軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本当に君はズルい

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領地下隠し通路

「兄さん。小さい頃に『人の話は最後まで聞きましょう』とか言われんでしたか?」

「あん?」

クルンクルンと左右に頭を回転させているロボが寝言を言って来る。

面白映像な状況になったのは、我が神器ハリセンさんが炸裂し頭部が回転を始めた結果だ。

実に良いスイングだった。あの瞬間だけならメジャーでホームランが打てる気がした。

「……」

ただリグが物凄く恨めしそうに僕を見ている。

両腕で胸をガードして……と言うか痛くて押さえている感じだ。若干睨む目も涙目だ。

ロボへの苦情から流れる動作で繋いでいたリグの手を離し、ハリセンを召喚して振りかぶる……一連の流れとしては完璧だったが唯一の失敗は彼女の胸が大きすぎた。十分の間合いだと思ったのに振りかぶろうとしたハリセンが彼女の胸を下から上へと振り抜く格好になった。

リグの苦情は後で聞く。物陰に移動して土下座も辞さない。

だが案内すると言って袋小路に連れ込むロボは信用ならん。何よりコイツはあの悪魔の申し子であった。

「何を企んでいるロボよ!」

「だから人の話は最後まで……ってお嬢様に怒られるのを誤魔化そうとしてませんか?」

気づくな。ツッコミの人間はボケに対して反射的に動いてしまうものなのだ。

何より怒ったリグが結構怖いって僕もノイエも学んでいる。

見ろノイエを! あんなに嫌がっていたのに自ら進んでポーラを連れて着ている服を直させているぞ? こっちを見もしないで!

「言い訳など聞きたくない! 僕は真実がっ……ぐぅ」

「うん。ボクも言い訳は要らない」

脇腹を抉って来たリグの拳に僕の呼吸が一瞬止まった。

あの~。お医者様が人体の急所的な部分を殴るとかダメだと思います。僕はそう思います!

「ねえ? ボクは悪いことをしたら謝るべきだと思うんだ。どうかな?」

「……分かったリグよ。ちょっとこっちに来なさい」

涙で滲む視界を拭い、立ち上がった僕はリグの手を引いて来た道を戻る。

ロボとノイエたちには壁の前で待っててもらい、僕はリグに対して最大限の謝意を見せた。土下座してからの縋りつきだ。

本当にごめんよ~。

呆れつつも許してくれるリグには感謝である。ついでにそっと抱きしめてリグといっぱいキスをしておく。

リグはつい胸に視線が向かいがちだけど、その顔立ちは奇麗と言うか可愛い部類だ。

南国少女感溢れる格好をしているからか、余計に可愛らしさが倍増しているしね。

「もう。本当に」

何度目かのキスをしたらリグが頬を真っ赤にして息を吐いた。

「こんなことで許されるのは今だけだと思う。ボクたちだって君とずっとキスしていれば慣れてしまうと思うから」

「その時は新しい刺激を提供できるように努力します」

「……本当に君はズルい」

恥じらう仕草が可愛いからもう一回抱きしめてキスをした。

「自分思うんです。兄さんが一番足を引っ張っていると」

「何おう?」

本当に失礼なロボだな。僕の何が足を引っ張っていると?

今だってリグの機嫌を見事に直し、恋人繋ぎでお互いの手を握っているのだぞ? ただ若干不機嫌になった様子のノイエが抱き着いて来て……ノイエさん。キスしてくれるのは嬉しいのですが、両手で僕の頭を無理矢理動かさないで。首がグリッとなっちゃうから。

「こう真面目に出来ないんですか?」

「あ~。僕って真面目とか嫌いなんだよね~」

「今だけで良いんですけど?」

「僕ってばシリアスが嫌いな男なんで」

「少しは愛しましょうや~」

今にも泣きだしそうな声でロボが嘆く。

ん~。だってしんみりした空気ってさ、何か嫌じゃん。

何より僕は死ぬ瞬間まで笑っていたい人間である。

「まあ頑張れロボよ。同情はする」

「頑張るのは兄さんの方です。頑張って~な」

「諦めろ。僕はこんな人間だ」

ガクッと両肩を落としロボが行き止まりになっている壁の前に立った。

長い手で壁全体を撫でて……何かを確認している。

「変な仕掛けは無いみたいです。帝国軍はここを見つけられなかったみたいですわ~」

「見つかった場所とかあるの?」

「あるかもしれませんな。ただし正規の入り方をしないと別の場所に飛びますんで」

「へ~」

手の込んだ仕掛けだな。

「お嬢様。こっちに」

「ん」

手を繋いでい都合リグが動くと僕が動く。そして僕に抱き着いて居る都合、ノイエが付いて来る。

「兄さん。『もげろ』と言われません?」

「面と向かって言われたことなど無いな。僕が思うことはあってもだ」

「兄さんが……もういいです」

何かを悟ったのかロボが諦めた。頑張りの足らないロボだ。

もげろをロボに教えている悪魔も大概だがな。

アイツはロボに何をさせたかったんだ? コントか? 漫才か?

「その突起に掌を当ててください」

「ん」

言われるがままリグが空いている手を押し付ける。

ガゴッと低く鈍い音が響いて、壁がグググと音を発しだした。

暫く待つと壁が左右に割れて道が出来る。

天井っぽい部分が淡く光り出し、その光を追うように視線を奥へと向ければ……結構長い道だと判断できた。先が見えん。

「ここから先は一本道です」

出来上がった道の横に立ちロボが僕たちの方を向いた。

「奥に何かあると思いますが何があるのかは自分らも知りません」

「何で?」

「ここから先は『生物』しか入れないんです」

無機質な目でロボが僕を見た。

「ホムンクルスは入れますが、自分はこの通りなんで入れないんです」

「案内無しで行けと?」

「真っすぐ一本道なんで大丈夫です。それは保証します」

恭しく頭を下げて来るロボに対し、まずポーラが先陣を切って歩き出す。

あの悪魔を宿しているからと言ってポーラはまだ未成年の女の子だ。1人では行かせられない。

「こらこら待ちなさい。ポーラ」

「うふふ。兄様早く~」

「今になって湧いて出たか!」

リグを抱き上げ急いでポーラの姿をした悪魔を追う。

『……様に宜しゅう……』と、全速力で走り出した僕の背後からロボの声が聞こえた気がした。

(C) 2021 甲斐八雲