軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

子猫の魔女だぞ~

《またなの……?》

届けられた手紙の封を切り、中身を確認した女性は高級紙でしたためられた“結果”をクシャリと握り潰した。

まただ。また同じ答えだ。

彼女が握り潰した物は共和国の属国……協力国と言う名で支配を受けている国の宮廷魔法使いからの返事だった。

もちろん今回も国家元首の名を使い掛けられるだけの圧力をかけた。

返答次第では宮廷魔術師の暗殺を暗に示して見せたのにもかかわらず、彼は自身の暗殺の可能性を受け入れて求めていない返事を寄こした。

『魔女を自称する者よ。この返事が気に入らないのであれば、この私を殺すが良い。だが私とて魔法使いの1人。三大魔女が作りし“魔”を冠することに対しての心構えは決して揺るがない。

相応しくない者にその冠を与えることなど出来ない。それは先人たる魔法使いたちの研鑽に対する冒とくである。それを私は許すことが出来ぬ。小国の魔法使いの矜持でもある』

ここまで遠慮も無く言い切られれば女性……マリスアンとて清々しい。

こちらも遠慮をする必要などない。望みどおりに殺すまでだ。

空気を読めぬ馬鹿者の始末を命じ、マリスアンはクシャクシャに握り潰した手紙を屑籠へ投げ入れた。

これで何国目か分からない。思い出せない。

どの国も自分の実力を認めることなく魔女の称号を与えない。

自分がどれほど共和国の為に魔法を使い戦場で勝利に導いたか……そのことを事細かに報告しているというのに認めない。頑なに認めない。終いには『人殺しの数を誇ることが魔女の条件ではない』とまで言い出す愚か者が居る。

ならば何を誇れと言う? 自分は攻撃を主とした大魔法の使い手だ。その魔法を使い、戦果を挙げることが自分に求められていることのはずだ。

それなのに、だ。

『大魔法を扱う者でもお主と彼女では雲泥の差がある。それが分かるかマリスアン?』

不意にその嫌な言葉が頭の中をよぎった。

大層偉そうなことを言っていたのは、最後……泣き叫びながら糞尿を溢れさせて絶命した魔法使いだ。ただ手足の先から植物の蔦で締め上げ砕いただけなのに。

『彼女の中では大魔法などついでだ。自身が求める魔法の頂を目指す過程で得た物の1つであろう。だから彼女はそれを誇らない。君と違ってな』

だからってプレートに術式を刻み続けることで魔女の地位を得らるなんておかしい。

それで良いのならと自分も勉強した。何枚かプレートに刻み新しい効果をもたらす魔法を披露した。

『これだよマリスアン。あと10年もすれば君は魔女へと至るだろう』

必死に学び世に出したプレートの評価はそれだった。

10年だ。10年もあんなことをし続けなければ魔女になれないと言う。もしかしたら10年後に同じことを言われるかもしれない。ふざけるな、だ。

力が欲しい。強くて誰にも負けず、誰も彼もを支配できるほどの力が欲しい。

だから彼女は強請った。力を。

だから彼女は妬んだ。魔女を。

『私ならばあんな名ばかりの魔女に決して負けない』

小国に居た天才的な魔女は罪人となり死んだという。

所詮そんな物だ。

力を誇示しないから飲み込まれる。

もっと強い力に飲み込まれてしまうのだ。

自分はそうはならない。何故ならばこれからも強い力を得て、ますます強くなっていくからだ。

必要なのは力だ。強い力だ。

それがあれば自分は何処までも強くなれるはずだ。

故に彼女は欲した……強者を。自分を強くするための材料として。

『強くなった暁には、私があの術式の魔女を殺して最強の称号を得られたはずなのに……死に逃げなんて本当につまらないわ』

何度となくマリスアンが胸の内で呟いていた言葉がそれだ。

叶うことのない頂上決戦……だからこそ彼女はその戦いを欲していた。

実現しないからだ。

ブロイドワン帝国・帝都帝宮内

「知らなかったぞ~。アイルローゼはいつから旦那さんのお抱えに?」

「僕も知らなかったわ~」

だが落ち着いて考えれば間違いでは無いんだな。

「シュシュもウチのお抱えか」

「あ~れ~」

隣に居るシュシゅの肩を抱き寄せてみる。

これが本当のお抱え魔法使いだ。

「旦那ちゃんの総取りだぞ~」

「確かに」

ノイエとその姉たちを得たら魔女クラスの魔法使いを独占してしまった。

「まあ魔女は先生だけだけどね」

「ん~。エウリンカもだぞ~」

「なの?」

あの奇人変人がか?

「あれはファシーも該当すると言ってたぞ~」

「へ~」

にゃんこまで。

『シュシュもよ』

「「……」」

耳の奥に先生の声が響いた。

言葉の内容よりもこちらの会話を盗聴されている事実に蒼くなる。

「確かに。シュシュも魔女とか名乗ったら?」

「え~。面倒だぞ~」

「何故に?」

「ん~」

さては反射的に面倒臭くなったな?

「シュシュが名乗るなら封印の魔女?」

「それっぽいぞ~」

「ならエウリンかだと魔剣の魔女かな?」

「それだけだぞ~」

シュシュもエウリンカも使える魔法が偏っているしね。

「ファシーは何だろう?」

「子猫の魔女だぞ~」

「それはどうだろうか?」

可愛らしくて怖さを感じない。

でもファシーの愛らしさは伝わると思います。

『狂乱の魔女ね』

「「……」」

まさかのツッコミまで!

ちゃんと戦ってあげて~! 何よりどうして先生はそんなに未来の猫型ロボを引き連れているの? もう青いタヌキの大群だよ!

「他に魔女を名乗れる人って?」

「ん~。どうだろうね~」

クククと首を傾げてシュシュが考え込む。

「と言うかファシーは何故に?」

僕が知る魔女の条件に該当しないような?

「あ~。あれが相応しいって」

「あれがか~」

なら納得だ。最初の魔女が言ってるならそうなんだろう。

「だったらカミーラとかもありじゃない?」

「カミーラの場合は~『私は魔法使いじゃない』とか言って~拒絶しそうだぞ~」

「納得」

姐さんなら間違いなくそう言うな。

「あん?」

僕らの傍で待機していたオーガさんが何故か振り返って来た。

「あの魔女がその小娘よりも強い奴と戦わせてくれると言ってたが……今上げた名前の中に居るのかい?」

「「……」」

先生。何勝手にそんな約束しているんですか? そんな楽しそうなネタを知ったら姉さんが確実にやるじゃないですか?

「居る」

「旦那君!」

まさかの断言に驚いたシュシュがこっちを見る。

動じるなシュシュよ。ウチのノイエを見なさい……もう弛緩し過ぎた猫のようにトロトロだぞ?

「やっぱりか。ならお前に言えばやれるのか?」

「うむ」

牙を見せながら笑うオーガさんに僕は努めて冷静だ。

何故ならばこの人の操作は意外と楽だ。それを理解していないシュシュがさっきから僕の脇腹を指先で連打して来るけどね。

「今回良く分からないがオーガさんのおかげで色々と助かっている。つまりそのお礼をするのはドラグナイト家の当主として当然の義務だと思う」

「分かっているじゃないか」

ご褒美がバトルで喜べる貴女の思考回路は理解できませんがね。

僕ですか? 現状トロトロノイエをこうして抱きかかえているだけでも幸せです。ご褒美ですね。

「ただし1つだけ問題があります」

「あん?」

「対戦相手が僕のお抱えでは無いんです。元王女グローディアの護衛なので少しばかり調整する時間が欲しいなって」

「……少し待てばやれるんだね?」

「出来ます」

ええそれは間違いなく。

「分かった。それで良いよ」

納得しオーガさんはまた正面を向く。

だが僕は内心でほくそ笑んでいた。

これは確実に客が呼べる。全貴族を集めて賭けをしてやろう。

もちろん胴元は僕だ。これで今回の出費は回収できるはず!

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