軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

にゃあひゃみゃ~!

ブロイドワン帝国・帝都帝宮内

「にいひゃま~!」

「旦那様~! 落ち着くんだぞ~!」

「許せんのだよ!」

「にゃあひゃみゃ~!」

これでもかとポーラの顔を変顔にする。

分かっている。これは単なる八つ当たりだ。

ポーラは……少し以上悪い気もする。と言うか悪いな。大人バージョンポーラを作り出さなければ宝玉の魔力が尽きているという状況を回避できた。しかし僕は平静な判断を下せる人だ。

大人バージョンポーラのおかげでマシュマロを退治することが出来た。その部分は忘れていない。

悪い部分と良い部分を並べた結果……ある意味で同点だ。変顔以上の罰はダメだ。

ただここにはポーラの姉が居る。公正な判断を姉に託そう。

「ノイエ!」

「もご?」

「判定は?」

「むもご」

「変顔継続でっ!」

「どうしてだぞ~」

もうこれでもかってぐらいの変顔をポーラの愛らしいフェイスで作り出す。

必死に止めている風のシュシュはそれを覗き込んで笑っている。

「これでトドメだっ!」

とびっきりの変顔をポーラにさせたらシュシュが耐えきれずに腹を抱えた。

勝った。良く分からんがとにかく勝った。

「あっ」

若干場の冷たさ……原因はポーラの大魔法のせいだろうが、こちらを見ている絶対零度の視線にはほんの少しだけ罪悪感を覚えた。

だって怖い感じのが2人分こっちを見ているんだもん。流石に気づく。

「馬鹿は本当に緊張感を持たない」

「その意見には同意だな」

一瞬即発で睨み合っていた魔女とオーガさんが仲良くこっちを見ている。

たぶん僕の背後に何か居るのだろう。

そっと振り返ったら……売れ残りの2人が横たわっていた。

争いを忘れ睨んでしまうほどあの売れ残りから、同性の何かをくすぐるオーラでも出ているのか?

「あの売れ残りに何か御用でしょうか?」

ズキズキズキズキッと、気のせいか4人の胸を抉る心的ダメージ音を僕は聞いた気がした。

あっ……この場の既婚者って。うん。忘れよう。

ポーラはまだ未成年だけど、ノイエとシュシュは僕のお嫁さんだしね。

それ以外? 不思議なことに伴侶を得ていない自由主義者な人たちばかりだね。うん。

「あはは~」

どうにか笑って誤魔化そうとするが、四方から向けられる冷たい視線がとても辛いです。

「……独身者様たちのことを悪く言ってしまい大変申し訳ございませんでした」

耐えられず僕は全ての視線に頭を下げていた。

「まあそんなにカッカしないで欲しいのよね」

完全にキレたであろうホリーが魔女に襲い掛かったが……その実力の差は歴然だ。

あっさりと全ての攻撃を封じられ、床の上を転がることとなった。

「今回は私もちょっとは罪悪感を感じているわけだしね」

告げる言葉とは裏腹にその声は何処か軽くて楽し気だ。

故に彼女の言葉を誰も信用などしない。

「だから今回だけはこの後の種明かしを先にしてあげる」

「どういうことよ?」

全身を蜘蛛の糸のような物で包まれたホリーが顔だけ出して魔女を睨む。

「ん~? どう説明すれば良いのかしらね」

クスクスと笑い椅子を取りだし魔女はそれに浅く腰を下ろした。

「あの外に見える白い大きなのが居るでしょう? 今は弟子の魔法で凍り付いているけれど」

「……ええ」

「あれって実はまだ生きているのよ」

「えっ?」

組んだ膝に肘を置き魔女は頬杖を突く。

「あれは始祖の魔女が作ったある種究極の暴走魔道具なのよ」

刻印の魔女は内心で苦笑する。

あれは決して世に出してはいけない恐ろしい魔道具なのだ。

「殺人鬼。ネズミ算って知ってる?」

「知らないわよ」

「そう。まあ簡単に言うと、一つの物がどれほど増えるのかっていう恐怖を教える数式ね」

「1つの?」

「ええ」

答えて魔女は息を吐いた。

「あれの恐ろしさは巨大な体でも強い力でもない。ただひたすらに体積が増え続けるのよ」

「……」

相手の言わんとしていることを理解しホリーは震えた。

「速度は?」

「昔計算したんだけどもう忘れたわ。ただ覚えているのは」

クスリと魔女は笑う。

「3日でこの大陸では人の住む場所がなくなり、7日もあればこの星で暮らせる人が居なくなる」

優雅に両手を広げて魔女は言葉を続ける。

「お菓子に溺れて死ねるという……夢のような魔道具なのよ。問題は増殖する速度を制御できずに動き出すと延々とお菓子が増え続けるから『危険』と判断して封印したんだけどね」

しかしその封は解かれあれは外に出ている。動いている。

「人間の欲深い感情がこの世界を亡ぼすさまを見ながら死ぬのも悪くないでしょう?」

あっさりとそう言い切った魔女の言葉に魔眼の中枢は沈黙する。

しかしすぐにそれが響いた。笑い声だ。

発しているのは床の上で転がるホリーだった。

「何がおかしいの?」

「ええ。だって貴女が言ったのでしょう? 『この後の種明かしをする』って。まさか滅亡話で終わったりしないでしょう?」

「……本当に頭の良い人間は嫌いよ」

若干拗ねて魔女は腕を組んだ。

「もちろん対応策は存在する。で、それの準備はもう終わっている」

「何処にあるの?」

「空の上よ」

指を立てて魔女は自分の頭上を指さす。

「私が酔狂でロボをあんな姿にしたと思うの?」

「アルグちゃんなら全力で頷いているわね」

「後で殴る。殴ってから股間を集中的に蹴る」

「ノイエが敵に回るわよ」

「止めてよね」

それは厄介だ。あの娘には冗談が通じそうで通じない時がある。

何よりリアクションが謎だ。基本暴走する。

「まああの馬鹿への復讐は後で考えるとして……ロボと呼んでいるあれの体が、あのお菓子の魔道具を消滅させる最終装置なのよ」

ただ中身の記憶媒体を消滅させるのはちょっと惜しい。だから別の体を用意した。

「つまり?」

「そうね」

ホリーの問いに魔女は上に向けていた指を軽く振った。

「貴女たちはある意味で最恐の魔道具を手に入れていたのよ」

本来ならば使いたくなかった対処法だが仕方ない。それを選んだのは人の業だ。

「天から火の雨が降り注いで全てを焼き尽くす。過去の私はそれを『メギド』と命名したわ」

苦い思い出しかない魔法だ。

『大規模消滅魔法』

一切合切を焼いて消してしまうことを目的に小型の太陽を作り出そうと心血を注いだ結果、それはそれで軽く禁忌に抵触して封印即決定した魔法だ。

ちょっと火力の限界の向こう側に挑んだだけなのに酷い話だ。

「あれが発動すれば全てが消えるわ」

軽く肩を竦める魔女にホリーは全てを察した。

「それはつまり帝都も?」

「あ~うん。ギリギリ大丈夫のはず。それ以上は拡散しないと思うけど……魔法で生じた火災も被害に入る?」

刻印の魔女の言葉に、黙って聞いている者たちが驚き目を剥いた。

「別に良いんじゃないの? 火山が噴火したと思って帝国の住民には諦めて貰えば?」

床の上から聞こえて来たホリーの声に、黙って聞いていた者たちが驚き目を剥いた。

「そうよね。うん。天災なら仕方ないわよね」

何故か『天災』で話を纏めそうな2人に対し、その場に居た全員が静かな視線を向けた。

『似た者同士か』と諦めつつ。

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