軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

刻印の魔女の魔法でございます

ユニバンス王国・王都王城内中庭

「はいは~い。その線より内側に入らないでください。言うことを聞かない野郎は背後から術式の魔女が狙い撃ちます」

僕の注意を受けて数人の馬鹿どもが後退する。

決まりごとは守れ。そしてローアングルで覗き込もうとするな。何処の馬鹿野郎だ? 地面スレスレまで顔を寄せて……クロストパージュのエロ親父か。

お~い。クレア? 君の実父が……こっちを見ろ。どうして全力で顔を背けている? これが現実だ。君の父親は必死になってレニーラの股間を覗き込もうとしているのだよ。

夜を徹して僕の上で存分に踊ったレニーラだが、まだ踊り足らないということで急遽踊る場所を求めだした。

はっきり言おう。街中で安易にこの馬鹿を躍らせることは出来ない。客が集まり過ぎて暴動を起こしかねない危険があるからだ。

だからお城の中で踊らせることにしたのだが、エロ貴族共が集まって来た。

「は~い。おひねりはこちらに~」

クレアに籠を持たせてエロ親父共の前を何往復もさせる。

彼女がこっそりと実父の手を踏んでいたが、父親は邪魔する娘を払いのけてレニーラの踊りにかぶりついている。凄いよこの親父。真なるエロだ。

「は~い。そっち。それ以上入ったら何かが飛んで来るよ?」

警告だけで馬鹿が正気に戻って一歩引く。

まあ先生は現在馬鹿退治をしているほど暇じゃないんだけどね。

何故か今日は朝から陛下に呼び出しを受けて出向いて行ったからだ。

またプレートの作成依頼かな?

最近の先生は余力があれば外注を受けているから……その辺のスケジュール管理は出来る人だと信じています。

王城内・国王私室

「いつも急な呼び出しで済まない」

「いいえ。深夜や早朝でも無ければ問題はありません」

「そう言って貰えると助かる」

魔女に対しソファーに座るよう促し、国王シュニットは相手と向かい合うように腰かけた。

「それで本日の御用は?」

「ああ……実は少し困っていてな」

「困っている?」

「ああ。本日貴女との話し合いで呼び寄せた宮廷魔術師が中庭に居てな」

「……」

目から光を消し魔女はゆっくりと視線を巡らせた。

窓の外からは煩いほどの声が聞こえて来る。場末の酒場かと思うほどの声だ。

「ユニバンスのお城はいつから酒場に?」

「……アルグスタが自由気ままに振る舞うようになってからか」

「そうですか」

つまりあれが悪いらしい。

今夜レニーラが戻ってから真面目に説教しようとアイルローゼは決めた。

問題はノイエだ。最近の彼女は昔と違って行動が読めない。暴走でもしたら……昨夜のことを思い出してアイルローゼはキュッと太ももを寄せて何かに対して身構えた。

説教後のあの夫婦の暴走を内心で焦り警戒した。

「それでクロストパージュ様をお呼びして私との会話に加える理由は?」

「ああ」

膝に肘をついてシュニットは若干前屈みになる。

「貴女とグローディアの関係について確認しようかと思ってな」

「私と王女様の?」

思いもしない言葉にアイルローゼは少し首を傾げた。

「ああ。ケインズが言うには、どちらかがどちらかの振りをしているのではないかと疑っている」

「……面白い推論でございますね」

クスクスと笑いアイルローゼはゆっくりと足を組んだ。

「つまり陛下は私が王女様の振りをしていると疑っているのですね?」

「……貴女と言うより貴女たちは謎が多すぎる。疑われても仕方がないであろう?」

「そうですね」

素直に認め、アイルローゼはソファーから立ち上がった。ゆっくりと歩き窓際に立つ。

「陛下。あそこに居るのは誰でしょうか?」

「舞姫であるな」

「ええ」

認めてアイルローゼは窓を開く。

熱気を含んだ風が流れ込んできた。

「私には決して彼女のような踊りは出来ません。無論歌姫のようにも歌えません」

「……つまり貴女は自分がグローディアの振りはしていないと?」

「はい。少なくとも私は彼女より胸はあります」

「……」

シュニットは視線を動かさず何も答えなかった。

人はそれを耐えたとも言う。

「確かに私たちの存在は疑われるでしょう。ですがそれには理由があります」

「理由とは?」

「はい。まず私たちが咎人であったということです。それも見つかれば処刑されても仕方のないほどの罪を犯した者たちです。ですが私たちはただ1人の希望を得ました。名をノイエと言います」

軽く窓枠に腰かけアイルローゼは外の様子を見つめる。

何故か彼がクロストパージュの前当主と取っ組み合いの喧嘩をしていた。

「私たちは彼女を深く愛しました。愛し過ぎました」

小さな少女のようなクレアが2人の仲裁に入り、何故か2人に掴まって胴上げされている。

何がしたいのか本当に分からない。

見てて分かるのはどうやらどこまで持ち上がるのかを確認しているような気がする。

「だから私たちは彼女に対し、持てる全ての力を注ぎました」

「全てを?」

「ええ」

陛下の言葉にアイルローゼは頷いた。

外を見ていると頭痛がしてくるので、彼女は視線を戻した。

「陛下はご存じでしょうか? ノイエには数多くの術式が絡み合っていて解読不能の状態であることを」

「そのような報告を昔魔法学院から受けたようだな」

「はい。その犯人は私です」

「……」

「彼女の魔力を盗み悪用しています」

「自ら『悪用』と申すか?」

「はい。ノイエの存在はこの国から見れば宝であり、国宝でございましょう?」

「その通りだ」

だからこそ前王はノイエに対し自分の息子の元に嫁がせたのだ。

「そのノイエから魔力を盗み運用している私たちの行為は、悪用と呼んで間違っていないはずと思いますが?」

「そうだな。そう言われれば納得できる」

魔女の真面目さにシュニットは苦笑した。

「ノイエの魔力を使い私たちは普通では扱えない魔法を使っています」

「普通ではないと?」

「はい」

軽く頷きアイルローゼは国王を正面から見つめた。

「刻印の魔女の魔法でございます」

ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸

「はふ~ん」

「ここですか? ポーラ様?」

「ん~。流石主任を務める先輩だ」

「ありがとうございます!」

台の上で横になり、背中を晒している少女に対しミネルバはマッサージを続ける。

「オイルマッサージを復活させようかな?」

「オイルマッサージとは?」

「気にしなくても良いかな~」

ノリノリで足を震わせながら……少女はピタリと足を止めた。

「予定変更。やっぱり後で教える」

「本当ですか?」

「うん。どんな反応するか見たいから」

「反応ですか?」

内容を理解していないミネルバは首を傾げる。

だが少女の姿をした悪魔は内心で笑い続ける。現役メイドにオイルマッサージなど絶対に楽しめるはずだ。

「あ」

「どうかしましたか?」

「ん~。まあ問題無いかな」

お城で色々とやっている魔女の様子に気づき、少女はクスクスと笑う。

本当に彼女たちは自分の妹を愛しているのだろう。

だからあんな嘘を並べて……本当に可愛らしい。

「ねえ先輩」

「何でしょうか?」

「どうして人ってこんなにも愛らしいのかしら?」

「私には分かりません。ですがある人が言ってました。『他人がそう見えるのは、自分が周りからそう思われているからです』と」

「良い言葉ね。どこかの 始祖(ばか) に聞かせてあげたいわ」

ため息を吐いて少女は目を閉じてマッサージを堪能することとした。

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