軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ようやく抵抗を諦めたね?

世の男性諸君に問いたい。

僕の声がその胸に届いたのなら、心の目を閉じて深く考えて欲しい。

お嫁さんって普通……旦那を組み敷いた挙句に上半身を拘束して猿ぐつわを噛ませますか?

今の僕はそんな状態です。そしてそれで終わらないのが我が家のお嫁さんです。

追い打ちまでがセットで付いてきます。追い打ちです。あっ

「お~。ようやく抵抗を諦めたね?」

「……」

僕に跨り椅子にしているレニーラに屈した。

何かズルい。腰の動きが別次元で……とにかく凄い。

「で、終わったの?」

「うん。もう旦那君は逆らえないから」

全ての行為を冷静に観察しているのは我が家の妹様だ。

中身が違うがその表情が心底呆れ果てていて、何より軽蔑されているような気がしてくる。

違うんだ。普段のお兄ちゃんはもう少し戦えるんだ。

今日は連戦からの疲労で……相手はノイエとレニーラでしたね。

本当に底なしだな! この舞姫!

何なの? 舞姫ってアダルト界でも天下を取れる人の称号なの? 教えてエロい人! あっ

「旦那君が良からぬことを考えている気配がする」

気のせいです。もう勘弁してください。

「で、質問しても良い?」

「ほ~い。ただしさっきの条件を忘れないでね」

「了解」

その条件を忘れてください。僕が死にます。

「それであの魔女が殺して回る人間って?」

悪魔からの質問にレニーラが腕を組んで考えだす。

「まずはエウリンカかな? あれはノイエを魔剣の材料にしようとした経歴があるから、動き回ってると知るとアイルローゼが殺しに行ってたね」

ノイエを魔剣にしようとした深すぎる罪を僕は忘れていないぞエウリンカ? 今度出てきたらノイエが止めても苛め抜く。

あっ仕事が忙しくてチビ姫への罰を忘れてたな。とりあえずあの馬鹿が入る大きさのワイン樽と……大量のミミズを集めさせるか。けっけっけっ。

「それは知ってるわ。あの馬鹿の魔法は使えるからあまり殺さないで欲しいわね」

「ん~。最近は改心したみたいだからあとはアイルローゼ次第かな?」

大丈夫。先生は頭の良い人だからきっと理解してくれるはずだ。するよね?

「じゃあ他の人のことを聞こうかしら?」

「ん~。アイルローゼが全力で殺そうとするのは、まずファナッテかな?」

「ファナッテ?」

「うん。毒の息吹のファナッテ」

居るんだ。あの殺人鬼も。

あれは拙い。ホリーお姉ちゃんと同格でヤバい。

お姉ちゃんは家族愛が強すぎて殺人を起こした。逆を言えば家族に手を出さなければホリーは動かない。けれどファナッテは無作為だ。

彼女の魔法は毒魔法だ。各種の毒を作り出す。

体内で毒を作り出しそれを放つことで彼女は一度街中で大虐殺をした。そのショックで精神を病んでからは、前王の指示で地方の街に存在する屋敷に監禁されていたという。

たぶん敵軍が本国にまで迫ってきたら、ファナッテの魔法を迎撃に使おうと思っていたのかもしれない。

ただ彼女はあの日に人を殺したという記述とは無かった。

たぶんどさくさに紛れて処刑したんだろうな。そうしてあの施設に運び込んだのか?

「ファナッテは魔法さえ使わせなければ害は無いんだけどね。結構甘えん坊で、会う人会う人を『お姉ちゃん』とか『お兄ちゃん』とか呼んで『一緒に遊ぼう』って誘うんだ」

「良い子じゃないの?」

悪魔の言葉に僕も同意の頷きをする。

「問題は……ファシーとかリグぐらい身長が低くて小柄だったら似合うんだけど、私ぐらいの背丈で体型がこれなんだよね」

「はい?」

「つまりこれがこれで……無駄に敵を作る感じ?」

手を動かしてレニーラが自分の胸の曲線を誇張する。

ファナッテって……巨乳なんだ。

「アイルローゼを筆頭に、胸の無い人たちがファナッテの魔法を警戒して……見つけ次第殺す感じかな?」

だいぶ私怨込みでした!

先生、ちょっと僕も流石に庇いきれません。先生の良さはその足からのお尻へのラインです。

あの足に踏まれてから椅子にでもされたら僕はきっと新しい何かに目覚めることでしょう。

実行したら引き返せなくなりそうなので決して声に出して言いませんが。

「なら毒を気を付ければ良いのね? 性格は甘えん坊なだけ?」

「かな? 魔法が無ければいい子だったと思う。ただ施設で見た頃はずっと落ち込んでたけどね」

「その辺の過去は別に良いわ。最終的には貴女の椅子に丸投げだし」

丸投げって何さ! 何を企んでいるこの悪魔!

「ノイエとの関係は良く知らない。ただノイエは避けてたみたいだけどね」

それは気になる。ノイエが避けるのは……結構居るな。うん。

「次は?」

「色々と問題ありでニキーナかな? 穴穿ちのニキーナ」

ニキーナ? 確かあの日、どこかの街で人を殺した女性だったはずだ。

「ニキーナの魔法はカミーラの魔法に似てるのかな? 良く知らないけど」

「どんな魔法よ?」

「えっとね~。何かこう空気の棒で相手を突き刺す感じかな? ただ突き刺されると丸い形に穴が開くんだよね。だから『穴穿ちなのよ』ってアイルローゼが言ってた」

「円形の穴?」

椅子に座った姿勢のままで悪魔が考え込む。

あの~。出来たら話を優先してくれませんか? 忘れているでしょう? レニーラは僕を椅子にしたままなのです。ずっと椅子にしているんです。跨って椅子にしてるんです。あっ

「んっ……もう旦那君ったら~」

皆まで言うな。そして器用に腰を動かすな。本格的に僕が死ぬぞ?

話を聞くことでそっちに意識が向かないようにしているんだから!

「ああ。思い出した。貫通の魔法の亜種か。たぶん空気をストロー状にして突き刺しているのね。良く考えた魔法だこと」

自己完結してうんうんと悪魔が頷いた。

ストローですか? 何となく想像できた。つまりカミーラ姐さんの土串を透明なストローにした感じかな? それだったら確かに円形の穴が開く。

「魔法は理解できたわ。色々と問題があるって言ってたわね?」

「うん。ニキーナは……何だったっけ? アイルローゼが難しい言葉を使ってんだよね」

「頑張って思い出しなさい」

「えっとね~。ニキーナはノイエをことを、すんはん? すうはん?」

「崇拝?」

「そうそれ。それをしていてノイエが珍しく本気で嫌ってた」

「……」

あのノイエが嫌うとは珍しい。何人か知っているけど、ただあれは相手に難がある場合だ。崇拝するほどだから難があったんだろうな。

「どうして崇拝していたのかしら?」

「ん~。ニキーナが変だから?」

首を傾げてレニーラがそう言う。と言うかノイエの姉たちの性格は大半が変だから心配するな。かく言うレニーラも十分におかしい。

「何か下から悪意を感じた」

ごめんなさ~い! 嘘ですから! レニーラは元気で明るい舞姫様ですから! もう動かないで~!

「ふしゅ~」

「分かれば良いのだよ。旦那君」

「話を進めて良い?」

「ほ~い」

何かがおかしい。この空間は何かが狂っている。

「ノイエって殺しても死なないでしょ? それを知ったニキーナがそれからしばらくノイエを付け狙っては怪我をさせてね。で、全員で死なない程度にお仕置きをしたら……それ以降ノイエを見つめては『ハァハァ』するようになって」

それは変態だ。ノイエから遠ざけろ。全力で。

「会話する分には普通なんだけど、ノイエが関わると……と言うか、不意におかしなことを言いだして狂いだす感じかな?」

「何を言い出すの?」

「えっとね~。『痛みは平等』とか『苦しみは平等』とかかな?」

「何よそれ?」

「知らない。ただノイエを傷つけると、自分も同じ場所に傷をつけるんだよね。だからたぶんノイエはニキーナが怪我をするのが嫌で逃げてたんだと思う」

ノイエは本当に優しいからな。納得だ。

「まあそれもそこの馬鹿に調べさせれば良いわね」

そんな変態、調べたくありません!

「で、魔眼の中に居た死体はその2人だったみたいだけど……他にも居るの?」

「復活してたんだ。ああ。アイルローゼが死んでるからか」

先生が死んでいると魔眼の中ってそんな弊害が生じるのね。

「その2人以外だと……」

少し考えてポンとレニーラが手を叩いた。

「理由は知らないんだけど、ミジュリだね」

「誰?」

「浄化のミジュリ」

軽く体を動かしレニーラが答える。

「ファナッテのメイドをしていた魔法使いだね」

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