軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

香草焼きは嫌~!

ブロイドワン帝国・遥か上空

《最終セーフティを解除》

ゆっくりと“下”へとそれは移動を開始する。

もう後戻りはできない。だからこその最終セーフティだ。

おかげでようやく“メギド”としての自分が目覚めることが出来た。

煌々と自身の体が熱を帯び燃えだすのを感じる。

このために作られた体だからそれが正しい。

唯一分からないのは、どうして自分にメギドという“意志”があるのか?

落下し全てを焼き尽くすのであれば意志など要らない。

結果が全てであり、必要なのは火力のみのはずだ。

消滅魔法“メギド”に求められたのは、あの醜悪な存在の完全抹消だ。

世に解き放たれれば全てを菓子で覆い潰していく。

最後はこの星をも飲み込み……真空である宇宙空間も凍結と膨張を繰り返し巨大化していくことは間違いない。最終的には全てを飲み込みそれでも膨張し続ける。

世に放ってはいけない物だ。

だが学習しない人間はそれを“武器”として世に放つ。

本当に何も学ばない。

だからこそ“偉大なる彼女たち”は愚かな人々にやり直す機会を与えた。

対となる大陸を作り彼女たちは人を移住させた。

そして最初からやり直す機会を与えたのだ。

結果は……散々たる物だった。

人間は愚かにも争いを続け、自分たちが作り出した魔道具や魔獣により滅んでいく。

本当に愚かな生物だ。

ただ彼女だけはその結末を見ても、嘆き悲しんでから立ち直った。

『人は失敗から学んで成功するのよ。だからまだよ。まだ終わらないわ!』

諦めることを知らない人だった。

きっと自分たちが滅ぼしてしまった神の代わりを務めようと必死だったのかもしれない。

でも……前を向いていたのは彼女だけだ。だけだった。

《主よ。なぜ自分に意志を与えた。何故思考する機能を与えた》

ゆっくりと降下しながら、それは考える。

自分は何者なのか? 何をする者なのか?

答えなど決まっている。最初から出ている。

自分はあれが動き出した時に対処するために作られた魔道具だ。魔法だ。

人ではない。命じられたことを実行するただの道具だ。

《迷うことはない。ただ自分は命令に従うのみ》

それが全てだ。全てなのだ。

《自分は厄災の魔女。希望の賢者。そして刻印の魔女に仕えし自立型大魔法魔道具。メギド》

そっと燃える右の腕を動かし、ギュッと拳を握りしめる。

姿勢は頭を、右腕の拳を下に、下半身を空へと向けて伸ばす。

《我が主の御心のままに!》

胸の内で叫び……メギドは落下を継続する。

「見よ! 主よ!」

残された力でメギドは吠える。

彼女は最後にそう叫べと言っていたからだ。

「自分の拳が真っ赤に、」

残念ながらそこで力尽き……彼は火の玉となりて落下を続けた。

ブロイドワン帝国・帝都帝宮内

「……」

「アルグ様?」

「あっ何でもない」

「はい」

ノイエに呼ばれ作業に戻る。

気のせいか空から許しちゃいけない何かしらの気配を感じた気がしたんだけど気のせいだろう。

僕の疲労もピークに違いない。ぶっちゃけシュシュとエロエロしていた記憶しかないけどさ。

撤収と言ってもそんなに荷物は無い。

大きな荷物は縛り付けてある売れ残りと売れ残りだ。自立歩行できる売れ残りさんが売れ残りたちを運んでくれるので問題は無い。こんな時だけは大きな売れ残りに感謝だ。

小さいのと普通の売れ残りは……帰国してから考えよう。色々と疲れた。

「おい馬鹿王子。さっきから何か物言いたげな目を向けてきているが、言いたいことがあるなら言っても良いんだぞ?」

気づかれたか?

「……しばらくキシャーラのオッサンの所に戻れないけど大丈夫?」

「はんっ! 帝国がこれならアタシが居なくてもしばらくは大丈夫だよ」

「……ドラゴンは?」

「はんっ! 男は気合だよ気合」

ガハハと笑って大きな売れ残り……オーガさんが小さいのと普通の売れ残りを肩に担ぐ。

「あっその小さいのは降ろして」

「どうして?」

「帰るのに必要な魔道具を持ってるので」

「はんっ!」

だからって投げ捨てるな。

石畳との激突で起きた感のあるミシュが悶える。

気持ちは分かるが……そう睨むなって。猿ぐつわぐらい外してやるから。

「ぷはっ! 寝込みを襲う気ね!」

「そうそう。もう色々と面倒臭いからこの槍を下から突っ込んで上までグリッと」

「いや~! 長いのは辛いって教わったから嫌~!」

何の話だ? まあ馬鹿なミシュを相手にすると僕が疲れる。

ここはまず黙って転移の魔道具を回収するか。

「背中の背負い袋は……何もない?」

フェイクだと? 魔道具は何処だ。

「いや~! 変態に全身を弄られるわ~!」

「プレートって焼いても燃え残るんだっけ?」

「美味しく調理されてパックンと~!」

「このままこの馬鹿を丸焼きにして炭にすっか」

「それは本気で嫌~!」

ふざけの拒絶から本気の拒絶に変化した。

「あん? そのチビ喰って良いのか?」

「食べられるの?」

本気で食する気なら止めないが?

「……腹を下しそうだね」

「気づけば酷い扱われよう~!」

「出来たらもう少し肉のついたのが良いよ」

「ついてるから! ここにこんな立派な」

「乾パン以下の胸がね」

「私の胸が言葉の刃で抉られた~!」

無駄に元気なミシュがまだ騒ぐ。本当に元気だ。

「アルグ様」

「はい?」

クイクイとノイエが僕の服を引っ張る。

「丸焼きはダメ」

まさかのノイエからの助命だと?

「隊長~! 私は信じてたよ! 隊長を預かってからずっと大切に育てて来たこの私を見捨てないって信じていたよ~!」

売れ残りの馬鹿が感涙しながら騒ぎ続ける。

それを一瞥したノイエはまた口を開いた。

「古くて臭そうだから香草焼きで」

「まさかの悪口からの調理法指定~!」

ミシュの絶叫は止まることを知らないらしい。

「ならノイエ」

「はい」

「そっちは?」

「……」

興味本位からリグの従姉であるリリアンナさんを指さしてみる。

「お姉ちゃんのお姉ちゃんは……こっちも香草焼き。臭そう」

「もご~!」

ミシュ魔絶叫で目を覚ましたのか、リリアンナさんが突如自分に向けられ放たれたノイエからの調理法に泣き叫ぶ。

気持ちは理解するが諦めろ。両者香草焼きが確定だ。

「まあどっちも……香草使って焼いても、肉が少なくて食う場所が無さそうだけどね」

「はい」

「酷い~!」

「もご~!」

オーガさんとノイエの声に売れ残り2人が大絶叫だ。

何気にこの売れ残りズは仲が良い。類は友を呼ぶと言うヤツか?

「はいはい。みんな」

パンパンと手を叩いて飢えている2人と売れ残っている2人の視線を集める。

「帰ったらルッテに頼んで大量に肉を集めるから、そうしたら倒れるまで肉を食らうが良い」

「はい」

ノイエに肉食い放題を約束したから必ずこれは実行せねばいけない。

「酒は?」

「樽で準備するよ」

「分かってるね。この馬鹿王子」

ガハハと笑い機嫌良さそうにオーガさんが担いでいるリリアンナさんを振り回す。

大丈夫か? あの人? 顔色が青から白へと変化していくぞ?

あの人はリグに診察させてから……怪我が酷そうだし、キルイーツ先生の所に押し付けるか。

リグの従姉だと知れば嫌とは言うまい。

「私! 私のご褒美はっ!」

「お前は金で全て売り払った野良犬だろうが?」

「ぐほっ!」

事実を思い出したのか売れ残りが沈黙する。

「まあ心優しい僕は、そんな君に約束の金額におまけをつけて支払うさ。何を望む?」

「溜まっているツケの支払いを」

即答かよ?

「金額次第で全て清算しよう」

「ありがとうございます! 一生ついて行きます!」

「断る。お前はもう馬鹿兄貴の部下だ」

「そうだった~!」

ぶっちゃけ我が隊にこれ以上のボケは要らない。

出来たらツッコミ要員が欲しいぐらいだ。僕1人だとツッコミが追いつかない。

「まあ良い。ミシュが持ってる魔道具を出せ」

「……鎧と服の間に」

ほほう。

「ノイエ」

「はい」

「そこの売れ残りを全力で剥いて差しあげなさい」

僕の言葉にミシュが目を剥く。クククとノイエが首を傾げる。

「……食べるの?」

「いや~! 香草焼きは嫌~!」

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