軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

年上は嫌い?

旧フグラルブ王国領・地下通路

「待てやコラ~!」

「うふふ。待ってあげないんだから~」

何故か軽い足取りで走るポーラは、腕を肘の所で曲げV字にした漫画とかで見る少女走りだ。

その割には本気で早い。僕がリグと言うハンデを背負っているからか? 追いつける気がしない。

「ノイエ」

「はい」

「リグが重いから」

「あん?」

場の空気が凍った。竦んで足が止まった。

違うんですリグさん。ちょっと息継ぎに失敗して言葉が足らなかっただけです。だからノイエ、僕を見捨ててどこに行こうとしているの? 何その見えない蝶々を追う感じの動きは?

「リグの大きい胸が当たって僕の走る気を削ぐのです。だから代わりに運んであげて」

「「……」」

若干ノイエの目が冷たくなった気がする。

何故か逃げているはずのポーラが唾棄してこっちを睨みつけた来た気がする。

どっちに転んでも厄介だな! 僕か? 僕が悪いのか? なあ!

「……分かった」

納得はしていないと言った感じでノイエがリグを抱く。お姫様抱っこだ。

ただし唯一褒められたリグは、ノイエの腕の中から上目遣いで僕を見る。

「……重いのはこれだけだから」

「分かってるって。リグのは立派過ぎるんです」

「……うん」

真っ赤になってリグが押し黙る。

代わりにいつもの数倍感情を無くしたノイエの目が僕を見た。

「大きいのが好き?」

「小さいのも普通のも好きです。でも特にノイエのが好きです」

「……んっ」

アホ毛に力が戻ってノイエも走り出す。

「待てや! この悪魔~!」

「あ~はいはい。巨乳ロリ好きのお兄様が追いかけて来るわ~」

「棒読みで何を言っているのかな? 君は?」

「どこぞの阿呆の真実」

「良し。泣かす」

泣くのがポーラであったとしても一回は泣かすと心に決めた。

「だったら捕まえてみろや~! この巨乳ロリ好きが~!」

「ファシーは違います~! ただのロリです~!」

「……そっか」

立ち止まり迎え撃つ姿勢を見せた悪魔が、ポンと手を叩いた。

「姿と言うか見た目で誤魔化されていた。ババロリ派だったのね。お兄様は」

「泣かす!」

何故かリグが反応した。ノイエの腕の中で大暴れだ。

「時間が止まったままだから老化していない。だからボクたちはまだ若いまま」

「肉体の老化は防げても精神の老化は防げないのよ」

『やれやれ。この無知共は』と言いたげに悪魔が肩を竦める。

「老いた精神は肉体をも老いさせるのよ!」

「いやぁ~!」

らしくない悲鳴を上げてリグが脱落した。

ノイエの腕の中でギュッと身を丸め、『若いから、ずっと若いままだから』と呟いている。

あのリグですら老いは敵だと言うのか?

「アルグ様」

「何でしょう?」

「年上は嫌い?」

君は時折僕を殺そうとする質問を投げかけて来るよね? これをホリーが聞いてたら、返事1つでまた出て来て僕は自分の肉体に年上の素晴らしさを叩きこまれるよ?

「ノイエ」

「はい」

「僕は年齢なんて関係ないと思っています」

そう。愛があれば年の差なんて気にしない。気にしたら負けるのです。

「僕の前で若々しくしてくれることに感謝するのです」

きっとこの世界に神様が居たら僕は聖者判定を受けると思います。

「アルグ様」

「はい」

「……嘘はダメ」

やはり全力で殺しに来ていますか? そして絶望をしていたリグさんが虚ろな目で僕を見ているのですが! 何この地雷! 本気で怖い!

「僕は歳など関係なく好きな人を愛せる男になりたいです!」

「嘘はダメ」

「ノイエ~!」

足止めには成功した。最悪は魔法の使用まで考えていたが、相変わらずあの馬鹿者たちはギャグとコントの世界で生きている。おかげで助かった。

1人先行する魔女は通路を抜けきった。

ポッカリと広がる空間には見覚えがある。確かここは……。

軽く指を鳴らして壁の魔道具に魔力を流せば照明が復活し明かりが灯った。

「なるほどね。と言うことは……あのロボは8号ロットか」

古い記憶はだいぶ色あせていたが、どうにか思い出すことが出来た。

1人広い空間を確認する魔女は、ふと何かを見つけて足を止める。

人が居た。壁に寄りかかるようにして床に座り込んだ……衣装の様子からして女性だろう。

僅かに残る皮膚の一部から褐色が伺える。つまりはこの国の関係者だ。

《馬鹿よね。この場所は私たちの廃棄場所だったのに》

思い出した記憶は冷たい現実だった。

過去に製作……遊びで作った適当な道具やネタ過ぎて世に出せない物を一か所に集め保管していた。

それがこの場所だ。あのロボが居たこともようやく理解できた。

《1号から7号までのロットは全部天空城に配備した。でも8号だけはこの場所に置いた》

本来ならロットごとに複数台生産したロボであるが、唯一の例外が8号ロットだ。あれだけは複数台生産していない。

《ここで私が天空城を作った時に助手としたけれど……本来の利用目的は違う。だとするとあれがここにあるはずよね?》

忌々しい始祖の魔女が作り出したあのチート魔法は8号ロボと対となっているはずだ。魔法を使い捜索することを考えたが、その前に馬鹿な彼が部屋の中に飛び込んできた。

「落ち着こうリグ。大丈夫。僕は今のままの君を愛している」

「年上でも?」

「愛している」

「アルグ様。嘘はダメ」

「ひぃぃ~」

何があっても安定した馬鹿どもに魔女は軽く鼻で笑っていた。

ノイエさん。そろそろ落ち着こうか? リグの目がヤバいから!

解放され床に降り立ったリグがバルンバルンと胸を揺らして僕を追って来る。

色んな意味で恐ろしい追跡者だ。下半身があれしてちゃんと走れない。

「何でまだ馬鹿してるのよ?」

「爆弾投げ込んだ元凶がそれを言うかな!」

「はん。笑わせるなって。どうせ『年下のノイエが一番!』とか考えているんでしょう? 見え見えよ」

そりゃそうだ。僕の中ではノイエは不動の一番だ。

年下の可愛い……それか!

「リグはノイエのお姉ちゃんだから年上なのは当たり前です! でも僕が一番愛しているのは妹のノイエです。年下のノイエです!」

「うん。本当」

コクコクとノイエが頷く。

とはいえ僕は決して年下が好きなのではなく総合的な判断でノイエが好きなのです。はい。

「それは嘘」

「何に対してはなった言葉でしょうか! ノイエさん!」

「……お腹空いた」

口を開きかけたノイエがお腹を押さえて回答を拒否した。

「つまりノイエが一番だから? 年下のノイエが一番だから年上は嫌だと?」

「だから嫌とは言ってません。言ってないよね?」

「はい」

コクコクとノイエが頷く。

「仮に百歳年上でもリグたちが好きだからね。もちろん魔眼の中で僕のことを好きだと言ってくれる人も同じです」

「……分かった」

怒れるリグが治まった。

「で、終わった?」

「いやまだだ」

何かが終わったかもしれないがこれから始まりでもある。

呆れた様子でこっちを見ている悪魔に対し、僕はポキポキと指を鳴らしながらゆっくりと歩き出す。

絶対に泣かす。怒るリグとかめっちゃ怖いんだからな!

「何よ?」

「今から始まるのは、お前へのお仕置きだ!」

これは決定事項である。

「面倒臭い。これが終わったら秘蔵している魔女のローアングルコレクションを見せてあげるから黙りなさい」

「はいっ!」

返事は短く元気良くです。

決して買収などされていない。ただ秘蔵と言う言葉に弱いお年頃なんです。

心底呆れた様子で頭を掻いた悪魔が、深いため息を一度してから体ごと視線を巡らせる。

釣られて僕も視線を向けると……そこには座ったままの姿勢で風化し、骨と化している女性が居た。

「まず彼女が誰か……そこからかしらね?」

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