軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

絶対なんだから~!

「あは~。グローディアを~発見だぞ~」

「シュシュ? 何か用?」

「ん~」

いつもながらにフワフワしているシュシュは動きを止めない。

だって彼に凄く優しくされていっぱいの愛情を注がれたから……だからその期待に応えたいのだ。

「呼んで~いるぞ~」

「誰が?」

「外の~旦那さんが~だぞ~」

「嫌よ」

即答だ。本当に嫌なのか本を広げてそれを読みだす。

しかし愛しい人からお願いされたシュシュとしては、どうしてもグローディアを魔眼の中枢に連れて行くしかない。と言うか行かないと言う選択肢がまず許せない。

「ちょっと!」

封印魔法で拘束されたグローディアが床に転がる。

嫌なら強制的に連れて行くまでだ。それこそ引きずってでも。

「連れて~行くぞ~」

「止めなさいシュシュ! お尻が! お尻が~!」

中枢に向かい歩いていたファシーは、床に出来た赤い染みに首を傾げたが……特に気にすることは無かった。

ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸

「なに?」

後ろ手に腕を縛ったノイエが、クルンとアホ毛を回す。

グローディアが相手なら腕を縛るぐらいで大丈夫か? あっ魔法があったか。

「ノイエ」

「はい」

「このタオルを咥えてくれる」

「はい」

タオルを咥えて貰って後頭部の所でキュッと縛る。

「もご?」

「ふふふ。これでノイエは抵抗できまい?」

「もご?」

可愛らしく首を傾げるノイエが愛らしい。

拘束されても可愛らしいとは、ノイエは本当にチート能力の持ち主だな。

このまま抱きしめてノイエを愛でていたいです。

まだあの馬鹿姉も出て来ないよね?

「あむ?」

僕の様子を見ているノイエが首を傾げる。

にょほほ~。ノイエが可愛いのが悪いんです~。

「も~!」

変な声がしたので目を覚ましたセシリーンは、彼とノイエの声を聴いて『またか』と納得しそのまま横になった。

こう毎日愛されるのは悪くはないけれど……本当にレニーラやホリーは凄いなとそんな感想を抱いた。

「グローディア? 生きてる?」

「お尻が。お尻が……」

チラリと蹲っている元王女の姿を確認したレニーラは、『うわ~』と胸の内で悲鳴を上げて視線を逸らした。

痛々しい。ドレスのスカートが血に染まっている。何より完全に削れている。

「私が何をしたって言うのよ?」

「さあ?」

封印魔法で封じられ、運ばれてきたグローディアにはきっと罪は無いだろう。

そんなことをしたシュシュは、彼女を放り出すと魔眼の中枢から姿を消した。

この場に居るのはレニーラとグローディアだけだ。

「呼ばれたんだけど?」

「ん?」

声にレニーラは視線を巡らせる。

何処か眠そうに頭を掻きながらホリーがやって来た。奇麗なのにその動作で色々と台無しだ。

「呼ばれたの?」

「ええ。寝てたらシュシュが来て、『中枢に歩いて行くか、削られて行くか、好きな方を選べ』って。面倒だけど歩く方を選んだ私は正解だったみたいね」

床の上で激痛に目を回している元王女の姿を見てホリーは自身の大きな胸を撫で下ろした。

仮に抵抗していた自分もこうなっていたのは間違いない。削るという言葉は本気だったらしい。

「それでシュシュは何してるの?」

「良く分からないけど旦那君に頼まれたみたい」

「何を?」

ホリーの問いにレニーラは軽く肩を竦める。

自分がここに来た時は、彼女は嬉しそうに恥ずかしそうにフワフワしていたのだ。

「なぁ~」

「これで~終わり~だぞ~」

コロコロと床の上を転がって、投げ込まれたらしいリグがクローディアに衝突して止まった。

元王女とは違い全身を封印魔法で覆われているから、リグに怪我はない。

「寝てたのに」

「知って~るぞ~」

不満を告げるリグの首根っこを掴んでシュシュは彼女の顔をグローディアの尻へと向けた。

削られて血肉が見えるそれを目にし……リグは表情を正す。

「シュシュ? これは?」

「治して~欲しいん~だぞ~」

「これを?」

「だぞ~」

フワフワしながらクローディアとリグの周りを移動するシュシュの様子から本気だとリグは理解した。

何だかんだでシュシュとの付き合いが長いリグだ。声の大きさで理解できた。

「でも魔力が」

「頑張るん~だぞ~」

「頑張れって」

この傷を治すと魔力が確実に枯渇する。そうすれば彼が外で怪我した時に出れなくなる。

唯一の気がかりにリグは治療に踏み切れない。

「するん~だぞ~。旦那ちゃんの~お願い~だぞ~」

「……分かった」

彼の存在を出されると、リグとてこれ以上の抵抗は出来ない。

ただお願いされたのはシュシュだけであり、シュシュは説明を省いただけでしかない。

尻を上に向けて蹲っていたグローディアは、突如として決まった事柄にビクッと全身を震わせたがリグは気にもしない。

ドレスのスカートを掴んで一気に引っ張ると引き裂こうとする。

「ちょっと待って! 待ちなさいリグ!」

「煩い。シュシュ」

「ほ~い」

フワっと揺れたシュシュの魔法がグローディアの上半身を封じる。

必死にスカートを引っ張り引き裂こうとするリグだが上手くいかない。と、何故か彼女の横にホリーがやって来た。

「手伝ってあげる」

「本当に?」

「ええ。アルグちゃんのお願いなんでしょう? 私は彼のお姉ちゃんだから」

言葉の内容とは違い、ホリーの表情は死んでいた。

『お姉ちゃんにはお願いしてくれないのね……』と読み取れた表情から、リグは静かに相手に場所を譲る。

「あはは~! こんなスカートなんて!」

八つ当たり気味にホリーの髪が蠢いて、グローディアのスカートが粉々になった。

血に濡れた部分を晒すグローディアは必死に逃れようとするが、怪我人を見にしたリグがその存在を逃すことは無い。腕を伸ばして捕まえ、ペロリと傷を舐める。

「うん。彼と似た味がする」

「本気で止めて~!」

絶叫するグローディアを無視してリグの治療が始まった。

余りの激痛に気絶しては覚醒を繰り返すグローディアを、その場に居る全員が囲むようにして見つめ続ける。

「にゃん?」

聞こえて来た悲鳴に急いでやって来たファシーは……余りの様子に首を傾げる。

「にゃ~ん」

でも血の匂いに触発されて、それこそ尻尾を振りそうな勢いで中枢へと突撃して行った。

ドラグナイト邸・夫婦寝室

「もふっ……もふっ」

つい本気を見せてしまった。

全身を痙攣させているノイエが恨めしそうに僕を見ている。

ノイエが可愛すぎるのがいけないのだと思います。

色々と汚れてしまった彼女の体を拭いていたら、ノイエの髪が金色になった。

「もごっ!」

出てきた瞬間から暴れ出すとは……全くこの馬鹿姉は本当に。

拘束してあるので安全かと思ったら、グローディアの馬鹿が足で攻撃して来る。

コイツは暴れないと気が済まんのか?

セシリーンが抱えていた薄いシーツを引き抜いて、グローディアに掛けて足が動かないように拘束する。シーツで包むようにして、キュッと縛ればこれ以上動けないだろう?

さて。馬鹿な義姉が出て来たしな。

「ちょっと真面目な話をしたいんだが?」

「……」

ノイエの顔でそんな恐ろしい表情を作り出すなと言いたい。

「どこぞの馬鹿な王女がやらかした過去を改変しようと思うんだが……話を聞く気はあるか? ないなら勝手にやるから後で文句を言うな。良いな?」

「……」

抵抗を止めたグローディアがコクコクと頷いた。

ゆっくりと彼女の口を拘束しているタオルを取ると、

「後で、全部終わったら……絶対に殺す」

「……」

「絶対だから! 絶対なんだから~!」

涙ながらに顔を真っ赤にしてそう告げてくる彼女に……何かありましたか? 僕の知らない所で? ねえ?

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