軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

腰に力が入らない

「ごめんなんだぞ!」

「……」

全力で頭を下げるシュシュに対し、流石のセシリーンでも表情は暗い。

胃液で汚れた自分の胸元がヒリヒリとして痛いし何より不快なのだ。だから機嫌も良くはない。

指で引っ張り胸に布がつかないようにするのが、不快からのせめてもの回避法だ。

時間が経てばすべて回復するのが魔眼の中なので……それでもやはり辛い物は辛い。

「シュシュも服を脱いだら?」

「……それは嫌だぞ」

せっせと死体を分離して隅に追いやっているレニーラは、これまた酷い状態のメイドに声をかける。ただシュシュはモジモジと身を震わせると恥じらいを続けた。

「レニーラとかなら良いんだけど、他の人に肌を見られてくないぞ」

「あ~。分かるかも」

『その恰好で?』と言いたげなシュシュの目に対し、下着姿と言っても過言ではない格好をしたレニーラは、汚れた両手をエウリンカのスカートで拭う。

死体の割には反抗的な視線を向けて来る奇人を睨みつけて黙らせた。

「私の場合はここまでは大丈夫。これ以上は出来たら旦那君にしか見せたくないかな。あっでもシュシュの言う通り、シュシュたちになら見せても平気かな? 何でだろう?」

首を傾げるレニーラに、少し布を引きすぎて胸元を見せているセシリーンが苦笑する。

「きっと同じ人を愛しているからどこかで共感するものがあるのよ」

「納得」

「だぞ~」

かく言うセシリーンとて2人にならば裸を見られても大丈夫だ。これが気心の知れた者でないのなら不快に思い、異性であろうものなら悲鳴がてら声で相手を殺してしまうかもしれない。

「何だかんだで私たちは彼とノイエの家族になっているのよ」

「納得」

「だぞ~」

で、家族ではないエウリンカの胴体を踏んでレニーラは相手を見下ろした。

「そもそもこれがアイルローゼに憑りつかれたからこんなことになったんだよね……何処に捨ててこようか?」

「……待って欲しい」

弱々しい声が響いて来た。

いつもとは違いいきなり液体では無かった。だから痛みで意識が朦朧とする。

手足を切り落とされ激痛に苛まれるエウリンカは、脂汗をしたたり落としてレニーラに顔を向けた。

「君だってあれに絡まれたら」

「引き千切って逃げる!」

「それが本当に出来ると?」

「……出来るから」

視線を遠くに向けてレニーラは否定した。説得力はまるで無かったが。

「まあ今回は許してあげよう。代わりに少しは私たちの為になることをしろ」

「……何を?」

「ん~」

肩から先の両腕と股関節から先の両足を失った状態のエウリンカが、とても働けるとは思えない。正直置物だ。

ただ苦痛に表情を歪ませるエウリンカは生来の美貌もあってどこか妖艶に見える。

しゃがんでレニーラはエウリンカの顔を磨いてみた。やはり美人だ。

「何か?」

「……エウリンカって美人だよね?」

「っ!」

舞姫の声にエウリンカは全ての痛みを忘れて目を剥いた。

その様子にニヤリと笑ったレニーラは両手を構える。

「胸も大きいしね」

「待って……自分はその手の行為は……」

「あはは~。ちょっとエウリンかで遊んでみようか~!」

「止めてっ! 止めてくれ~!」

手足を失っているエウリンカを捕まえたレニーラは彼女を玩具にし始めた。

最初は血なまぐさい状態に距離を置いて居たシュシュはじわじわと接近し観察を始める。

歌姫は静かだ。とても静かに耳を澄まして全ての音を拾っている。

「実は前から色々と調べたかったことが」

「何を……何を~!」

「うわっうわっうわっ」

我慢できずに接近したシュシュは余りの行為に手で顔を隠す。

ただ指の間から全てを隈なく見つめる。

「止めて……本当に……それは無理だから……」

「あは~。大丈夫」

手を止めてレニーラは笑う。

「無理と思った所からが始まりなんだよ!」

「いやぁ~!」

部屋の隅でそれはジッと見つめていた。

レニーラの手によって玩具にされているエウリンカがどうなるのか……気になって止まらない。

どんな状態でもアイルローゼの好奇心は止まることを知らないのだ。

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領

「ねえロボ」

「はい姉さん。なんでしょう?」

僕がリグを一生懸命慰めているとホリーが動き出した。

若干視線が冷たい気がするが気のせいだ。僕はリグを慰めているのだ。

何故か彼女は頬を赤くして熱い吐息を吐き出しているが、僕のマッサージが効果を発揮しているに違いない。

リグの肌ってノイエの次に素晴らしいかもしれない。プリッとしてて触り心地が良い。

「……魔道具の鑑定が出来るって聞いたけど?」

「はいな。出来ますよ」

「なら鑑定してくれる」

僕の腕から離れてホリーが緩やかに両手を広げる。

「何をでしょうか?」

「私よ。私自身を鑑定して欲しいの」

「……人を相手には無理ですわ」

ロボの言葉にホリーは微かに笑った。

「ならこの目は? 魔眼と呼ばれる……魔道具なのかしらね?」

「魔眼ですか? 魔眼は異世界から渡って来た物と創造主様が作った物とが存在してますが」

「なら鑑定してみて」

「はいな」

ホリーにロボが手をかざす。

《鑑定》

ピピピと電子音みたいなものが響く。ロボの目が点滅している。

《範囲拡大》

止まらない電子音とリグの吐息。

アカン……つい本気でマッサージを続けてしまった。

《確定》

目の点滅が止まった。

「その左目の魔眼は確かに創造主様が作った特別な物みたいですわ~。自分も随分と長いこと生きてきましたがそんな手の込んだ物を見るのは初めてです」

ロボが大興奮だ。

と言うか本当にノイエの魔眼は左目だけになっているらしい。つまり右目はポーラで確定だ。

「それとその頭のは何です?」

「……」

ロボが指さす物はノイエのアホ毛だ。

「初めて見る反応ですわ。しいて言えば魔剣の類に似てますが……似ているだけで別の物です。もう新しいカテゴリーとしてジャンル分けした方が良い気がします」

「かて? じゃんる?」

ロボの言葉にホリーが首を傾げる。

地球産の単語を使うな。どう説明すれば良いんだろう?

「魔剣とは別の本棚を作って本を入れる感じ」

「何となく分かったわ」

流石お姉ちゃんだ。だからそんな冷ややかな目で見ないでください。

全ては甘えてくるリグが悪いのです。男なんてものは首から下は別の生き物なのです。

「あとは……」

あと?

ロボの手がフラフラと動く。

「何て言うかこう魔力があっちの方に流れてます。目に見えない何かが繋がっているような?」

「あ~。それはその体から魔力を強奪している悪い人が居るんです」

「そうでっか。なら納得ですわ」

悪魔がノイエから常に魔力を奪っていることも分かった。あの野郎……いつか泣かす。

「ならこの体はそれぐらい?」

「はい」

「じゃあ次いでそこの小さいのに無駄に大きな肉の塊を鑑定してもらえるかしら?」

ズンッと一気に場の空気が冷たくなった。

お怒りだ。お姉ちゃんの怒りは大気の怒りだ。大気ですら恐怖で冷たくなるのだ。

「ささリグ。ロボに鑑定してもらおうね」

そっとリグを立たせて送り出すと、彼女は砂の上でペタンと座ってしまった。

「……腰に力が入らない」

「へぇ~」

あきませんて!

咄嗟に反応して今度はホリーを抱き寄せてマッサージを開始する。

日頃大変迷惑をかけているお姉ちゃんに対し奉仕の心で、ご奉仕です。不機嫌だったお姉ちゃんもマッサージをすると直ぐにトロトロに……はて? お姉ちゃん。今日は僕がマッサージする日であってお姉ちゃんからの施しは要りません。要らないの。要らないんだって! た~すけて~!

「あの~兄さん方? お嬢様を鑑定しても宜しいのでしょうか?」

ロボのツッコミが何故かドンドン遠くなる。

ちょっと本気になってしまったホリーに引きずられ……僕らは物陰へと消えて行った。

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