軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二形態に移行した

ブロイドワン帝国・帝都帝宮内

《ようやく……本当にあの馬鹿たちは、もうっ!》

込み上がって来る怒りに魔法の1つでも放ちそうになりながらもアイルローゼは我慢した。

自称魔女がまた種子を飛ばしてきたのだ。

それを近くの魔道具に防御させ、一度だけ思考する。

相手の散発的な攻撃には必ず意味がある。意味が無ければただの馬鹿だ。

であれば相手は何を企んでいる?

魔眼の中に居るあの殺人鬼ならもう答えをいくつか導き出しているはずだ。

けれどアイルローゼは自分の程度を理解している。自身の思考が推理の類に向いていないことをだ。

だからこそ思考する。『自分が相手ほどに弱かったら何を企むのか?』と。

決まっている。一撃で逆転する方法だ。つまりは魔法だ。

《大規模魔法を放つには方法はそう多くない》

一番多い方法は複数人による魔法の構築だ。だが相手は1人。それは無い。

次に多いのが魔道具を使った方法だ。これの可能性は高い。注意すべきだ。

後は自分の考えの外で行われる方法だ。対処の立てようがない。

《ただ魔法なら問題は無い》

相手が魔法使いであればアイルローゼはそれほど迷わない。

規格外の領域に住まう刻印の魔女などが出てくれば別だが、人を辞めた程度の魔法使いであれば自分が後れを取ることは無いとアイルローゼは思っている。

無論自惚れや余裕ではない。客観的に自分の能力を見て下した結論だ。

《どんな一撃を見せてくれるか……それはそれで楽しみなのだけど》

悠然と佇み自分が放つ種子を対処する相手をマリスアンはずっと睨みつけていた。

あれが居たから自分が正しく評価されなかったと……その気持ちが、思いが、憎悪となって彼女の心を激しく焚きつける。

許せない。許せない。許せない……その存在そのものを許すことが出来ない。

だから殺す。この場で確実に殺す。

《私のとっておきに対処できるのかしら? ただの人間の魔女がっ!》

嗤いマリスアンは仕掛けた。

自分が出せる最強の一撃を。

ノイエが飛んで行った。

野菜星人な漫画のノリでフワっと浮かんだら飛んで行った。

もう何でもありだな……ノイエの姉たちって。

「シュシュさんや」

「何だぞ~?」

「こんな日に赤い下着を身につけて来たお嫁さんに対し、僕は何を言えばいいのだろうか?」

「黙って口を閉じれば良いと思うぞ~」

失敬な! あんな色鮮やかな赤を見せられたのだ。ここは賛辞を贈るべきだろう?

何よりスカートで空とか飛んではいけないと思います。

丸見えです。脛からの太ももへのラインを越えて赤い下着でゴールです。

見るでしょう? 僕は全力で見ます!

「で、シュシュの下着は?」

「発言が危ない人だぞ~」

スカートの上から両手で前を押さえてシュシュが警戒する。

スカートを捲るとでも思ったか? やるのならば何も言わずに実行します。

「ぶっちゃけ暇だなって」

「酷い発言だぞ?」

「そう? だってあっちの荷物なんて寝てるよ?」

縛られ猿ぐつわを噛まされているのに寝ているあの売れ残りが凄い。

図太すぎる気もするが、だからこそ売れ残っているのかもしれない。

両人とも怪我をしているらしいので、たぶん体が休息を求めているのだろう。

後始末を僕らに任せている時点でやはり図太いとも言えるが。

「で、オーガさんなんてワイン片手に今にも寝そうだし」

「すきっ腹にワインばかりで眠くなるんだよ。固形物を寄こしな」

「現状食料が底をついています。残りはノイエの魔力確保で提供できません。その辺のガラクタでも食べてなさい」

「はんっ! あんな木の混ざったモノなんて食えるかよ」

瓶に口を付けてオーガさんがラッパ飲みだ。

今回は本当に魔力と食糧難が尾を引く戦いです。困ったものです。

「で、僕らももうすることが無い」

「ぞ~」

フワっているシュシュは近くに転がっている魔道具の残骸を漁っている。

何体か先生の脇をすり抜けてこっちに来たが、オーガさんの敵ではない。ワンパンでスクラップだ。

「つか弱くない? コイツ等?」

「どう見ても大量生産だから、そこまで強さを求めていないんだと思うぞ~」

「ふむ。なら何を求めたのだろうか?」

大半が版権的にアウトな物ばかりだ。巨大人型ロボットが出て来ないのがせめてもの救いか?

「終わってからあれに聞けば良いと思うぞ~」

「たぶん忘れそうだから今自分で結論を出す。きっと何となく作れそうだから作ったんだ。で、調子に乗って大量生産をして気づいた。『ポケットに入れるモノが作れない』と。結果として大量に在庫が残り……売れ残りを大量処分したんだよ」

「「もぐっ!」」

荷物置き場から荷物たちの悲鳴が聞こえた気がした。

気のせいだろう。荷物が嘆くなんて良くあることだ。

「ならそれで良いぞ~」

「適当な?」

「旦那ちゃんほどじゃないぞ~」

褒めてないから照れないで。

するとシュシュは捜索を辞めて僕の隣へと戻って来た。

「どうしたの?」

「なにか凄く嫌な魔力の流れを感じる」

『ぞ~』を忘れるほどにシュシュが真面目だ。

と言うか、嫌な魔力の流れって何ですか?

「あ~。納得」

「だぞ~」

人間辞めている魔女が第二形態に移行した。

《……気持ち悪いわね》

正面でそれを目の当たりにしたアイルローゼは言いようの無い吐き気を我慢した。

相手が人間を辞めていることは最初から分かっていた。けれどだからって形態まで変えることはない。少なくともそのままの姿でいて欲しい。

何故ならばメキメキベキベキと音を立てて人だったモノが変化していく様を見せられる方の気持ちになって欲しい。衝撃的な映像で吐き気しか覚えないからだ。

腕や足が伸びる。厳密に言えば蔦が伸びて体積を増やしていく。そして数もだ。

下半身が膨らみ4足歩行の獣のような形になる。上半身はまだ人の形を保っているが、伸びた腕は関節が増えたようにも見える。

そして頭部が特に酷い。顔の左右に同じ顔が生じたのだ。

三面となった顔が余りにも気色悪く、アイルローゼは一度視線を逸らして呼吸を落ち着けた。

《面倒ね》

吐き気もそうだが、何より相手の顔が増えた。

それが何を企んでかの行動なのかは考える必要もない。

《三面による並列詠唱ね》

想像の外からによる大規模魔法の発動方法だ。

対処する方法は……扱う物が魔法であればどうとでもなる。

「醜い顔を3つに増やしたのだから、少しは私を楽しませてくれるのかしら?」

「「「煩い」」」

3つの口から同時に同じ言葉が放たれた。

「まあ良いわ。遊んであげるから少しは意地を見せてくれるかしら?」

「「「言っていろ……今からお前を殺す!」」」

宣言しマリスアンの3つの口がそれぞれ別の魔法語を唱え始めた。

アイルローゼはただそれを耳にし……ゆっくりと口を開いた。

「これとこれとこれか」

魔道具を展示している博物館に来たローロムは命じられたモノを適当に集める。

ちゃんと陳列されて置かれている魔道具ならば問題は無い。名札も置かれている。問題は展示されていない魔道具だ。

裏に仕舞われている魔道具には名札が無い。よって何がどれだかさっぱり分からない。

「さあ困ったぞ?」

ここで『分からなかった』と言って別の方へと飛んで行ったら絶対に後でホリーに殺される。

と言って一つ一つ確認している時間もない。

「困った……そうか」

ポンと手を打ちローロムは紙とペンを探す。見つけた紙にスラスラとペンを走らせ文字を綴る。

後は目に付く魔道具を全て集めて山と積んだ。

色が抜け元に戻ったノイエは辺りを見渡す。

山と積まれたガラクタに1枚の紙が貼られていた。

『ノイエへ。このガラクタを全部収納しておいて』

「はい」

紙を読み、ノイエは自身が使える異世界召還を唱えだす。

何も呼び出さず……開いた異世界の扉の中にガラクタの山を全て押し込むのだった。

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