いけど」

「心配してくれるの?」

「……ノイエのね」

ですよね~。

ただ先生は僕から顔を背けた。

「ただ貴方に何かあるとノイエが悲しむから、馬鹿なことはほどほどにしなさい」

「了解です」

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