軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『呪い』と

ブロイドワン帝国・旧フグラルブ王国領

リグの発想は悪くなかった。一応念のためにロボに『失われた臓器の複製は可能か?』と問うてみたが答えは『NO』だ。ロボが言うには使用する血肉の情報はその時の物を基本とするらしい。よって現在内臓が足らない義母さんの血肉を使用しても内臓の足らない肉体が出来てしまうのだ。

僕のことを考えてくれたリグの頭を撫でながら会話を続ける。

ロボが義母さんに興味を持ったので、簡単に内臓が足らない人だと説明をした。

『内臓が足らなくて良く生きてますな~』と失礼なことを言ってくるロボに嫌がらせで砂を掛けつつ、『実は……』とユニバンス王国のトップに入る秘密を打ち明ける。

たぶんと言うか確実にダメだろうと予想していたからだ。案の定ロボの返事は想定内だった。

『あきませんて。そんなん血肉で作ったら何が出来るか分かりません。下手をしたらとんてもない物が出来上がって創造主様が大喜びしますって』と言われた。

今度は何処に居るのか分からない悪魔に向けて砂を投げておいた。

「まあ正直ホムンクルスは管理が面倒なんですわ」

「そうなの?」

「はい。フラスコの中で培養し育てるモノですから、随時メンテナンスしないと腐るんです。フラスコ……瓶の外に出して良いのは36時間とか言うてましたわ~」

この世界の時間的概念って稀薄なんだけどね。

時計が無いから仕方ないんだけどさ。

「この世界で時計って貴重じゃなかった?」

「ああ。確かにそう言ってましたな。お日様の傾きで人は十分に暮らせるとかで必要ないって。ですがイーマ様は自ら時計を設計しお作りになって使ってました」

やはり作っていたのかあの悪魔。

「何でもちゃんと計れないと、いつの日にか出来るであろう『ラーメン』が大変なことになる言ってました」

追い打ちの砂は宙を舞ってまた地面へと戻った。

誰が作るんだよ? インスタントラーメンなんて?

その為だけに時計を作るのも凄いがな。

「まあ最初に1個作ったら、後はこう砂を詰めた瓶を逆さに振る物を作って」

「砂時計かよ!」

「そうそう。そう言ってましたな~。忘れんように刻んどこ」

何に何を刻むのかは知らんが、忘れてしまっても良いと思うぞ?

ただ時間制限と言うのが大変に気になる。リグたちも何だかんだで24時間で戻っているし……まあ外に出るのには魔力の都合とか言っていたけどね。

「ねえロボ」

「何でしょうか?」

僕がちょっと考え事をしている隙に今度はホリーが口を開いた。

「女性の体なら子供は作れるの?」

「無理ですって。肉体言うても本当に形だけなんですわ。確かに血液や体液などまで完璧に複製されますが、それだけです。姉さんの隣に全く動く気配のない自分の姿かたちをした死にたてほやほやな死体が転がっていると思って貰えると想像しやすいと思います」

「……つまり死んでいると?」

その問いにロボが自分の顎を撫でる。

「死んでいるという定義が難しいですわ。人ってどうしたら死んだってことになるんです?」

「……」

何故かホリーが黙ってしまった。

「ボクら医者は心停止と瞳孔の拡大等で判断する」

「お嬢様が立派なことを……ほんまオイル出そうですわ」

だから目頭を押さえてもオイルなどは出ない。

と言うかボケ倒ししてくるロボだな? 誰の仕業だ? あの悪魔か!

「ならお嬢様。死んだと判断してから生き返った人の話は?」

「確かにある。死亡判定をしてから生き返った事例は。でもそれは医者の判断が甘くて」

「甘くて心音を聞き逃すんですか?」

「……」

ロボの言葉にリグも黙る。

確かに心臓とは無意識に動き続ける臓器だ。この音が止まり続ける状況を人は死亡と言う。

「脈が2・30秒も止まれば普通死亡です。普通なら死んでます。ですが時折その状況から戻って来る人も居るんです。何か不思議な力を貰ってくるそうですが」

「“祝福”だね」

僕やノイエ、ポーラも持っているチート能力だ。まあ能力で言えばノイエの方がチートだけどね。

僕の場合はドラゴン限定だし、それ以外は全く役に立たないしね。

「今はそんな呼ばれ方をされてるんですか?」

「昔は違うの?」

「どうでしょう? 少なくともここにお国が存在していた頃は、お偉いさんたちはこう呼んでました」

『呪い』と。

砂の上で大の字になり、瞼の上から右目を触りながら刻印の魔女はそれを聞いていた。

骨董品の割には余計なことまで覚えている。挙句に誰が作ってやったのかも忘れてペラペラと語ってもいる。本当に厄介だ。後で殴り飛ばして余計な記憶を抹消する必要がありそうだ。

ただ今回は特別に許す気で居るが。

「なあチビ?」

「……あまり話しかけないで欲しいんだけど?」

「お前が荷物袋を持っているだろう?酒を寄こせ」

「全く」

身を起こしゴソゴソとエプロンの裏に手を回しワインの瓶を取り出す。

それを投げ与え、ポーラの姿をした魔女はまた横になった。

意識を向けてロボの言葉に耳を傾ける。

懐かしい言葉だ。今は『祝福』と呼ばれているが、本来のあれはそんな物ではない。どう見ても呪いだ。

死の流れに一度弾かれた者が強制的に押し付けられる呪いでしかない。

『あれのメカリズムを解明しようとユーアの馬鹿は色々と酷いことをしたわね』

始祖と呼ばれる魔女がした行為は人体実験だ。

人を殺して生き返らせ、そしてあの呪いがどうすれば得られるのか? どうすれば望む力を得られるのか? そればかりを研究していた。

『結局それがダメで天空城から天界へ攻め入ったんだけどね』

懐かしい思い出だ。あの時作った天空城は今どうなっているのか?

……気にしたら負けだ。良い女は過去を振り返らないものだ。騒ぎになっていないからきっと海上にでも墜落して魚の巣にでもなっているはずだ。

出来たらそれが良い。黒歴史などは海の底に葬るに限る。

「どんな力だって受け取る方の気分次第なのよ」

「何か言ったか?」

「飲み過ぎよ」

「はんっ! こんなの水だよ」

「そうね」

アルコールの分解速度が早ければワインなんて水にもなる。遅ければ酒となって酔うのだ。

『だからこの世は面白いのだけれどもね』

思い通りに行かないことも含め、それが人生なのだ。

色々と話が脱線しているが……正直日が沈むのを待っている状態だから間違ってはいない。

夜になったら隠された魔道具の発掘が待っている。それまで待機だ。

だから会話が続くよ何処までも、だ。

「フーラー所長は……最終的には憑りつかれてしまったんでしょうね。『自分なら出来る』と思い込むことで研究を続けたんですわ」

方向転換が続いて気づけば話はリグの治療魔法にたどり着いていた。

時折ホリーが思い出したかのようにロボに質問するが、後は終始口を閉じて考えている。

「何で不可能に挑んだの? やっぱり名声?」

「あ~。最初はそれやと思います」

「最初は?」

何か難しそうな様子を伺わせロボが自分の頬を掻く。

動きはまるっきり人のそれだ。見た目はアニメの巨匠のロボット兵だけど。

「奥さんです。彼女が病気になってから所長さんは人が変わったように……。あれは風土病ではない他所からの病気でした。だから薬が効かずに奥さんはどんどん弱うなりましてね。今にして思えば王国からの魔道具鑑定の依頼からケチが付いたんですわ」

「と言うと?」

「はい。いつも奥さんが王国との窓口になってたんです。奥さんは前王の庶子でしたから」

「……」

ええっと……それは……ノーコメントで。

絶対に厄介なフラグにしか見えん! どっちに転んでも、リグには王家の血が流れているってことか!

「いつものようにお城へ行って魔道具を引き取って来たんです。それからしばらくして蒼い顔して倒れたと聞きました。それからじわじわと」

僕の手をギュッとリグが掴む。

自分の母親ではない会話なのに……医者として優秀なのにリグは根っこが本当に優しい。

優しく包み込むように抱きしめと彼女の首にキスをした。

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