作品タイトル不明
でぇすぅうぅ~
王城内・大会議室
「でぇすぅうぅ~」
「……」
フリフリと腰を振るな。大した色気……と色気など皆無な君がそれをしても殺意しか覚えん。
もしかして煽ってるの? 買おうか? この喧嘩? 僕の言葉を全否定しやがって……そろそろやるぞ?
「ポーラ」
「はい」
囁くとポーラが僕の隣に来た。耳を寄せて言葉の続きを待つ。
「あのチビを亡き者にしてきて」
「……にいさま?」
『正気ですか?』と言いたげな目をポーラが向けて来る。
軽いを通り越した殺意を抱いてますが何か? 結構本気ですよ?
僕の本気を察したポーラがピュ~っと逃げてセシリーンの胸に抱き着いた。
気づけばノイエまで抱き寄せて何をしているのですか? 貴女は? ねぇ?
「おに~ちゃ~ん。何か言いたいことはあるです~?」
「……」
言いたいことしかないが、出来れば言葉ではなくて拳で解決したい気分だ。
でも僕は女性に暴力を振るわないジェントルマンだ。
だがチビ姫は例外だ。これは弟として義姉に対する躾の範囲内だ。躾なの。
「まず一度落ち着いて確認しよう」
「何をです~?」
チビ姫が半笑いで首を傾げている。
『coolにcoolに』と自分に言い聞かせた。
「鎮魂祭とは死者の為に行う行事だ」
「です~」
この部分では互いに意見の相違はない。
「鎮魂を願うなら、多少過去を遡ることは間違いではないはずだ」
そう。だから今回ちょっと11年くらい前の話を持ち出そうとしているだけだ。
「間違ってないです~。でも11年前は前過ぎるです~」
そうかな? この世界だと、あのエクレアが妊娠可能なくらいにまで成長する程度だよ?
「そんなに前じゃないだろう?」
「そうすると100年前だって『たいして昔じゃない』と言い出す人が出て来るです~」
100年は流石に長かろう。
「何より今回の鎮魂祭は陛下が即位してから亡くなった人に対しての行事です~。私はそう認識しているです~。だからおにーちゃんが今回『あの日』の話を持ち出すのは、ちょっと違うと思うです~」
この馬鹿姫がっ! もういい加減、サラッと流せよ!
「何より『あの日』と呼ばれる日に対しての慰霊祭が過去に行われているです~。今回の鎮魂祭に対して私はいっぱい勉強したです~。だから知ってるです~。褒めるです~」
誰が褒めるか。揉める物など無い胸を張るな。
「慰霊祭と鎮魂祭は別の物だと思いますが?」
「そうです~。そう言われると違うです~」
良しならば。
「でも11年前の話をするなら、その前の大戦も語らなければいけないです~」
何か問題でも?
「前王夫妻を招待することになるです~」
「……」
そう言うことかっ!
今回の鎮魂祭はあくまで陛下主催の王妃主体だ。
お兄様が即位してから不幸続きのこの国の悪しき空気を断つための祭だ。
パパンたちが来ると話が変わる。より厄介になる。
現王主催の行事にパパンが来れば、馬鹿な貴族たちは『現王は前王の協力を得ないと行事1つ出来ない』とか騒ぎ出す。
それをチビ姫は嫌っているのか? ならば作戦変更だ。
「王妃。貴女は勘違いしています」
「何がです~?」
小さく首を傾げてチビ姫がこちらを見る。
「今回の提案はあくまでついでです」
そう。ついでなのです。
「舞姫と呼ばれたレニーラが舞台に立てばそれを見る者たちは『なぜ生きている?』と思うことでしょう。その疑問に対する答えとして『あの日』がなぜ起きたかを説明する必要があると思うのです」
「説明は大切です~」
うんうんとチビ姫が大きく頷く。
「その説明をすればあの日がなぜ起きたか、誰が起こしたかの話になるはずです」
「おにーちゃんが言うには、悪いドラゴンです~?」
「その通りです」
魔竜だかいうドラゴンが異世界から召喚されてあの日は起きた。
主演があの馬鹿グローディアのおかげで僕はこの場でぶっちゃけが出来ない。
あの馬鹿は腐った王族だ。腐っても王族か。どっちにしろ腐っている。
王家に連なる者が起こした問題は蒸し返すのは宜しくない。
馬鹿な貴族たちが元気に騒ぎ出す燃料にしかならない。
「大陸の北に住まう宗教団体が行った悪しき邪法により、」
「質問です~」
「……何か?」
話を折るなと思ったが我慢。我慢だ。
「あの日を調査した魔法学院の報告だと、『魔法の痕跡は見られなかった』ということです~。おにーちゃんの言葉はこの報告と矛盾するです~」
「……それね」
大丈夫。まだ焦る質問じゃない。
誰も前々からツッコミを入れなかったから、準備しておいた答えが僕の中で埃をかぶっていたよ。
「魔法学院の調査は既存する魔法に対してです。ですが異世界魔法の全てを網羅してません。ぶっちゃけ異世界にどんな魔法が存在しているかだなんて全てを知る人物は居ませんしね」
「です~」
馬鹿賢者ですら『あんた馬鹿? 今も生まれる魔法を把握するなんてマゾよマゾ』と言ってたぐらいだ。
「だから調査で検出されなかった魔法は存在するんですよ」
ついでに馬鹿共も皮肉っておこう。
「ただ過去の調査ではその部分が故意に隠蔽されていた節があります。一部の貴族が手を回したという情報は掴んでいるんですが……証言だけで証拠がないのでこれ以上は語りませんが」
「です~」
馬鹿貴族が問いただしてくればこのカウンターが待ちかねていたのに、残念です。
「そのような根拠のない言葉は控えるべきであろう!」
僕とチビ姫が穏やかにスルーしようとしたのに立ち上がって吠える 勇者(ばか) が居た。
「証言はありますが?」
馬鹿貴族を見るのも嫌なのでやる気のない目を向けてやる。
「どうせ貴殿が捏造した、」
「アイルローゼの証言ですが?」
「……」
ヒクヒクと頬を痙攣させて騒いでいた馬鹿が静かに座った。
うっし! 心の中でガッツポーズを決めて気晴らし終了。
この国で術式の魔女に喧嘩を売る馬鹿は本物の馬鹿だ。
同義語で『グローディアに喧嘩を売る馬鹿は自殺願望あり』と言うのもある。来年辺りに辞書に載せたい名言だ。
辞書なんて無いけど。
「変な横やりで話が逸れましたが、結果としてあの日に魔法が使われていないと言う報告は疑ってかかった方が良いと僕は思います」
厳密に言おう。魔法は使われた。馬鹿が異世界召喚を全力で実行した。
当時の魔法学院の技術力を疑ってしまうが……その頃は前線に魔法使いたちを取られて酷い有様だったと聞くしな。
あの同性好きで有名なミャンが先生をしていたとか? 生徒に対してどんな嫌がらせだ? 青い果実の食べ放題でもしてたのか?
「ですので『矛盾』は生じないと僕は思ってます」
「分かったです~」
チビ姫が納得してくれた。
ただこのまま説明を続けると、どんどん長くなりそうなので時短しよう。
「説明が長くなるので簡潔に述べれば、誰かが悪さをしてあの日我が国の若者たちが暴れた。人を殺めた。けれどその内の大多数はやりたくもないことを強要されたんです。そしてほぼ全員が処刑台に上がり罪を償った」
そう。あの日狂った人たちは全て被害者だ。
グローディアがどうしてあんなことをしたのか理由を知っているが、流石に庇いきれない。
あの馬鹿は自分で罪滅ぼしを考えているっぽいが、実際問題無理だろう。
ノイエの中の人の人たちに謝ることは出来ても、こうして外にだって謝らなければいけない人たちが居る。本当に迷惑な義姉だよな。
少しは僕に対して感謝の言葉を述べるべきだ。五体投地で感謝を体現すべきだ。
「重ねて言います。被害者を罪人にするのは悪法です。そんな法は正されるべきです」
「なるほどです~」
うんうんとチビ姫が偉そうに頷いた。
「おにーちゃん。質問です~」
「はい?」
ニッコリ笑ってチビ姫は、
「ならおにーちゃんは、強制や強要で罪を犯した者は今後『無罪』で良いと言うのです~?」
「……」
「きっとたくさんの事件が起こるです~」
クスクスと笑うチビをグーで殴りたい。
「と言うかおにーちゃんもその傾向があるです~」
何を言う?
「勝手に巻き込まれて色々とやってるけど、大半はおにーちゃんが関係していることが多い気がするです~」
ぼかしてくれてありがとう。具体的に言うな? 言うなよ?
「自分が罪から逃れたくてその提案をするんです~?」
待ちたまえチビ姫よ。僕は強要も強制もされていない。
気づけば現場の中心で……ノイエへの愛を叫んでいるだけだ。不思議なことにね。
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